グーグル・クラウド・ジャパンは、パートナーエコシステム変革の一環として、2026年1月にパートナープログラムを刷新した。これまでの企業規模や販売実績を中心とした評価から、顧客価値創出や専門性を重視する仕組みへと転換している。AI活用が本格化する中、パートナーと共に顧客の業務変革を支援する体制づくりを進める。(大向琴音)
専門性を軸とした評価へ
同社はパートナーエコシステムについて、25年からの3カ年での変革を進めており、26年はその中核を担う重要な年と位置付けている。戦略を支える仕組みとして、パートナープログラムを刷新、パートナーの企業規模や申請ベースの評価だけでなく、顧客への価値提供や専門性をより重視する体系へと変更した。
具体的には、製品、ソリューション、業界に関する専門性の深さを評価する仕組みを導入した。加えて、最上位のパートナーステータスとして「ダイヤモンド」を追加し、3段階のティアに分けた。上級執行役員の上野由美・パートナー事業兼法人営業統括は、「専門性を重要視することで、顧客のニーズに沿うかたちに見直した」と説明する。
上野由美・上級執行役員
パートナープログラム刷新後の手応えは大きいという。新制度導入から間もない段階で、クラウドエースがサービスおよび共同販売の分野で国内初となるダイヤモンドパートナーを取得するなど、パートナーへの浸透は「想定を上回るペースで進んでいる」(上野上級執行役員)とした。
また、スケールビジネス(中堅・成長企業)市場については、多くの企業が存在することから、パートナーが100%主導する体制へと変更し、顧客獲得を目指す。業界ごとに強みを持つパートナーへリードを引き継ぎ、同社は営業・技術の両面から後方支援を行うという。
業界特化型ソリューションの具体化進む
25年に立ち上げた「インダストリーソリューション開発部」も、本格的な成果創出フェーズに入った。同部を中心に大手SIerと連携し、業界特化型のAIエージェントや社会インフラへの対応ソリューションの共同開発を進めてきた。
例えば、NTTデータは、「Gemini Enterprise」や「Google Workspace」のライセンス提供と、導入から活用定着、成果創出までを一体で支援する「アクセラレーションプログラム」を組み合わせて展開している。同プログラムでは、AIの全社推進体制の整備、AI利用者向けの研修、ユースケース創出といった内容が体系化されている。特にユースケース創出については、営業やマーケティング、バックオフィスなど異なる職種に特化したユースケースをつくり、業務の特性に合わせた伴走支援を行う。そのほか、両社はグローバルで最大500種類の業界特化型AIエージェント開発にも取り組んでいる。
日立製作所とはフィジカルAIやセキュリティー分野で協業を拡大しており、AIによる社会インフラ革新を実現するソリューション群「HMAX」にGemini Enterpriseを組み込み、現場の保守・点検業務の自動化に取り組んでいる。上野上級執行役員は、1年ほど掛けて共同開発を進めてきたソリューションについて「ようやくいくつかの結果が出てきた」と手応えを示す。
FDEでAI活用の定着を支援
AI導入の本格化に向けて同社が重視しているのがFDE(Forward Deployed Engineer)によるパートナーへの伴走支援だ。現場に入り込み、部門ごとの課題や業務プロセスを把握した上で、AIエージェントの導入や業務変革を支援する役割を担う。従来の要件定義型SIとは異なり、まず実装して試しながら改善を重ねるアプローチを取るという。
同社では、顧客向けの「カスタマーFDE」と、パートナー向けの「パートナーFDE」の二つを設けている。パートナーFDEは、パートナーの変革を支援するとともに、その先の顧客への提案や変革を後方から支援する役割を担う。
まずはパートナー自身にクライアントゼロとして、Gemini Enterpriseなどを活用した自社変革を実践してもらう。その過程でパートナーFDEが伴走し、FDEのスキルセットやトランスフォーメーションのフレームワークを習得してもらう。パートナーには、そこで得た知見を生かして顧客企業の変革支援へとつなげてもらう考えだ。
同社はパートナーとの連携をさらに強化していく姿勢で、上野上級執行役員は、「ワクワクする日本の未来を、パートナーと共につくっていきたい」と展望する。