富士通マーケティング(FJM、生貝健二社長)は、昨年10月に発売した中堅・中小企業(SMB)向けの販売管理システム「GLOVIA smart きらら 販売」の拡販策の一環として、パートナー23社とコンソーシアムを立ち上げ、8月1日に活動を開始した。FJMはもちろん、参加パートナー各社がもつ業種別の開発モデルや事例をテンプレート化して共有するとともに、開発ルールを共通化する。さらには、業種特有の営業・販売ノウハウなども共有。「GLOVIA smart きらら 販売」ビジネスの拡大に向けた取り組みの受け皿にする。
富士通グループのSMBビジネスを担うFJMは、2010年10月の発足以降、富士通の業務ソフトパッケージ「GLOVIA」シリーズのSMB向け製品「GLOVIA smart きらら」を開発・販売するなど、創業のコンセプトに沿った製品ラインアップの整備を進めてきた。しかし、「GLOVIA smart きらら」は、先行して発売した会計、人事給与のモジュールでSaaS版とパッケージ版の両方を展開し、当初はFJMの予想以上にSaaS版が普及したことが売り上げの停滞につながった。最初のうちはパートナーがSaaSの目新しさに飛びついたが、従来型のSIビジネスにはなじみにくく、粗利も低いために、徐々に売りたがらなくなってしまったのだ。
そんな状況を打破したのが、昨年10月に発売した販売管理モジュール「GLOVIA smart きらら 販売」だ。これはパッケージ版だけの展開で、「GLOVIA smart きらら」シリーズ全体の販売手法を従来型のSIモデルにフィットさせるための戦略的な製品でもある。川嶋健司・ビジネスパートナー本部本部長代理は「発売の2年半ほど前からパートナーの声を聞きながら開発を進めた。コアの部分は販売管理の基本機能の実装にとどめて、SEが仕事をする余地をつくるように機能を絞り込み、汎用性の高いパッケージに仕上げた」と説明する。結果として、この製品はパートナーにも広く受け入れられ、FJMと従来の富士通パートナーの良好な関係づくりに大きな役割を果たした。「GLOVIA smart きらら」シリーズ全体の販売拡大にもつながり、昨年度は、前年度比約2倍の実績を上げた。
今回の「GLOVIA smart きらら 販売」コンソーシアム設立の狙いは、パートナーとの協業体制をさらに強化して、「GLOVIA smart きらら 販売」、さらには「GLOVIA smart きらら」シリーズの市場でのカバレッジを広げていくことにある。
コンソーシアムには、業種別に販売力のあるパートナーに立ち上げメンバーとして参加してもらい、彼らとFJMのSIや販売のノウハウなどを集積する。具体的には、「GLOVIA smart きらら 販売」のアドオン開発手法を標準化することで、テンプレートの充実を図るとともに、メンバー各社のSEのスキル育成プログラムを実施するほか、FJB(富士通ビジネスシステム)時代からFJMが蓄積してきたコンサルティングのノウハウをはじめ、各パートナーとFJMの売り方モデルなども共有して、営業面もサポートする。つまり「GLOVIA smart きらら 販売」に関する開発スキル、営業ノウハウをパートナー間で共有する仕組みをつくることで、「より手離れのいいシステムに仕上げて、多くのパートナーが労力・コストをかけずにこれまで以上に質の高い商品をユーザーに提供できるようにする」(川嶋本部長代理)というわけだ。
当面の参加メンバーは23社で、特定の業種・業態向けの開発ノウハウに強みをもっているという要素のほか、全国各地方でのポジションなども考慮して、「GLOVIA smart きらら 販売」の拡販上、重要な役割を担う企業を厳選したかたちだ。23社はコンソーシアムのなかで「開発パートナー」と位置づけられ、商品力強化と拡販の両方を担う。今年度は、コンソーシアムメンバーで100社の新規ユーザー獲得を目指す。また、販売を中心とする「セールスパートナー」と、「きらら 販売」との連携商品を開発・提供する「アライアンスパートナー」も募り、順次、組織を拡大していく。
なお、事務局はFJMに置き、基本的には活動資金もFJMが負担し、会費制は採らない。ここにもパートナーとの協業を加速させ、SMB市場のさらなる切り崩しに取り組むFJMの「本気」が現れているようだ。(本多和幸)