〈企業概要〉
米Claroty(クラロティ)は2015年の設立。OTサイバーセキュリティプラットフォーム「xDome」をクラウド型とオンプレミス型で提供する。グローバルで1万カ所以上の工場やプラントに導入されている。日本には22年に進出。25年度は24年度比で年間経常収益が40%成長した。
工場・重要インフラのセキュリティー対策ニーズの高まりを受け、OTセキュリティーベンダーの市場開拓が加速している。外資系企業のソリューションが存在感を示す中、米Claroty(クラロティ)は専業ベンダーとして定着支援の充実や資産可視化の網羅性を打ち出す。黒石亨・日本カントリーマネージャーは、パートナーにノウハウを移し、事業をスケールすると強調した。
(取材・文/春菜孝明)
資産の網羅性高める
OTセキュリティーはネットワーク検知によって未管理端末を含めて可視化する手法が普及し始めている。クラロティでは資産管理を入り口に、検出されたリスクへの対応といった設計、運用を重視している。
黒石 亨 日本カントリーマネージャー
OT環境では大量の脆弱性が検出されても対応が進まないケースが少なくないという。黒石カントリーマネージャーは稼働を止められない制約や責任分担の曖昧さを背景に挙げ、「ここで多くの企業がつまづく」と指摘。「可視化はゴールではなく、リスク低減のスタートラインだ」と解説する。
同社では3カ年計画の実装プログラムをユーザーに提案している。1年目はOT環境の全体像を把握。IPアドレスやMACアドレス、ファームウェアバージョン、製品型式といった情報を得る。この段階で担当者やワークフローを定めることで、リスク管理に関するプロセスも標準化する。
2年目は実際に悪用が確認された脆弱性リストを用いて優先順位を付け、リスクに対処するフェーズだ。3年目には大部分の手順を自動化し、定量的なリスクレポートの発行や第三者監査が可能な状態を理想とする。
2022年に進出した国内では「アーリーアダプターも含めて着手したばかりの初期段階」にあり、市場への需要の喚起を続けている。日本法人ではなくAPJリージョンとしてシンガポール支社がカバーする体制になっているが、伴走支援する人員をローカルに確保している点が差別化要因だという。
実行基盤となるのが、「xDome」を中心とした製品プラットフォームだ。資産探索、脆弱性・リスク管理、脅威検知、ネットワーク保護、変更管理に加え、リモートアクセス機能の「Secure Access」を備える。外部保守ベンダーの接続経路を管理し、操作内容の記録や不要なアクセスの遮断が可能になる。
特徴の一つは資産情報の網羅性の高さだ。情報収集は、ミラーリングでネットワークトラフィックを監視するパッシブモニタリングや、定期的なポーリング(問い合わせ)、端末上の収集ツールなど五つの方法で行う。特殊な通信プロトコルを識別する能力にも秀でており、独自の産業用ネットワークに対応する。
操作面では資産一覧やリスクのヒートマップ、アラートの優先順位を一画面で確認でき、専門知識を持たない現場担当者でも扱いやすい設計になっている。セキュリティー製品との連携も幅広い。既存のITセキュリティー基盤へOTデータを統合したり、通信状況に基づくゾーン設定や通信ポリシーを、ネットワークセキュリティーツールに反映したりできる。
サプライチェーンの対策意欲追い風に
OTセキュリティーへの意識は高まっている。黒石カントリーマネージャーはユーザーの変化として「統合的なアプローチに移行している」と解説。具体的には▽可視化範囲の拡大▽オペレーションレジリエンス▽法規制対応の強化▽エクスポージャー管理の加速ーといった傾向があるという。
導入はエンタープライズを中心に進む。さらに、自動車業界ではサプライチェーン全体で対策しようという機運によって、1次や2次のサプライヤーでも引き合いが生まれている。
営業活動をハイタッチで行いつつ、パートナーに引き継ぐ、間接販売をメインにしている。販売網はディストリビューター2社と多数のリセラーが担う。制御システムに知見を持つ各社を起点に、製造業などへの展開を図っている。
医療機関にも24年以降、利用が拡大している。従来の管理ツールでは見れなかった検査機器などを包括的に管理できるとして、約10病院に導入されている。
最重要の成長市場とする日本市場は、製造や自動車、製薬、食品飲料、化学の各業種に強いパートナーに注力。特に導入実績のある3社を重点パートナーとして設定した。黒石カントリーマネージャーは「将来的にはパートナー側で自立できるようにトレーニングの機会を設けている」と説明する。
日本語によるマーケティング活動の強化やホワイトペーパー、顧客事例の整理などのローカライズを加速している。ソフトウェアのオンラインストア「AWS Marketplace」にもラインアップしており、日本独自の販売戦略を立案する方針だ。