Special Issue

<BCN DataCenter Meeting 2012> 「データセンター」のいまと次代への足がかり

2012/05/23 19:56

IDCフロンティア
事業企画本部
事業企画部 部長
山中敦 氏
久保 DCの電力効率を考えるうえで、直流(DC)と交流(AC)の変換ロスは効率の悪さの大きな原因の一つです。これを解消する高圧直流給電が注目されていますが、直流にするにしても、交流と混在していては効率が悪く、対応する施設も限られます。コスト面も含め、ハードルは高いですね。ただ、高圧給電はメリットがありますし、実際に、松江の施設はすべて200Vにしています。

大槻 全体として思うことは、実現性の低い努力を強いられることですね。国が出す省エネ基準がDC運用の実態に即していないのに、今年さらにマイナス10~15%を求められても現実的には不可能です。国は基準となる指標を、根拠も含めて明確にしてほしいと思います。

江崎 電力事情が最も厳しいといわれる関西が拠点の関電システムソリューションズさんはいかがですか。

河田 当社は昨年第3DCをつくったばかりですが、現在は解析ツールを活用して、電源や空調などのファシリティ系のエネルギー消費について“見える化”の取り組みを進めているところです。多くのデータを蓄積していくことで、いかに効率を上げるかの具体的な方策が決まってくると思います。ただ、都市型DCの場合は共用部分があるので、消費電力は昼間は高く、夜になると下がるという傾向があります。

長谷川 自分たちの管理下にある機器であればどうにでもできますが、ユーザーの環境を勝手に変えたりできないというジレンマがあります。

ビットアイル総合研究所 所長
長谷川章博 氏
大槻 DC事業者の第一のミッションは、安定したインフラをどう提供していくかです。このミッションがいろいろな足かせを受け、なにかしらの影響を受ける事態になると、社会インフラにも大きな影響を及ぼすこともある。その点を、もっと社会全体で考えてほしいですね。

江崎 収容している企業システムの数を含めてDCを評価すれば、重要度の評価は変わってきます。例えば、DCの数が増えても、各社がオンプレミスで行っていたぶんの電力が減れば、全体の消費は減る。この点を電力会社にも国にも理解してほしいですね。これにはスマートメーターがうまく活用できるのでは、と考えています。

山中 例えば、スマートメーターを導入して、オンプレミスとDCに預けた場合とを比較してその効果がわかれば、それは企業のシステム担当者への高い評価につながりますし、大きなモチベーションになると思います。そんなパイロットケースがあるといいですね。

河田 企業のオンプレミスのサーバーをDCに移設するケースでは、大きくコロケーションとプライベートクラウドという二つの方法があります。どちらにしても、できるだけ集約していくことで、エネルギー効率も高まりますし、社会基盤としても安定したものになります。当社もできるだけ多くのお客様に利用していただきたいと思います。

江崎 発電機、UPSなどの電気設備のコストについてはいかがでしょうか。

IIJ
サービスオペレーション本部
データセンターサービス部長
久保力 氏
久保 万が一のときに発電機で電力供給するという考え方を変えない限り、大きな変化はないと思います。ただ、クラウド環境で一つのサーバーが落ちたときに別の設備で継続できるのであれば、発電機を廃止して、UPSで安全にシャットダウンできればよい、という考え方もあります。

 ただし、別の場所にバックアップのサーバーとストレージを用意しなければならないので、トータルコストを下げるためには、バックアップの設備を、複数のデータセンターで共有するなど工夫が必要です。

山中 一般のバッテリの改良は急速に進んでいるのに対して、UPSバッテリの改良はかなり遅い。バッテリは寿命が短く、もっても6年、早ければ4年で使えなくなります。その入れ替えコストに加え、占有スペースもばかになりません。

市川 実際は発電機やUPSなどの問題よりも、やはり古いDCをどうしていけばいいのかということのほうが大きな問題ですね。とくに、ユーザーのシステムが実際に稼働しているセンターの設備をどうするのかは、最大の課題になります。ユーザーを抱えたまま設備を改変するのは危険ですし、コストや置き場所も含めて、どうしていくかを検討しているところです。

長谷川 ユーザーがどのような機器を使っているかにもよりますね。PaaSなら、当社がイニシアチブをとって使い方を示すことができます……。

江崎 日本では、電力を余分に引くことができないという状況もあります。

大槻 日本には法的な規制が多い。例えば東京では、狭い場所で高収容の設備を作りたくても、規制でそれができません。電源ケーブルも、細い線をその都度引かなければならない。1ラックあたり30サーバーの収容というケースも増えていますが、日本には1ケーブルで30電源を供給できる規格の製品自体がなく、ニーズに効率的に応えることができません。

市川 各社とも、いかに消防法に抵触しないようにするか、工夫していると思います。

河田 当社でも、解析ツールをもとに空調を最適化する仕組みを模索しています。

江崎 DCの最適化を突き詰めていくには、空調ベンダーとゼネコンの参加も不可欠ということですね。

大槻 米国では産学協同でこの課題に取り組んでいるケースが多くみられます。例えば、DCの排熱を大学キャンパスの暖房に使うなど、一企業ではなく、一つのコミュニティとして最適化に取り組んでいます。それが社会的にも大きな効果をもたらしています。実にうらやましい話ですね。

江崎 いま、日本のDC産業が置かれている現状がよくわかりました。皆さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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