デジタルアーツ（道具登志夫社長）は、4月1日付で米国に「デジタルアーツ・アメリカ」と、英国に「デジタルアーツ・ヨーロッパ」を設立した。

　同社はすでに自社独自のフィルタリング技術「ZBRAIN」で特許を取得。現地では市場調査を開始するとともに、同社がセキュリティ製品を提供している通信機能をもつ家庭用ゲーム機やインターネット対応テレビなどのグローバルサポート体制の確立、製品販売、現地同業企業の買収や協業を模索していくという。道具社長は「ソフトメーカーとして創業したときから、いずれは海外進出して多くの人に使ってもらいたいと考えていた」と話す。投資ができる体制が整ったことと、国内で製品を供給している端末メーカー、法人の顧客などから、グローバルサポートの要請を受けていたことも後押しして海外法人の設立に至った。海外法人では、海外ビジネスの経験が豊富な人材を選定して代表に据えた。現在は海外で製品を展開するために、米国やヨーロッパの文化、流行を捉えたフィルタリングデータベースを収集し、販売できる品質まで高める段階にあるという。当面は個人向け製品「i-フィルター」をネット接続端末にバンドルする手法とダウンロード販売のみを想定し、営業担当はまだ配置しない予定だ。

　なぜ米国、英国に進出したのかという問いに対して、道具社長は「米国や英国では日本のノウハウが応用しやすい。一般消費者のニーズが日本と同じであることがわかった。また、フィルタリングソフトの競合メーカーが存在しており、製品の提供方法、収益モデルも似ていることから、成長できる土壌があると踏んだ」と答える。また海外は日本の10倍もの市場が存在することから、飛躍的成長を見込むことができるのも魅力的だ。

　現状はグローバルでのデータ収集とサポートを中心として、現地でエンジニアの採用を進めている。また第二弾として、アジアも含めた新たな国への進出も視野に入れている。

　道具社長は「日本では今のままの成長でいいとは決して思っていない。日本のビジネスも伸ばしていくことを前提にして、5～10年後には3～4割を海外での売り上げにもっていきたい」と目標に言及した。

　今後は法人向けでの展開を計画。また、同業他社の買収によるビジネス拡大も模索する。海外ではウェブセンスなどが競合として存在しているが、日本では日本固有の問題に対応した国産のウェブフィルタリング製品が高いシェアをもっている。つまり、海外でも固有の文化によるURLの収集と判断基準が求められているということだ。脅威がボーダレスになっているだけでなく、ユーザーのビジネスもグローバル化しているなかで、海外展開は必然だったのかもしれない。道具社長は年初のインタビューのなかで「2011年は当社の命運を占うという意味で、インパクトのある年となりそうだ」と語っている。（鍋島蓉子）