「DC」と「ミッドレンジ」 二本柱でシェア獲得に意欲
外資系メーカーは事業拡大に向けてどう動いているのか。ここからは、各社の取り組みを紹介する。
日本HP
200人の専任部隊を走らせる

木村剛
部長 外資系サーバーメーカーのなかで、勢いよく販売実績を伸ばし、事業の拡大が目立つのは、日本HPだ。2013年11月に始まった2014年度の第1四半期に、x86サーバーにけん引されてサーバー事業の売り上げが前年同期比「2ケタの成長」(HPサーバー事業統括本部事業戦略企画室の木村剛部長)を記録したという。クラウド事業者やゲームなどを提供するサービスプロバイダ向けの大口案件が活発なことが、ビジネス展開に刺激を与えたとみられる。
木村部長は、「業界のニーズによって多様なサーバーを用意する製品戦略が功を奏した」と分析している。日本HPは、サーバーの上で動くアプリケーションの特性によってサーバーにかかる負荷(ワークロード)が異なると捉え、ユーザー企業ごとのワークロードを想定し、利用形態に合わせてサーバーを提案する活動を販売パートナーとともに徹底している。さらに、「円安が進行したことの影響で単価が上がっている」という、海外を生産地とする外資系メーカーならではの追い風を受けて、売り上げ・利益の両面でサーバー事業が好調の模様だ。
●IBMのリプレース需要は「すごい!」 日本HPは、IBMのx86サーバー事業のレノボへの売却と、「Windows Server 2003」の来年7月のサポート終了が相乗効果をもたらして、「サーバー提案の最大のチャンス」(木村部長)と捉えている。
調査会社のノークリサーチによると、IBMのx86サーバーの日本のユーザー企業(年商500億円未満)の18.8%が「導入済みのサーバー」を、11.4%が「新規導入のサーバー」をそれぞれIBM/レノボ以外のメーカーへの切り替えを検討しているという。
そんな情勢にあって、日本IBMと同じ外資系で、サーバーの構築・販売に必要なスキルが類似している日本HPは、「(日本IBMの)次の選択肢として、当社製品を選ぶ販社が増えている」(木村部長)として、販社と密に連携し、IBMサーバーのリプレース需要を狙う。木村部長は、「具体的な数字は言えないが、引き合いはすごい!」と驚きを隠さない。
日本HPは、自社営業と販社を支援するために、2013年11月にセールス体制を刷新し、約200人のメンバーで構成されるサーバー専用のサポート部隊を立ち上げた。この部隊は、バックヤードでサーバーの営業活動を束ね、受注に至る期間を短縮することによって、利益の向上につなげることを目指す。 「地方を含め、パートナーとのエコシステムづくりにも注力し、ビジネスを伸ばしたい」(木村部長)としている。
日本オラクル
激戦区のミッドレンジに挑む

桑原智宏
部長 日本オラクルは、ハイエンド向け製品の開発・販売に、サーバー事業の軸足を置いている。サーバーなどを統合するデータベース(DB)マシン「Oracle Exadata」の提案に注力し、この7月、スマートフォン向けアプリケーション「MUJI Passport」で収集した顧客データを管理・分析する基盤として良品計画に納入するなど、「データ活用」を切り口とする販売実績を伸ばしている。さらに、ビッグデータ分析やクラウド基盤に適したx86サーバーの新製品を7月に投入し、サーバー商材の拡充を進めているところだ。
日本オラクルが直面しているのは、ターゲット市場をハイエンドから拡大する必要性を感じると同時に、「価格競争が激しく、利益を出しにくいローエンド市場では戦いたくない」(ソリューション・プロダクト統括本部プロダクトビジネス推進部の桑原智宏部長)というジレンマだ。残るのは、ミッドレンジだが、こちらは、日本IBMが「Power Systems」を商材に、開拓に本腰を入れていく市場になるので、決してハードルは低くない。
そんななかにあって、日本オラクルは、「Oracle Exadata」に業種特化型のアプリケーションも統合し、「フルポートフォリオを当社が一社で提供できる」(桑原部長)ことを武器にして、「日本IBMの動きをウォッチしつつ」(同)、ミッドレンジからローエンド市場の開拓に取り組んでいく。
●検証センターを認定 
宮坂美樹
副統括本部長 一方、ハイエンドで注力するのは、パートナーを巻き込み、サーバーが中核となるソリューションの提供を強化することだ。
今年4月、CTCの総合検証センター「Technical Solution Center」が、アジア太平洋地域で初めて、オラクル製品のデモンストレーションや検証に適した施設として、米オラクルに認定された。CTCはそれを踏まえ、第一弾として、オラクルのUNIXサーバー「SPARC」を活用した仮想化統合ソリューションやDBシステム構築ソリューションを発売した。今後、認定を生かし、オラクルソリューションの開発や販売促進を加速し、オラクル事業の拡大を目指すという。
日本オラクルのソリューション・プロダクト統括本部の宮坂美樹・副統括本部長は、「パートナーは当社の認定によって、すぐに提案し、すぐに受注することが可能になり、案件の利益率が上がる」と利点を説明する。「技術情報など、米国で培ったナレッジも提供する。今後、大手SIerに展開して、CTCのような強いパートナーを育てたい」としている。日本オラクルは、サーバー事業で伸びしろがあると捉え、「手の届いていないパートナー」への支援を手厚くすることによって、販売体制を強化していく。
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