早期に売上高50億円突破を目指す
――製品の打ち出し方はわかりました。では、目指す経営指標として何を掲げていかれますか。
高橋 売上高は一つの指標です。今が30億円程度ですから、これをなるべく早い段階で50億円程度に引き上げます。社員数をあまり増やさずに達成するということもポイントに置いています。
――手を打たなければならないことは何ですか。
高橋 先ほどお話しした経営資源最適化ツールというコンセプトを広く認知させるためのマーケティング活動、それをしっかりと提案・説得できる社員とパートナーの育成です。若さが武器と言いましたが、これはデメリットでもあります。経営資源最適化というからには、ユーザー企業のマネージャーや経営幹部層と対等に話し、説得できるスキルが必要です。ただ、MOTEXは50代は私しかいなくて、40代も一人だけ。組織としてまだまだ経験と知識が乏しいのは否めません。こうした分野をもっと強化しなければいけないと考えています。
――足りない力を補うために、資本提携や企業買収は念頭に置いておられますか。
高橋 今はそうした考えはありません。MOTEXは独立系で20年やってきて、新卒で入った社員が多い。その遺伝子を大切にして、社内教育で強くする方法をとります。
――高橋さんのコンセプトを早く浸透させるために、新製品の投入は考えておられますか。
高橋 「LanScope Cat」は機能が豊富ですし、私が打ち出したコンセプトを具現化する機能も多数備えています。ユーザーの業種も規模も問いません。規模でいえば、パソコンを3台しか保有していない企業にも利用してもらっていますし、4万台もある企業に納入したこともあります。ですから、「LanScope Cat」が主力であることは変わらないでしょう。それと、ネットワーク技術が当社のコアですから、ここから逸脱するような新製品は考えていません。ただ、人の行動を分析するというテーマで、どのような可能性があるかは探っていきたいですね。
――マーケットを広げる意味で、海外展開は?
高橋 考えていますよ。「Windows Azure」ベースでつくったクラウド「LanScope クラウドキャット」は、海外でも販売できると感じています。マイクロソフトのアプリ販売基盤「Windows Azure Marketplace」を活用すれば、日本にいながら、ネットワークを通じて世界で販売できる機会を得られることになりますから、注目しています。ただ、国内のISVが海外に挑戦しても成功を収めているケースは稀ですから、リスクは極力減らし、慎重に、粛々と進めていくつもりです。
・お気に入りのビジネスツール靴や革製品で有名なフランスのブランド「Berluti(ベルルッティ)」のノートカバー。2010年夏に、「自分へのご褒美に」とニューヨークで購入した。「Berluti」はお気に入りのブランドで、「デザインが好き」。財布やキーケースも「Berluti」製品を愛用している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
IT業界に高橋社長のファンはとにかく多い。先輩からはかわいがられ、後輩からは慕われる。2011年4月に開いたMOTEXの設立20周年を記念したパーティーで、社長就任を正式に発表したが、会場には高橋社長と関係が深いIT業界人が、年齢を問わず多く詰めかけた。駆けつけて祝辞を述べた日本マイクロソフトの樋口泰行社長も「高橋さんは、みんなに愛されるキャラクター。もう少し一緒に仕事がしたかった」と話し、エールを送りつつも名残を惜しむコメントを口にした。
日本IBMと日本マイクロソフトで積んだ経験と知識は強みだが、その人柄に魅了されて集まった高橋人脈も、氏の武器になるだろう。カリスマ経営者である創業社長の高木哲男氏(現・代表取締役会長)からバトンを受けた責任は重い。だが、高橋さんが抱える人脈でこれまでのMOTEXにはなかったビジネスが生まれる可能性もあるはずだ。高橋カラーがにじみ出てくるのはそう遠くないと思われる。(鈎)
プロフィール
高橋 慎介(たかはし しんすけ)
1960年10月27日、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、83年、日本IBMに入社。98年、PC事業部コンシューマー事業部長。02年、理事ibm.comセンター事業部長。04年、理事ゼネラル・ビジネス事業部長。05年、米IBMに移り米本社の副社長補佐を約半年間務めた後、日本IBMに戻り副社長執行役員補佐に就任。06年、執行役員パートナー事業担当。09年、マイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に移籍し、執行役パートナービジネス営業統括本部長に就く。11年4月25日、エムオーテックス(MOTEX)の代表取締役社長に就任。
会社紹介
1990年設立のソフトメーカーで、資本金は2000万円、従業員数は約170人。主力製品であるネットワークセキュリティツールの「LanScope Cat」は、約5800社のユーザー企業・団体に納入し、480万クライアントが利用する。富士キメラ総研の調べでは、「端末管理・セキュリティツール市場のIT資産/PC構成管理ソフトウェア部門」で31.6%のシェアを獲得し、トップベンダーの地位にある。2010年には、IT資産管理機能などを装備したクラウド「LanScopeクラウドキャット」を開始した。