内田洋行は、高齢者介護支援システム「絆Coreシリーズ」の展開を通じて、幅広い介護事業者の生産性向上を後押ししている。高齢化社会では、同社が伝統的に強みとしてきた介護施設だけではなく、地域全体で高齢者を支えるDXが重要になるとみており、自治体向けビジネスで培ってきたノウハウを生かして、官民の双方で介護サービス事業者を支援する構えだ。システムの拡販に向けては、地域に密着したパートナーと連携し、顧客に伴走した製品展開を進める。
(取材・文/大畑直悠)
絆Coreシリーズでは、入所・通所・訪問の各種サービスを手掛ける民間事業者向けに加え、自治体が設置し、地域で暮らし続けるための生活に関する総合相談の受付や介護予防ケアマネジメント、ケアマネージャーといった地域の介護事業者への支援などを担う「地域包括支援センター」向けのシステムを展開する。介護記録や利用者の管理をはじめとした、利用主体のニーズに応じた多様な機能をそろえている。
入江計典 副事業部長
ビジネスの近況については、特別養護老人ホームなどの施設で経営統合などを機に導入が進むなど、堅調に推移している。特に伸びているのは地域包括支援センター向けだ。入江計典・自治体ソリューション事業部副事業部長は「少子高齢化が進む中、自治体は子どもと高齢者への支援に目を向けており、独居高齢者の増加など、放置できない課題に対する関心が高い」と話す。自治体などと介護事業所の情報共有を後押しする「地域支援システム」も好調だ。パートナーも自治体システム標準化後の展開を模索しており、地域福祉の改善への注目は高いとする。
住み慣れた自宅などでの生活を希望する高齢者は増加傾向にあり、在宅の高齢者を支援する介護事業者の存在感が増している。この流れを受け、施設系の介護事業者でもデイサービスや訪問サービスなどのメニューの拡大が進んでいる。現在、介護の課題は施設内の最適化だけでは完結せず、高齢者の地域における生活を見守る仕組みづくりが重要となっている。この実現には自治体が有する住民情報などの活用、福祉、医療、自治体といった各主体の連携が欠かせない。同社では、自治体の福祉システムや住民情報向けシステムの展開、自治体システム標準化の実績が今後の強みとなるとみている。
地域の連携を支える上では、医療や行政が保有する情報を介護事業所が一元的に参照できるようにする「介護情報基盤」の運用が、順次始まっていることも好材料だ。短期的には絆Coreを同基盤に接続できるようにし、自治体向けには介護保険資格や要介護認定情報などの連携を支援する。介護事業者に対しても、同基盤にアクセスするための利用端末やマイナンバーカードの読み取り機器の整備・運用支援に力を入れる。中・長期的には、介護事業者と自治体の双方が有する多様な情報を相互に参照するための連携基盤として絆Coreを発展させたい考えだ。
オンサイトのサポートに強み
民間の介護従事者からはAI機能へのニーズが高く、ケアプランの作成支援や絆Core内に蓄積した情報の検索ができるアシスタント機能が好調だ。加えて、介護現場では両手がふさがる業務が多いことから、AI音声入力機能も順調に伸びている。
施設内での転倒などを検知するセンサーなどと連携したオプションも評価を得ている。介護施設ではセンサーやカメラの導入による省力化が進んでいるが、メーカーごとに取得した情報が分散する点が悩みとなっている。絆Coreは複数社のデバイスとの連携に加え、カメラの情報などを一覧で可視化する機能を備えている。例えば、夜間に人手を費やして見回りをしなくても、一つの画面で施設内を確認し、本当に必要な場合のみ従業員が対応できるようにしている。
政府の指針でも介護現場の生産性向上に向けたIT活用が奨励されており、2026年度の介護報酬改定では、こうした取り組みを報酬面で加算する仕組みが設けられている。ITによる生産性の向上は、売り上げの拡大も含めた持続的な事業展開に関わる経営の優先事項となっている。一方で日々の介護業務をこなしながら、ITに対するリテラシーを高めるには限界があり、研修を企画するマネジメント層に教育のノウハウが不足しているケースも珍しくない。同社は製品機能の充実や導入・運用支援サービスの展開に加え、教育サービスを通じ、IT活用や生産性向上に取り組む事業者に伴走する構えだ。
クラウドだけでなく、オンプレミスでの導入体制も備えていることから、オンサイトで顧客に伴走できる点を強みとして挙げる。入江副事業部長は「エリアごとに中心となるパートナーがおり、SEなども含めてノウハウを持つ人材がいる。販売店や事務器店なども含めてパートナー同士で連携できるようになっている」と紹介する。今後は自治体系や教育系のパートナーに対しても、絆Coreを取り扱えるよう支援するほか、新規パートナーの開拓も推進する。パートナーの販売網を生かして小規模な介護事業者に対しても導入しやすいクラウド版の訴求を進める考えで、新規パートナー向けのサポートも充実させたいとする。