中小企業情報化支援協議会とBCNは、7月28日、特定非営利活動法人ITコーディネータ協会の後援を受け、ITコーディネータ(ITC)向けに「中小企業情報化推進セミナー Vol.1」を開催した。中小企業のIT化を推進する複数の有識者が登壇し、ITCが今後果たす役割やビジネス拡大に向けた施策を提案。定員の4倍もの申し込みが殺到するほどの盛況ぶりで、参加者は4時間に及ぶ盛りだくさんの内容を熱心に聴講していた。

パネルディスカッションでは、企業内ITCや独立系ITC、ユーザー、ベンダーが集結。ITの利活用について活発な議論が交わされた
中小企業情報化支援協議会とBCNがセミナー共催
独立系ITCが成功事例を解説  |
| ITコーディネータの鬼澤健八氏は、自身が手がけた千代田漬物のIT化事例を説明 |
今回のセミナーは、ITC向けに「中小企業のIT化を促進するために何が必要か」をテーマに、中小企業向けビジネスを手がける有識者から情報を提供する狙いで開いたもの。プログラムでは、まず週刊BCN編集長の谷畑良胤が登壇。「全国のユーザー事例から見えてくる『成功するITCの共通点』」をテーマに話した。
国内の中小企業のIT化が、世界の先進国に比べて遅れている点を訴えたうえで、中立的な立場で経営とITの両側面からソリューションを提案できるITCこそが、IT化の遅れを挽回するうえで重要な役割を果たすことを強調した。
そのうえで、自身の取材経験をもとに、成功するITCのポイントを解説。「ITCとユーザー企業、ITベンダーの三者が“Win-Win-Win”の関係になることが求められる。そうした関係を築くためには、公的機関などと連携したユーザー企業との出会いの場の創出、システムを開発するITベンダーとの密な連携、ITCの活動を認知しているITベンダーとのアライアンス確立などが不可欠の要素となる」と語った。
次のセッションでは、ITCとして5年前に独立し、中小企業のIT化や経営コンサルティングサービスを提供する鬼澤健八氏が登壇した。鬼澤氏は、ITCとして手がけた成功事例を紹介。千葉県で漬物の卸販売を営む千代田漬物のケースを取り上げた。
千代田漬物は、従業員20人、売上高約6億円の中小企業で、鬼澤氏は5年ほど前から同社のIT化を支援してきた。1年目に老朽化した販売管理システムのリプレースを手がけ、2年目以降は経営顧問を兼ねながら、IT戦略を立案・推進している。その結果、「賞味期限間際の在庫処分が減少し、利益率が約2ポイントアップした」(鬼澤氏)という。この成果は、外部にも評価され、経済産業省が主導する「中小企業IT経営力大賞(2008年度)」で、審査委員会奨励賞を受賞した。
鬼澤氏は「ITの提案ではなく、経営を効率化する、売り上げを拡大させるためには何が必要かという視点で顧客と接することを大切にしている」と説明。一方、千代田漬物の柿澤好徹氏は、「ITリテラシーが決して高くないわれわれにとって、経営力向上の観点からITを提案してくれる鬼澤氏の存在は大変貴重。ITのコンサルトというよりも、経営のパートナーになってもらっている」と話し、ITCは欠かせない存在であることを強調した。
ITCに対しての新たな提案も  |
| 中小企業情報化支援協議会の森戸裕一事務局長は、中小企業のIT化促進には、「ITCが変わらなければならない」と述べた |
続いて登壇した中小企業情報化支援協議会の森戸裕一・事務局長は、「ビジネスチャンスを創りだすコンサルタント集団とは」をテーマに講演。「中小企業でも大手企業と対等に戦えるのが今の情報化時代」と説明したうえで、中小企業を支援するITCが進むべき道を提案した。
森戸氏は、「経営コンサルタントとしてではなく、ユーザー企業とともにビジネスの成長を一緒に考える“ビジネスプロデューサー”が求められてくるはず。経営とITの知識を備えるITCには、次世代のビジネスの成長路線を築くための地盤がある。われわれはITCがビジネスプロデューサーへと変わるための支援をしたいと」と語り、中小企業情報化支援協議会への参加を呼びかけた。
中小企業情報化支援協議会は、中小のユーザー企業と、組織化する会員とのビジネスマッチングの場を提供する任意団体で、初年度の年会費無料で会員を募っている。森戸氏の話によれば、一般社団法人化も検討しているという。 最後のセッションでは、中小企業の有識者を集めたパネルディスカッションを開催。前出の鬼澤氏と森戸氏に加えて、ユーザー代表として千代田漬物の柿澤好徹氏と、企業内ITCとしても活躍するネクストウェアの太田垣博嗣氏、ベンダー代表として富士通の弓田光正氏が登場し、ITの利活用について活発な議論が繰り広げられた。
今回のセミナーは、参加者をITCに限定したが、事前登録者は定員100人に対して約400人に達する盛況ぶり。参加者はプレゼンテーションを熱心に聞き入っていた。