デル
限定した有力販社との連携強化
ミニ勉強会など地道な活動も
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デル 阿部浩也本部長 |
デルは、ここ数年取り組んでいるチャネルビジネス体制の増強を重点戦略としている。11年2月にグローバル共通の戦略として、パートナーを通じた間接販売を強化するための専門組織をつくった。「グローバルコマーシャルチャネル統括本部(GCC)」がそれで、間接販売体制をとくに必要とするSMB事業部門との連携を強めている。
SMB市場向け事業を担当するCSMBアドバンスシステムグループ本部の阿部浩也本部長は、「SMBマーケットでは、パートナーといかに密な連携を取るかがカギを握る。GCCとともに、SMBに強い有力SIer30社を選出して、デル製品の取り扱いを増やしてもらうように交渉を進めているところだ。また、地方に強い地場SIerとも協業体制を構築できるように戦略を練っている。およそ80社を選定し、交渉を進める」という。デルは間接販売網の構築で他社に遅れをとっている。一挙に複数のパートナーの協業関係を築くのは無理とみて、たとえ数は少なくても厳選した有力SIerとの蜜月関係を築くほうがいいと判断している。
こうした協業網の増強に加えて、デル製品の特徴を訴えかける地道な活動も展開する。昨年、「ホワイトボードセッション」というユーザー向けのミニセミナーを企画し、50回ほど開催した。1回につき参加者を10人ほどに限定した催しで、成約に結びつきやすい見込み客の発掘に貢献しており、「手応えを感じている」(阿部本部長)。これを今年はパートナー向けにアレンジして開く予定だ。「チャネルビジネスは後発で、他社よりも支援制度も内容もまだまだかもしれないが、徐々に整備してきている。地道な活動を通じてパートナーの信頼を得られるようにする」と阿部本部長は意気込みを示している。
日本IBM
ディストリビュータとの協業
「仮想化」を身近に
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日本IBM 小林泰子事業部長 |
日本IBMは、引き続き、仮想化をキーワードにしたソリューション提案に力を注ぐが、その一環としてディストリビュータとの協業を推進している。2011年7月に、ダイワボウ情報システム(DIS)との新たな協業を発表した。仮想化したアプリケーションサーバーをSIerが容易に構築することができるようにするために、サーバーと仮想化ソフト、アプリケーションをパッケージ化した「DIS Easy Virtual Package Plus(EVPP)」を企画・開発した。「仮想化は相変わらずニーズが強く、今年も期待できる。SMB層にも広がっているので、ディストリビュータの傘下のSIerに提案しやすいパッケージが必要だと思った」と、小林泰子・理事システムx事業部事業部長は狙いを語る。今後はDISだけでなく、ほかのディストリビュータともこうした協業を実行していきたいとの考えを示す。仮想化がSMBにも受け入れられるキーワードになり、幅広く売るためにはディストリビュータの力が欠かせないというわけだ。
また、以前から進めているソリューションに合わせてサーバーとソフト、導入ガイド、サポートサービスを組み合わせたパッケージ群「太鼓判」のラインアップを強化しながら、パートナー企業のオフィスに直接出向いて売り方や技術的優位性を説明する「出張セミナー」を続ける。昨年はおよそ120回開催したが、今年も同じくらいの規模で行う。売りやすいソリューションパッケージを用意して、それをFace to Faceで地道に説明する。それが日本IBMの戦略の軸となっている。
記者の眼
1年ほど前にも、この記事に登場する5社にx86サーバーの戦略について取材した。BCPや災害対策といった新たなキーワードが出てきたものの、基本的な戦略は1年前と変わらない。基本は、販売パートナーをいかに囲い込むかにある。「直販・箱売り」だったデルのシェアが落ち、その戦略を転換してグローバルでチャネルビジネスを強化することからも、販売パートナーの重要性が高まっていることは明らかだ。
ある富士通系SIerは、売り方についてこう言及する。「当然だが、ユーザー企業に『サーバーを買ってください』とは言わない。顧客の課題を解決するソリューションを提案し、受け入れられてはじめてサーバーが売れる。欲しいのは、われわれが思いつかないソリューションだ」。
ソリューションを考えるのがSIerの仕事とは思うが、少なくともメーカーが重視しているパートナーがそれを欲していることは間違いない。サーバーメーカーは、ユーザーにとってもパートナーにとっても、ソリューションプロバイダになることを要請されているのだ。