ヤフーグループのホスティングサービス、ファーストサーバによるデータ消失事故の波紋が広がっています。主要サービスである共有サーバーとEC-CUBEクラウドサーバーのデータ復旧は不可能、専用サーバーも短期間でのデータ復旧は不可能との判断のようです。被害にあった顧客は5698件に上ります。
顧客の大量のデータが事実上失われてしまったことは、情報サービス業界にとって痛恨のできごと。データセンターを活用したアウトソーシングサービスの難しさを露呈する事態になってしまいました。二重三重のバックアップ装置が次々と崩れていくさまは、福島第一原子力発電所の事故を彷彿とさせるものがあり、「絶対に安全」ということはあり得ないことを改めて示したものといえそうです。
「最後の砦、データ復旧サービスがあるじゃないか!」とのご指摘があるかも知れませんが、実は分散処理を行うシステム復旧には、技術的にまだ克服しなければならない壁があります。ファーストサーバは、専門業者にデータ復旧を依頼しましたが、共有サーバーはこの壁を乗り越えられませんでした。専用サーバーのデータにかろうじて復旧の可能性が残っているのは、データが特定のハードディスクに収まっているからなのでしょう。
世界を見渡せば、低価格でありながら、高品質で使い勝手のいいサービスを提供しているベンダーが業績を伸ばしています。翻って自らを見る。まずは最低限、預かったデータを失わない――。日本の情報サービス業の技術力、運用力が試されています。(安藤章司)
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データ復旧 復旧依頼件数の増加傾向が続く 新デバイスや暗号への対策で課題もメールマガジン「Daily BCN Bizline 2012.6.28」より