クオリティソフトは、2012年度（13年9月期）の期首に「Reborn（再生）」をテーマに掲げ、主力製品の操作性向上やオンプレミス型システムとクラウドの融合などを進めてきた。その戦略が功を奏し、昨年度は大幅な増益を達成。大きく飛躍した。今年度のテーマは「Revolution（変革）」。主力製品・サービスの機能を継続して強化すると同時に、営業力の強化に力を注ぐ。久保統義社長に、今年度の戦略を聞いた。

「再生」から「変革」へ　新たな成長に向けて始動

　クオリティソフトは、昨年度、主力のIT資産管理ツール「QNDシリーズ」やクラウド型マルチデバイス管理ツール「ISM CloudOne」が伸び、前年度比120％の収益を達成した。「この2年間、『Reborn』をテーマに主力製品の機能を増強し、各製品の連携にも取り組んだ。QNDシリーズの製品名を変更するなど、過去にない施策にいくつもチャレンジしてきたが、多くのお客様に高い評価をいただき、おかげさまでQNDシリーズは400万ライセンスを突破した」と、久保統義社長は振り返る。

　ISM CloudOneも順調に伸び、昨年度だけで6000社の新規ユーザーを獲得。累計ユーザー数は3万5000社を超えた。ユーザーの中心だった中堅・中小企業（SMB）だけでなく、超大手・大手企業がクオリティソフトの実績と高い技術力を認め、続々と導入したことが大きい。導入台数が1万台を超える大規模案件を複数獲得したという。

　好調な業績を受けて、今年度、クオリティソフトは「Revolution（変革）」を新たなテーマに掲げ、新たな施策に打って出る。

　その取り組みの一つが、「QND Advance」へのURLフィルタリング機能の実装だ。有償ではなく、無償のオプションとして提供する。久保社長は、「クライアント管理に必要なあらゆる機能を搭載していくのが当社の戦略。URLフィルタリングは、従来プロキシで行うことが適切だと考えていたが、URLフィルタリング機能の技術が進化し、スマートデバイスやSNSの普及によってユーザー環境も変化したことから、QND Advanceに搭載することが最適だと判断した」と述べる。無償提供については、「たくさんの方々に利用いただき、当社も利益を出すことができた。この利益をお客様に還元する」と説明する。

　もう一つの施策が、クライアントバックアップ製品の拡充だ。今年10月、ITベンチャーのデジタルアーティファクトと提携し、デジタルアーティファクト製品の国内総販売元としてビジネスを展開することになった。久保社長は、「デジタルアーティファクトは、クライアントバックアップ機能に長けたアプライアンス『datasaver』をもっている。クライアントバックアップはIT資産管理との相性がよく、私たちのユーザーに提案する価値がある。パートナーがビジネスを展開しやすいように、柔軟な考え方で手がけていきたい」と、提携の理由とこれからの展開を語った。

地方に拠点を設置　東南アジア事業に着手

　今年度のクオリティソフトは、営業力も一気に強化する。これまでは、東京、名古屋、大阪の大都市に営業拠点を設け、主要商圏を中心に展開していた。しかし、今後のビジネスの拡大を考え、「地方での提案活動を積極的に行う必要がある」（久保社長）と判断。札幌、仙台、和歌山、福岡に営業拠点を設置した。

　海外ビジネスも広げる。クオリティソフトは中国・上海に現地法人をもち、事業は順調だが、今年度からは東南アジアにも力を入れる。中国のように現地法人を設立するのではなく、各国でビジネス基盤を築いているITベンダーと協業して販路を構築する戦略だ。今年8月には、KDDIグループで東南アジア圏に強いDMX Technologies（DMX）とグローバルビジネスパートナー契約を締結している。

　久保社長は、「日本のユーザー企業は、海外に拠点を構えても、現地に専任の管理者を配置できないケースが多い。ISM CloudOneは最初から海外での利用を意識した製品で、クラウド型なので手間なく運用ができる。こうした利点を訴えて、海外でも存在感を示したい」と意気込む。

　「Revolution」をキーワードに、製品力と営業力をさらに高めていくクオリティソフト。IT資産管理ツール分野でトップクラスの実績をもつクオリティソフトの勢いが、さらに増すのは必至だ。