日本オープンシステムズは、本社を置く富山市を中心とした北陸地方や、首都圏などでシステム開発や運用を手掛けている。近年は独自のSaaS開発に力を入れており、自社で必要なサービスを開発し、外販することで成長につなげている。受託開発にとどまらず、自らサービスを生み出すことは社員のやりがいも高まるとして、さらなる開発と販売拡大を目指していく。
（取材・文／堀 茜）

クラウド事業が伸長

――会社の紹介を。

　システム開発、運用、検証といった、顧客のニーズに合わせた対応が事業の中心になる。北陸で創業し、地元である北陸地域での売り上げは5割強を占め、市場規模の大きい首都圏などでも事業を展開している。クラウド関連事業が伸びており、「Amazon Web Services」上にシステムを構築する案件を多く手掛けている。北陸地域はまだまだオンプレミスの案件も多いが、首都圏や関西圏のお客様との商談は、ほぼクラウドが前提になってきている。また、セキュリティー関連の需要も強く、Webのセキュリティー診断を入り口に、顧客のネットワーク運用全体をみるような案件が多い。

――ビジネス状況は。

　一昔前は、景気が悪いとIT投資を控えるといった傾向もあったかと思うが、今は競争力を高めるために必要な投資と考える顧客が多い。景気に左右されず案件は多く、DXをはじめとした需要の強さを感じる。当社はシステム開発でリピートのお客様が多く、製造業を中心に投資意欲は堅調だ。

　メインの受託開発に加え、ここ数年は、SaaSの開発に力を入れている。お客様の要望をシステム化するだけでなく、自社で考えたサービスを世の中に出していく会社に変わりつつある。

自社に必要なサービスを開発し外販

――自社開発のSaaS製品で特徴的なものは。
　テレワークや時差出勤、オフィスのフリーアドレスは、コロナ禍を機に浸透したが、当社でもうまく運用するために座席予約システムを開発した。いつどこからでも在席確認や予約ができる「OFFTICKET」は、社内で使った後、SaaSとして外販し好評をいただいている。業務を行うデスクや会議室だけでなく、従業員の駐車場の管理やイベント時の座席予約など、顧客のニーズによって、当社が想定していた以外の利用も広がっており、手応えを感じている。
 
――SaaS開発の方針は。

　自分たちが使うものをつくった延長上で外販している。今開発を進めているのは、社内の資産管理ツール。どんなプロジェクトにどんな技術を使っていて、どの業務に何時間かけているかを把握することで、業務負荷を可視化し、人員配置を最適化したい。技術情報の把握も可能なツールを開発しており、業務効率化につなげたいと考えている。その先に販売も視野に入れている。

――SaaS開発に注力する理由は。

　数年前に、エンゲージメントサーベイを実施した結果、全員が前向きになれるミッションが必要だという考えに至った。若手社員からも意見を聞き、「主体的に面白いと思えるものを仕事でかたちにしたい」という声があった。そこで自社サービス企業を目指すようになった。自分たちが「楽（たの）」しいと思ってつくったサービスでお客様の業務が「楽（らく）」になり、社会全体を「楽（たの）しく」改善していく「三つの楽」を目指すのが自社開発SaaSで、社員のやりがいにもつながっている。

――SaaSの販売はどう広げていくか。

　現状は、製品HPから問い合わせがあった場合に対応するなど、直販がほとんど。新規事業である自社開発のSaaSは伸び代が大きいと考えており、営業やマーケティングを強化していきたい。販売パートナーを経由した販路の拡大も検討する。

地元大学と企業の連携を橋渡し

――地元への貢献はどう考えているか。

　産学連携に力を入れている。企業は、開発などで大学をはじめとした研究機関に協力してもらいたいと思っても、窓口が分からず相談まで至らないケースが多い。そこで、企業が気軽にニーズを発信し、大学などがその内容を受け取って協力を申し出ることができるシステム「Ocket（オケット）」を、富山大学、富山県立大学と共同で開発した。2023年6月に運用を開始し、北陸3県の八つの商工会議所と、10の教育・研究機関が参加。企業と教育機関の橋渡しをするプラットフォームになっている。地元の課題解決にデジタルの力で役立てるようなものは、積極的に取り組みたい。

――今後の経営方針は。

　好調な既存事業である受託開発は、個別の企業からヒアリングしてシステムを提案してきたが、今後は特定の業種や業界に対してソリューションとして提案することで、さらにビジネスを伸ばしていきたい。新規事業である自社開発製品は、より高い成長曲線で伸ばしていくために、開発と合わせて営業体制の強化を図っていく。


Company Information
1990年、CSK（現SCSK）の関連会社、CSK北陸システムとして設立。94年に独立し現在の社名に。本社は富山市。システム開発・運用に加え、近年はSaaSの開発に注力している。2024年3月期の売上高は54億円4000万円。従業員数は406人（24年4月1日現在）。