ITサービスで世界トップ5を目指す
――世界のITサービス企業のトップ5入りが、射程距離内に入ってきました。
山下 大きな目標ですが、着実に前へ進んでいます。直近では世界トップ8まで上ってきましたので、トップ5以内にはぜひ入りたい。先の欧米の経営幹部の考えのように、NTTグループの売上規模であったり、グローバルのITサービスでトップグループに入ることで受注できるプロジェクトの規模やレベルが断然違ってきます。当社グループも、すでに全グループ社員の半分近いおよそ2万6500人が海外で勤務するグローバル企業となり、世界34か国・143都市に拠点を展開するに至りました。世界の第一線で活躍するトップクラスのユーザー企業はそのあたりをちゃんとみていて、自らのITシステムを世界どこででも万全の体制でサポートしてくれるベンダーを選んでいます。この顧客の選択肢のなかに確実に入ることがグローバルビジネス成功の鍵です。
――アジア成長国への取り組みはどうですか。
山下 目下のアジア最大のITサービス市場へと成長しつつある中国では、2011年1月からNTTデータ中国を頂点とする組織体制が本格的に動き始めます。欧米と違い、中国・ASEAN地区は当初からNTT DATAの看板でビジネスを行うことが多かったため、見た目にはそれほど大きな変更はないのですが、中身は大きく変えます。中国は距離的にも近いし、オフショアソフト開発でも国内ビジネスと密接な関係にありますので、それだけに国内と中国の組織が入り組んでいたところがあったのですね。これを整理し、中国なら中国、ASEANならASEANのそれぞれのブロック単位で、国内・域内市場に向けた営業体制の強化を図ります。
海外のオフショア開発は、こうした地場市場でのビジネス拡大と並行して整備することになります。SEを中心に中国ではおよそ4000人、インドでは1万人規模へと人員を拡大してきました。日本からのオフショア開発は、やはり中国が欠かせませんし、逆に欧米市場からのオフショア開発はインドでなければ対応できないというケースも多い。ソフト開発だけでなく、例えば、米国役員の秘書がなぜかインド勤務のスタッフであったりと、北米の情報サービス業界とインドの一体感には驚きますよ。欧州はインドもありますが、東欧や南欧に少しずつオフショア拠点があったりして、日本でいうところの九州や北海道でのニアショアに近いパターンもみられます。
――当面の懸念は、国内事業をどう立て直すかということのようにみえます。
山下 わたしはそう考えてはいません。むしろ国内市場は2011年で底を打ったとみています。アジア成長国のようなダイナミックな伸びはないかもしれませんが、収益率を改善する手立てはまだたくさんある。ソフトウェア開発の自動化やスマートコミュニティ、クラウド時代に対応したBPO、AMOといったアウトソーシングサービスなど、ビジネスの幅を広げていくことでまだまだ成長の余地は大きいと思っています。国内外ともに成長することこそが、グローバルトップグループで存在感を増していくことにつながります。
・お気に入りのビジネスツール フェラガモのカフスボタン。昨年、山下徹社長にはこのコーナーでフェラガモのバッグを挙げてもらった。「ぴっちり口が閉じるカバン、ぱっちり止まるカフスが好き」ということで、このブランドに行き着く。カフスは山下社長の好みを知り尽くした奥様からのプレゼントだそうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
グローバルカンパニーへ変貌を遂げるNTTデータ。世界中のグループ会社幹部との会議や交流を通じて、山下徹社長は、「その国ごとに商慣習やビジネスに対する考え方が違う」ことを改めて感じている。
例えば、「北米の会社はレポートライン(報告経路)を重視する傾向が強い。日本だと部門内の上長を意識しがちだが、彼らはたとえ米国に勤務していても、レポートラインが欧州や日本にあったりすることにまったく違和感をもたないようだ」という。
ほかにも、「欧州の会社はEU域内を重視する傾向がある。中国はやはり距離的、文化的に日本と近い」というように、ひと言で「グローバル」とは括れない。言語の違いも当然あって、2012年の新年ビデオメッセージでは英、中、伊、独の4か国語の字幕をつけた。来年にはポルトガル語も加える予定。それぞれの地域の特性や優位性を生かしながら「One NTT DATA」づくりを推進する。(寶)
プロフィール
山下 徹
山下 徹(やました とおる)
1947年、神奈川県生まれ。71年、東京工業大学工学部卒業。同年、日本電信電話公社(現NTT)入社。99年、NTTデータ取締役産業システム事業本部産業営業本部長。03年6月、常務取締役ビジネス開発事業本部長。04年5月、常務取締役経営企画部長。05年6月、代表取締役副社長執行役員。07年6月、代表取締役社長に就任。