大阪府吹田市に本社を構えるIoTマーケティングは、クラウドサービスやSaaS、中古PC、周辺機器などを販売している。クラウド/SaaSでは、オフィスソフトやビジネスチャットに加えて、2024年5月からセキュリティーのマネージドサービスを新しくスタートした。「Windows 10」のサポート終了に伴うIT機器の更改や、学校向けの「NEXT GIGA」の需要が顕在化しており、ハードウェアとソフトウェア、サービスでビジネスを伸ばしていく。
(取材・文/安藤章司)
セキュリティー商材を新たに追加
――どのような事業を手掛けているのか。
07年に創業したときはPCなどのハードの販売がメインだったが、16年に日本PCサービス傘下に加わり、私が社長に着任した20年からクラウド/SaaS事業を本格的に立ち上げた。今は中古PCなどのハード販売と、クラウド/SaaSの二つが大きな事業の柱となっている。
――クラウド/SaaS事業の主な商材は何か。
オフィスソフトの「Microsoft 365」や「Google Workspace」、ローコード開発の「kintone」、ビジネスチャットの「LINE WORKS」、セキュリティーサービスは24年5月から新しく「Acronis Cyber Protect Cloud」の取り扱いを始めた。
これまでもセキュリティーソフトは取り扱っていたが、対策とバックアップがそれぞれ分かれているなど使い勝手に課題があった。Acronis Cyber Protect Cloudは外部の脅威に対する防御、実際に不正侵入された際の検知と対応、そしてバックアップ先からのシステム復旧まで単一プラットフォームで行える点に魅力を感じた。
Windows 10更改商談が活発化
――大阪の地場企業を主なビジネス対象にしているのか。
クラウド/SaaSは現地に行かなくても販売でき、中古PCもオンラインでも販売しているため、顧客は東名阪をはじめ全国の主要都市に分散している。
西岡 基
代表取締役社長
Acronis Cyber Protect Cloudを例に挙げると、マネージドセキュリティーサービス(MSS)で提供しており、ユーザー企業のセキュリティーやバックアップ、システム復旧を遠隔で支援するサービス形態をとっている。
――どのくらいの規模の企業ユーザーが多いのか。
中堅・中小企業が主な対象になっている。セキュリティー商材であれば、従業員数300人未満の企業がボリュームゾーンだ。情報システム担当者がいたとしても兼任であったり、セキュリティーの専門家でなかったりするため、MSSに対する需要は非常に大きいものがあると感じている。
当社は従業員数が約20人の体制だが、すでに半数がアクロニス・ジャパンが提供する研修プログラムに参加し、MSSの知識を身につけた。
――直近のビジネス概況について教えてほしい。
オフィスソフトについては、25年10月のWindows 10のサポート終了に向けてPCの入れ替え商談が活発化している。これまでオフィスソフトのライセンスを買い取り使っていたユーザー企業に、サブスクリプション方式のMicrosoft 365やGoogle Workspaceを提案している。
コロナ禍を経て必須ツールとなったオンライン会議や、リモートワークで利便性を発揮するオンラインストレージ、ビジネスチャットの多くがサブスクリプション方式で提供されている。オフィスソフトもサブスクリプション方式へと移行することで、利用できるサービスの幅が広がり、運用負荷を軽減することが可能になる。
B2B2B形態のビジネスを拡充へ
――クラウド/SaaS事業を立ち上げるにあたって、親会社の日本PCサービスではなく、なぜIoTマーケティングで担うことになったのか。
日本PCサービスは大手PCや周辺機器メーカー、量販店などと提携し、全国395の拠点網を駆使してエンドユーザーが所有するIT機器の保守サービスを提供するB2B2Cの商流を主に採用しているのに対して、当社はエンドユーザーである法人顧客と直接接点を持つB2Bの形態であるため、法人向けのクラウド/SaaS事業と相性がよかったことが挙げられる。別の側面では新規事業を立ち上げるに際して、親会社より規模の小さい当社のほうが小回りが利くということもあった。
――今後のビジネスの方向性は。
25年はWindows 10の更改だけでなく、学校のICT環境を整備するGIGAスクール構想の更改期にも重なる。いわゆる「NEXT GIGA」の需要に合わせてデバイスやオフィスソフトなどの入札にも取り組む。
販売チャネルに関しては、通信回線や電気設備の販売、事務機ディーラーなどITソリューションと少し距離があるものの、比較的隣接している企業向けにMSSなどの役務を卸販売するB2B2Bの形態も増やしていきたい。ビジネスパートナーに向けて役務を提供するビジネスモデルは日本PCサービスグループが得意としている形態でもあり、販路を多様化してビジネスを伸ばしていく。
Company Information
全国に395拠点を展開してIT機器の保守サービスを手掛ける日本PCサービス(大阪府吹田市)のグループ会社。PC・スマートフォンの販売・導入支援や、ソフトウェアソリューションの販売・導入支援・マネージドサービスなどを手掛ける。