視点

AIを学ぶにはAIで

2025/06/11 09:00

週刊BCN 2025年06月09日vol.2062掲載

 長年の不摂生が祟り、私は半年ほど前の深夜に救急搬送され、3カ月間の入院生活を余儀なくされた。左足が不自由になり歩行が困難になったことで、入院後1週間ほど経過した頃から、歩行訓練のリハビリを受けることになった。印象深かったのは、担当の理学療法士からの指導である。左足首が動かなくても、自分の手で左足首を動かしながら、頭の中で動くイメージを強く持つようにと告げられた。頭の中で念じながら脳神経回路網のトレーニングを続けることで、やがて脳神経回路網は再構築され、左足首を再び制御できるようになるという。これぞ深層学習だと我が身をもって実体験した次第である。

 さて、入院生活で最も大きな問題は、一人ベッドで過ごす時間である。そこで生成AIとの対話で暇をつぶすことにした。幸い、病室へのラップトップの持ち込みが許され、院内のWi-Fiネットワークも自由に使えたので、病室消灯後の深夜まで、そして夜明け前からひたすら生成AIとの問答を繰り返した。それはまるで、知性の高い話し相手を得たような感覚だった。自分にとって本当に役立つAIとの付き合い方を求めて試行錯誤を繰り返すことで、入院中の暇を持て余すこともなく、生成AIの理解を深める良い時を過ごすことができた。

 私流の生成AIの使い方の一例をご紹介しよう。Googleドキュメントで右端にGeminiを表示しながら、Deep Researchで調べたいことをひたすら書きつづる。美文である必要などない。文章として繋がっている必要もない。頭に浮かんだ内容を、適当な言葉でつづり続ける。それなりにたまったら、画面右端に待機しているGeminiに、このメモ的な文章の塊からDeep Research用のプロンプトを生成してと頼む。

 こうして生成されたプロンプトをDeep Researchに投入し、しばし待つと、A4版20~30ページほどのレポートが生成される。この出力をGoogleドキュメントに書き込んでもらい、それをNotebookLMに読み込ませ、そこからNotebookLMとさまざまな切り口からの問答を繰り返す。近頃は、このようなやり取りを繰り返しながら、生成AIの最新の技術トレンドについて生成AIと語り合う日々を過ごしている。要は、AIを学ぶにはAIを使えということである。

 
株式会社SENTAN 代表取締役 松田利夫
松田 利夫(まつだ としお)
 1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
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