高度成長を続ける中国IT市場では、ソフト・サービスの比率拡大が顕著に現れつつある。中国大手IT調査会社の賽迪顧問(CCIDコンサルティング)によれば、2012年から2014年までの年平均成長率は、ハードウェアが9.7%の見通しなのに対し、ITサービスは19.5%、ソフトウェアは18.4%が見込まれるなど、かつてのハード偏重の構造が変容しつつある。日本との関係では、これまで中国でのオフショアソフト開発の割合が高かったが、ここ数年は開発規模の頭打ち傾向が続いており、日中間のIT分野における関係性が大きく変わろうとしていることがうかがい知れる。(取材・文/安藤章司)

賽迪顧問(CCIDコンサルティング)の孫会峰副総裁(写真左上)、NTTデータ経営研究所の豊田充社長(同左下)。早稲田大学での国際シンポジウム「日中ビジネス推進フォーラム」の会場風景
ソフト・サービスの比重が拡大
CCIDコンサルティングの調べによれば、2011年の中国IT市場規模は前年比約18.6%増の1兆3081億元(約17兆円)と、高度成長を続けている。2012~14年までの年平均成長率は13.2%で、母数拡大に伴って成長率は鈍化するものの、それでも2ケタ成長を維持する見通しだ。一方、日本国内の2011年~16年のIT市場の年平均成長率は0.4%と調査会社のIDC Japanが予測しており、成長市場と成熟市場の違いが際立っている。
注目すべきは中国IT市場の内訳である。2011年はIT市場全体に占めるハードウェアの構成比が65.2%であったのに対し、2014年はソフトウェアとITサービスの構成比の拡大によってハードが59.3%、ソフト・サービスが40.7%へと変化する。この5月に開催された早稲田大学主催の国際シンポジウム「日中ビジネス推進フォーラム」で講演したCCIDコンサルティングの孫会峰副総裁は、「中国では地域や業界でさまざまな開発計画やモデルプロジェクトが動いており、こうした動きを的確に捉えていくことが大切」と、IT投資を含めたインフラ整備が急ピッチで進んでいると指摘。そのうえで、「CCIDコンサルティングを中国投資の窓口、ナビゲーター役として活用してほしい」と訴えた。

また、日本と中国の関係をみると、かつて急成長した中国でのオフショア開発は、ここ数年、伸び悩みが続いている。日本での大型ソフト開発プロジェクトが縮小の傾向にあって、大手SIerやITベンダーが雇用維持のために自社グループでの内製化を進めざるを得なかった事情が背景にある。日本のオフショア開発の発注先をみると、中国が全体の8割余りと圧倒的なシェアを占める。今後は、単純なプログラミング開発ではなく、より付加価値の高いBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)を軸とした「サービスアウトソーシングへ推進していく」(国内最大手SIerグループ会社で調査研究・コンサルティング分野を担うNTTデータ経営研究所の豊田充社長)ものとみられる。
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また、中国国内の市場が急拡大していることから、日本のSIerやITベンダーがこぞって中国への進出を拡大。これまで日本からのオフショア開発を手がけてきた中国地場ベンダーは、こうした日系ベンダーの中国におけるソフト開発やサービスアウトソーシングのビジネスパートナーとして事業を拡大していくことが期待される。