〈企業概要〉
米Workato(ワーカート)は2013年設立。システム統合や業務自動化基盤を提供しており、グローバルの顧客は1万2000社以上。日本法人は21年設立。
業務自動化基盤を提供する米Workato(ワーカート)は、システムを統合する機能からエージェント領域へのビジネス拡大を目指している。日本法人のアラン・テン執行役員社長・APJ創業者は「どんな段階にある企業であっても、AIエージェントを会社のコアに据えていけるように支援していきたい」と意気込む。
(取材・文/下澤 悠)
ニュートラルに共存関係築く
ワーカートは2013年の設立以来、システムの自動化と統合を担う製品に注力してきた。そのため、自動化や統合に欠かせないデータアクセスの領域に強みがあると自信を見せる。同社にとって他社は競合相手ではなく、共存関係が成り立つ相手との位置付けだ。日本法人の堀和紀・執行役員日本営業・パートナーシップ本部長は「企業では一つのプラットフォーム上に全てのデータが存在することは基本的にない。必ず複数企業の製品やデータソースを活用しながらAIの世界をつくり上げる必要がある」と指摘し、「われわれはニュートラルに2000以上のコネクティビティを持ち、簡単に(製品同士を)つなげることができる」とアピールする。
アラン・テン 社長
エンドユーザーに対するUIを備えていることも特徴だ。堀執行役員は「UIやTeams、Slackへのコネクティビティを提供しており、そこから『Workato』に対して指示を出せる。業界ではまれな存在だ」と強調。現在の国内顧客層はメルカリやコインチェックといったテクノロジー企業や金融、製造業など幅広い。
「つなげる」から「エージェント」へ
自社製品とRPAとの違いについてテン社長は、「現代の企業はデータやプロセス、ユーザーエクスペリエンス、そしてAIまでを社内で扱う。ごく一部をカバーするRPAだけでは不十分で、全てを包括的につなぐ必要がある」と説明。同社製品の基盤である「Workato One」は、オーケストレーションやAIエージェントなどのレイヤー全てが連携しているとして、「以前のテクノロジーのように高度な技術を必要とせずに、より素早くより多くの人が利用できる」と強みを解説する。
これまでは「つなげる」という観点での問い合わせが多かった。しかし25年からは、AIエージェント活用のために、どうデータを生かすかというニーズへと徐々に変化してきた。「今後、労働人口が減ることで、人とAIエージェントが共に働く未来が待っているだろう」と見据え、AI関連領域への展開を加速。ユーザーがAIエージェントを信頼して活用できるようにするためには、データアクセスのスキルが不可欠であり、同社の実績と技術が生きると力を込める。
25年11月には、AIエージェント向けのMCPサーバー「Workato Enterprise Model Context Protocol」をWorkato Oneへ搭載。AIエージェントを関連データと連携させることで、アプリケーション内での実際の業務遂行が可能になる。さまざまなAIエージェントと接続できる柔軟性と、エンタープライズ向けの信頼性や管理・制御機能が特徴だ。構築済みのAIエージェント「Workato Genie(ジーニー)」なども加わり、KPIに連動しながら企業のコンテクストの中で自律的に働き、ニーズに合わせたカスタマイズもできる。
AIがコードを書けるようになったことで、パートナーは今後コンサルタントに近い業務領域に入ると想定。ワーカートにおいても、実装部分の作業時間が短縮されるため、パートナーは、顧客のビジネス成長を考えるコンサルティング的な業務によりフォーカスできるとみている。
理想は「ほとんどがパートナー経由」
国内パートナーに対しては「顧客のことをよく理解しているチームが多く、より幅広い企業をサポートできる」と期待は大きい。現在6割ほどのビジネスがパートナー経由だが、リセール部門では数年で80%まで拡大すると予測し、「ディストリビューションのほとんどはパートナーになっていくだろう。われわれがほぼタッチしないのが理想だ」(堀執行役員)とする。
現在は、日立ソリューションズや富士ソフトなどが製品を扱う。既存のパートナーには、長く携わってきたオートメーション領域に加え、エージェント領域のビジネスを拡大してほしいと要望している。影響力を持つAI専門のインテグレーターにも積極的にアプローチして、製造や金融業の顧客への新規開拓を進めることも検討する。
ただ、多くの顧客のニーズはまだ統合機能にあるのが現状。テン社長は「われわれの製品は拡張が可能で新旧のシステムをつなぐことができる。どんな段階の企業であってもAIエージェントを会社のコアに据えていけるように支援したい」との方針だ。そうした背景もあり「スモールスタートで安価に利用を始め、良いと思えば社内での利用を広げてもらえる」と、日本独自の販売方法としてユーザー数ベースのライセンスを提供する。テン社長自身が直接親会社に掛け合い導入しており、「何をすべきか決めるのは、米国のチームではなく(日本法人の)われわれだ」との姿勢で国内展開に臨んできたと自負している。