米デル(マイケル・デルCEO)が今年6月に稼働を開始した中国・成都のデスクトップPC工場「CHENGDU OPERATIONS SITE」。米デルはこの工場の内部を、11月中旬にアジアの報道関係者に初公開した。米国と欧州、そして中国の需要に応えるために建設された最先端工場を取材した。(取材・文/木村剛士)

施設の面積は約3万m2。「成都双流国際空港」から自動車で約1時間の場所にある厦門に次ぐ2拠点目のPC工場
米デルのPCは、北米と南米、欧州、マレーシア、中国にある工場で製造しており、これらの5か国から全世界に出荷している。中国での生産は1998年に開始。中国大陸南部の厦門(アモイ)に工場を設置した。今回の成都に建設した「CHENGDU OPERATIONS SITE」は中国内で2都市目で、規模は厦門の4分の1程度。工場面積は3万m2で、12の生産ラインを備え、現在の生産台数は月間数千台程度だが、拡張次第で年間約700万台を生産できるという。生産するPCはデスクトップ型に限定しており、デルのデスクトップPCの全ブランドを生産する体制を整えている。スタッフは現在300人程度だが、毎月増員している状況で、早いうちに1000人を突破する見込みだ。
実際の作業現場をみると、生産の流れは、(1)製造に必要な全部品を一つの箱に集約(2)部品をきょう体に組み込む(3)正常に稼働するかどうかをテスト(4)梱包(5)仕分け──の5工程に分けられていることがわかる。一連の作業が一つのラインで動かされ、20人程度のスタッフが手分けして作業する。一人または少数の人数で製造する「セル生産方式」とは一線を画している。1台のPCをつくるのにかかる時間は、1時間から1時間半だ。生産したデスクトップPCの出荷先は、米国と欧州、そして中国。成都を出て上海から船で輸送され、ユーザーの手元に届く。
内陸需要を見込んで成都に建設
今回、米デルが成都を選んだ理由は、沿岸の都市に比べて低コストで人員を雇用することができることと、今後PCの重要が増えることが見込まれる中国内陸部のユーザーに対して、迅速にPCを届けられるようにするためだ。そして、もう一つの大きな理由は、欧州と中国を結ぶ長距離鉄道の建設計画があること。まだ決定はしていないが、実現すればデルにとって、欧州への出荷が現在の船を活用する輸送に比べて、コストと時間を大幅に削減することができるようになる。デルはこの計画を見越して、内陸の有力都市、成都での建設に踏み切った。
米デルは、今年11月中旬、アジア・パシフィック地域10か国に点在するパートナーを一堂に集めたイベントを開いたが、その開催地に成都を選んだ。中国内陸部のビジネスについては成都を中心に推進していこうという考えが垣間見える。
データセンターを併設
「CHENGDU OPERATIONS SITE」は、デスクトップPCの工場とは別の顔をもつ。それがデータセンター(DC)だ。デル社内の日々の業務を支援するDCを併設している。今年6月に稼働を始めた施設とあって、小規模なDCではあるものの、利用する技術は先進的だ。とくに消費電力を抑える技術に特徴があり、電力を最適化する独自のソリューションを導入することで、従来に比べて35%も節電している。エネルギー効率を占める指標の「PUE(Power Usage Effectiveness)」は、中国の施設平均2.2を下回る1.6~1.8(数値が小さいほど効率がいい)を実現しているという。
DCで利用するサーバーやストレージ、ネットワーク機器は、95%がデル製品で占められている。コンピュータ関連製品に強いデルだが、企業買収を重ねて、ソフトウェアやネットワーク機器を取り込んできた。担当者は、「DCを設置するのに必要なIT製品を、ほぼすべてデル製品でまかなうことができている」と誇らしげに語った。ユーザーやパートナーの訪問機会が多いだけに、DCを併設することによって視察できるようにして、DCも一緒にアピールしようとしているようだ。
中国を一大生産基地としながらも、一方で巨大市場と捉えて拡販しようとしているデルの戦略は、したたかだ。

組み立て作業は、1ラインにつき7人のスタッフが分業して行っている
生産ラインには複数のモニタを設置。実際の作業ではモニタに仕様を表示する
チェック工程の一つ。電源が正常に入っているかどうかを確認する作業
テストプログラムをLANケーブルを通じてインストール