▼10年ほど前まで、本紙の取材を頑なに拒むメーカーがあった。その当時、ネットを活用した直販で成長していたデルだ。取材拒否の理由は、「チャネル販売（間接販売）の記事がメインの『週刊BCN』に出るメリットはない」というもの。

▼デルは、創業者のマイケル・デル氏がCEOに復帰した2007年からチャネルビジネスを本格的に開始し、本紙の取材にも応じるようになった。「パートナーを通じた販売は着実に増えている。今では、全売上高の38％がチャネルビジネスだ」と米本社の副社長はこの5年の成果を実感している。

▼デルがチャネルを強化するのは、多くの顧客にアプローチするためだ。「地方に幅広くリーチするには、チャネルの力が欠かせない。日本のユーザーは、米国に比べてSI力を期待しているので、その意味でも、ユーザーに近い存在のSIパートナーが必要だ」。アジアパシフィック担当の幹部はこう説明し、今後もパートナー支援に対する投資は惜しまないとした。

▼デルが間接販売を強化したのは、IT産業全体が世界で沈み始めた頃だった。成熟期には従前のやり方を見直し、新たな取り組みが必要。その一つの手段としてチャネル販売は有効であるということを、かつての直販メーカーの雄が示している。（鈎）