新日鉄ソリューションズの謝敷宗敬社長は、情報サービス市場に不可逆的な変化が起きているとみる。ユーザーは売り上げや利益を伸ばすための戦略的IT投資を拡大させるとともに、SIerにはこの目標を達成するための、高度で、場合によってはリスクの高いシステム開発を求めているというのだ。ややもすればユーザーの要望を唯々諾々と請け負ってきた側面がある情報サービス業界だが、もはや通用せず、再び過去のようなビジネス形態には戻らない──。新日鉄ソリューションズは、むしろこれをチャンスと捉え、他社では代替し得ない高度な技術力をテコにして、付加価値の高い独自のビジネスモデルの発展に力を注ぐことで事業拡大を目指す。
まずは、トップラインを伸ばす
──謝敷社長は、情報サービスに不可逆的な変化が起きているという見方をしておられるそうですが……。
謝敷 リーマン・ショック以降、目に見えるかたちで変化してきたと思います。日本企業はITシステムの保守運用費の比率が高いといわれていますが、この分野も一定の割合で削減が進むと同時に、システム開発や保守運用を極力内製化していこうという動きも一部にみられます。少し余裕があるユーザーは、旧来のサイロ型のシステムインフラを仮想化、統合化する作業に着手している。サーバーの台数は半減か、うまくいけば3分の1程度に減らせますので、その分、売り上げや利益に直結する戦略的なIT投資を増やす傾向が強まっています。
ここで重要なのは、われわれSIerに打診がくるシステムは、安易に削減することができず、ユーザー社内の技術陣では対応できないほどの技術的に極めて高度なものであったり、戦略的な投資であるため、ある意味リスクの高いシステムに限られてくるわけです。この動きはもはや不可逆であり、情報サービス業で勝ち残るには、ここ数年で大きく変わったユーザーの要望にしっかりと応えていく必要があります。
──トップに就任された今年度(2013年3月期)、トップライン(売り上げ)重視を打ち出されましたが、その狙いは何ですか。
謝敷 先ほど述べた通り、ユーザーから発注いただく内容は、飛躍的に高度化しているのです。当社も腕に覚えがあるので全力で応えていくわけですが、残念ながらチャレンジの要素が増えると、新しい技術を習得するためのコストもかさんで、最初のうちはどうしても利益率が上がりにくい。それならトップラインを上げようということで、今期連結売上高は過去最高の1700億円を目指すことにしました。まずはしっかりとこれからの時代に沿ったニーズを受け止めたうえで、段階的に利益率の向上に取り組んでいこうと考えています。
──今年5月、最新鋭の第3世代データセンター(DC)の「第5DC」を東京都内に開設されましたが、受注の状況はどうですか。
謝敷 第5DCについては、開業からまだ間もないにもかかわらず、すでに3分の1程度の受注のめどがついています。活況の背景には、原発事故で依然として電力事情が不安定であり、事業継続計画(BCP)や省エネの観点からも高効率の新型DCを活用したいという根強いニーズが挙げられます。これは、DCを運営する事業者にとって追い風であることに違いありません。
ただ、IT機器をただ預かるだけの場所貸し的なビジネスは、付加価値が得にくいので、当社は昔からあまり力を入れてきませんでした。今回の第5DCも同じで、ただラックが埋まればいいというものではない。SIerですので、インフラからアプリケーション、アウトソーシングサービスに至るまでトータルで請け負う。ビジネスの幅が広がれば、それだけ知恵の出しどころも増えるわけで、当社の価値を発揮しやすい環境が整いやすいとみているからです。
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