日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は10月20日、クラウドネイティブへの変革に向けて取り組むISVが、既存アプリケーション資産を生かしながら、次のステップに移行するための支援策を紹介するウェブセミナーを開催した。セミナータイトルは「クラウドネイティブへの変革とビジネス拡大―パッケージソフトウェアの持続的成長へのステップ」。エンジニア視点によるパッケージソフトの将来の考察や、クラウド上での提供モデルの検討、IBMパートナーによるクラウド構築、開発、プロモーションの支援サービスなど、4セッションを紹介した。

日本IBMの小林伊佐夫・次世代チャネル開発部長

パートナー・プログラム強化で新ビジネスのスタートを支援

 オープニングに登場した日本IBMのパートナー・アライアンス&デジタル・セールス事業本部の小林伊佐夫・次世代チャネル開発部長は、新型コロナ対策で各企業の働き方改革が加速。特に、リモート業務の実現や不確実性が高まる世界への対応が必須になっていると前置きした上で、「日本IBMでは、ソフトウェア開発事業者の方々がユーザーの要望に応えるために必要なアプリケーションのデリバリー基盤を提供していく。具体的には、クラウド化の支援、利便性や拡張性を確保したオープンでセキュアなアーキテクチャーを含む基盤づくりをお手伝いする」と語った(※1参照)。
 
(※1)企業アプリケーションのデリバリー変革への支援

 特別セッションには、日本IBMのデベロッパー・アドボカシー事業部の大西彰・事業部長が登場し、「エンジニア視点でのパッケージソフトウェアの将来」をテーマに講演した。大西事業部長は、サブスクリプションエコノミーが進み、日本では「2025年の崖」に向けデジタル変革(DX)が重要だが、日本企業の多くで変革が進んでいない状況だと指摘した。「DXはシンブルに考えるべきで、無駄な時間を省く、判断時間を最小にする、どこからでもアクセスできるようにするに尽きる」。また、ビジネス側、技術側が寄り添いながらDXを進める必要があるが課題も多いとも強調し、「言い換えれば、ソフト、アプリ、ソリューションを開発する皆様のビジネスチャンスはとても大きい」とした。

 デジタル化とは、アプリ開発と運用そのもので、そのアプリ開発のプラットフォームは、特定環境に縛られないものでなければならない。こうした課題に応えるのが、コンテナ技術、仮想化技術、ハイブリッド・クラウド対応が特徴の「Red Hat OpenShift」で、「DXを加速するプラットフォームになる」とアピールした。

 そして、OpenShift4.4から実装された新機能のOpenShift Virtualization(大きなコンテナ)とQuarkus(小さなコンテナ)について技術デモを交えて解説した。OpenShift Virtualizationは、Kubernetesを使用する仮想マシンの実行・管理機能で、例えば、コンテナ化がすぐにできないWindows Server上のアプリに対して、OpenShift上でコンテナと同様に仮想マシンを配備して実行できるようになる(※2参照)。Quarkusは、KubernetesやOpenShiftのコンテナに最適なJavaフレームワークで、ソースコードへの変更が瞬時にアプリに反映されるDeveloperモードを持ち、ネイティブ・パッケージを生成することでJavaアプリの高速起動を可能にする(※3参照)。
 
(※2)仮想マシンにWindows Serverを展開し、IISと.NET Frameworkを使ったウェブアプリを稼働させ、OpenShift上のウェブアプリとして公開するデモ
 
(※3)Quarkus、Java VMとネイティブでのアプリ実行、速度比較デモ

 「ヘビー級リソースはOpenShift Virtualizationで、ライト級リソースはQuarkus。どちらもアプリのモダン化に役立つ」とした。また、OpenShiftにIBM Cloudを活用するメリットを説明し、IBMとRed Hatの連携をはじめ、IBM Cloud内部ネットワーク通信料が無料である点やベアメタルサーバーの有用性をアピールした。

