高松市に本社を構える石井事務機は、複合機やオフィス家具、ITソリューションをワンストップで提供できる強みを生かしてビジネスを伸ばしている。2024年12月期の売上高は新型コロナ禍前の水準を上回る勢いで推移。共創型オフィスへの刷新や、リモートワーク対応のネットワーク、セキュリティー環境の構築といった需要を取り込んでいる。地場企業を中心に顧客接点を多角的に増やしていくことで事業拡大を推し進める考えだ。
(取材・文/安藤章司)
青写真図面のコピーが始まり
――主要商材を聞く。
当社は香川県を中心に複合機、オフィス家具、ITソリューションの三つの事業を手掛けている。売り上げの構成比は複合機などのハードウェア販売が6割、オフィス家具が3割、ソフトウェア販売が1割を占める。複合機はリコーをはじめマルチベンダーで取り扱っており、オフィス家具はイトーキを中心に販売、ソフトウェアは中小企業向けのERPパッケージやセキュリティー商材を幅広くそろえている。
――取り扱い商材はどのように変化してきたか。
1959年に私の祖父が石井青工社を創業したのが始まりで、当初は大手建設会社や造船会社の青写真図面を複写する仕事を主に手掛けていた。その流れで複写機や複合機の登場に合わせて取り扱いを始めた。祖母が2代目社長を引き継ぎ、80年代にはオフコンの販売や操作指導などのサービスに進出。今で言うところのITソリューション事業をスタートさせた。92年には父が跡を継いで現在に至っている。
――将来的には自身が次の経営を担うということか。
それはまだ分からないが、創業家の一員として業容拡大に努めている。
顧客接点の拡大を重視
――オフィス家具とハードウェア販売で売り上げ全体の9割を占める構成比では、ストックによる安定的な売り上げが少ないのではないか。
ハードウェア販売の中に複合機ビジネスが含まれており、トナーをはじめとする消耗品需要のカウンタービジネスがストックビジネスに相当する。コロナ禍や改正電子帳簿保存法への対応でペーパーレス化が進み、カウンタービジネスは伸び悩む傾向にあるものの、当社ではストックビジネスよりも顧客接点をいかに増やしていくかを重視している。顧客と話をする機会が多ければ多いほど、会話から顧客の課題を聞き込むことが可能になり、次のビジネスチャンスにつながるからだ。
石井啓一朗
本社営業部技術部部長
――会社全体のビジネスの現状はどうか。
24年12月期の売上高はコロナ禍前の水準を上回る勢いで推移している。コロナ禍におけるリモートワークの経験を経て、香川県の中小企業ではオフィスの在り方を見直す機運が高まっている。働く場所としての意味しかなかった従来型のオフィスから、社内外の人と共創し、人と出会って相互理解を深め、新しい価値を創出するオフィスへと変わりつつある。
共創の場にふさわしいオフィス家具に入れ替えたり、Web会議用のブースを備えたりする需要が高まるとともに、リモートワークに対応したネットワークやセキュリティーといったデジタル環境を整備する動きも活発だ。中小企業の中では市販のアンチウイルスソフトだけ入れて、侵入されたあとの対策やデータのバックアップ、復旧まで手が回っていないケースが散見されるため、24年9月に新商材としてサイバー攻撃対策やバックアップ、復旧を一気通貫で行うマネージドサービスをラインアップに加えた。オンラインで保守運用する方式であるため、地場企業が徳島や高知、岡山などの隣県に支社を置いているケースで、現地に行かずとも対応ができ、ユーザー企業の負担も少ないメリットがある。
民需に重点、地場経済を活性化
――主要顧客の業種・業態は。
売り上げのおよそ8割を香川県内で占めている。業種・業態は偏りはあまりなく、売り上げ全体のうち民需と官需の比率は8対2で民需が多いのが特徴だ。官需はもちろん大切だが、地元経済の活性化に貢献し、当社の強みであるソリューション提案を生かしやすい民需を重点的に開拓してきた経緯がある。
民需では大企業ユーザーがいる一方で、中小企業ユーザーも多く、従業員数ベースの規模感は10~30人がボリュームゾーンだと感じている。
――今後の発展の方向性は。
当社はオフィス家具から複合機、ITソリューションをワンストップで扱える香川県で数少ない地場ベンダーの一社だと自負している。営業やSE、カスタマーエンジニアがおのおのの専門性を高めつつも、顧客からの問い合わせに対して自分の専門領域を越えてある程度対応できる幅の広さ、社内連携の良さを大切にしていきたい。顧客接点を増やしていくことにもつながり、全社員でワンストップサービスの強みを生かしたビジネスを伸ばしていく。
Company Information
複合機やオフィス家具、ITソリューションを取り扱い、地場企業を中心にサービスを提供している。従業員数は約40人。2024年で創業65年を迎えた。