 また、「アプリのOpenShift対応は皆様の新たなビジネス機会につながる。アプリの力で日本の未来を変えよう」と呼びかけた。
 
日本IBMの大西彰・デベロッパー・アドボカシー事業部長

 続いて、日本IBMの次世代パートナー開発部の宮木昌幸氏が「所有から利用へ-クラウド上での提供モデルの検討」をテーマに講演した。宮木氏は、SaaS事業の課題が「ユーザーのつなぎ止め」「新技術との付き合い」「ビジネスにプラスとなるアライアンスの推進」であると指摘。

 特に、アライアンス推進では、「IBMのソリューションビジネスは協業モデルが基本。日本IBMとしてクラウド、ソリューション、データの三つのパートナーリーグを形成し、業界団体とも広く連携している。中でも、ビジネス・アライアンス・コンソーシアム(BAC)には多くのソフトウェア開発事業者が参加しているので、気軽に参加を検討してほしい」と語った。
 
日本IBM パートナー・アライアンス事業本部次世代パートナー開発部の宮木昌幸氏

 セミナー後半には、日本IBMのパートナー2社が登場。まず、日本サード・パーティの森嶋孝輔・執行役員マルチクラウド事業部長が「アプリケーションのSaaS化を全面サポート クラウド構築・運用支援サービス『Kyrios for ISV』」をテーマに講演した。

 森嶋執行役員は、SaaSビジネス急成長の一方で、ソフト提供ベンダーには基盤構築や管理、技術者不足などの課題が悩みになっていると指摘。その課題を解決するサービスとして同社の「Kyrios」を紹介した(※4参照)。Kyriosは、障害対応から運用改善の提案までのトータルサービス、パブリッククラウド向け24時間365日の運用代行サービス、インスタンス単位での課金を特徴としている。
 
(※4)日本サード・パーティのクラウド構築・運用支援サービス「Kyrios」

 そのISV向けサービス「Kyrios for ISV」には、初のクラウド移行や他社クラウドからの移行を支援するパックから本格的なサービス提供を目指すベンダー向けのパックをラインアップ。「Kyriosなら最短ひと月でパッケージをSaaS化できる。年末までお得なキャンペーンも実施しているので、ぜひ活用してほしい」とアピールした。
 
日本サード・パーティの森嶋孝輔・執行役員

 続く講演では「開発・構築、およびプロモーション支援に関するご紹介」をテーマに、ダイワボウ情報システム(DIS)の谷水茂樹・経営戦略本部情報戦略部部長が講演した。日本のクラウド普及には、クラウドネイティブアプリが不可欠だが開発の足かせも多い。これを解消するのが、OpenShiftに最適化したアプリ開発基盤「IBM Cloud Paks」だ。

 谷水部長は、「当社はそれをベースにDXアプリ開発環境を独自開発した(※5参照)。その基盤上で開発したアプリはベンダー仕様に依存せず、一度作ればどこでも動く。開発から変更、管理、運用の負荷が激減し、市場への早期投入が実現する」とメリットをアピールした。
 
(※5)ダイワボウ情報システムの提供するDXアプリケーション開発基盤
 
ダイワボウ情報システムの谷水茂樹・経営戦略本部情報戦略部部長

 次いで、サブスクリプション推進グループの小林裕幸係長が講演し、DISのパートナーソリューション支援策を紹介した。「DIS主催のイベントや展開するメディアでのプロモーション支援、サブスクリプション管理ポータル『iKAZUCHI(雷)』によるサブスクリプションの流通促進を通じ、ISVの方々のビジネス拡大に貢献していく」と語った。
 
ダイワボウ情報システムの小林裕幸・サブスクリプション推進グループ係長

 クロージングとして、日本IBMの小林・次世代チャネル開発部長が再登場。セミナー参加者にクラウド利用上の課題についてライブで実施したアンケートの結果をみながら、「クラウド技術者やスキル不足、運用設計や実施体制の不足という課題を持つ方が圧倒的に多い。当社は、それをサポートする基盤づくりをお手伝いしたい。そのために日本サードパーティ様のキャンペーンやIBMで用意している各種キャンペーンも活用してほしい」と語った。
 
セミナーは2020年年末までオンデマンドでも視聴できる。
視聴はこちら=https://bit.ly/2K3SEMJ