中国13億人の巨大市場を開拓しようと、世界各国のITベンダーが躍起になっている。中国に進出している日系ITベンダー各社は、そこそこの実績を上げているものの、いまだ大きな成功を収めたとはいい難いのが実際のところだ。中国進出の道は、想像以上に険しい。日本最大手のSIerで、中国に20社余りのグループ企業を抱えるNTTデータは、いかにして中国IT市場を攻略しようとしているのか。NTT DATA(中国)=NDCで中国国内向けビジネスを統括している松崎義雄総裁に戦略を聞いた。
パートナー連携が現地ビジネスのカギ
──NTTデータの中国事業は、オフショア開発の印象があります。松崎さんは、もう一方の中国国内向けITビジネスをどのように推進しておられるのですか。 松崎 NTT DATA(中国)、すなわちNDCとその他のグループ企業を含めて、中国国内では、大きく分けて金融系と一般法人系のビジネスを展開しています。本社会計の今年度(2015年3月期)の計画では、売上高に占める一般法人系の割合が約8割、金融系が約2割の見通しです。一方、中国では、公共系のビジネスには基本的には手を出していません。
まず、金融系については、13年に専門部隊を立ち上げていて、中国の地場銀行に向けたビジネスを展開しようとしています。私ども(NTTデータグループ)は日系ですので、地場銀行に直接入り込むのは難しい。そこで、基本的にはパートナーと組んで開拓していく構想です。
ただし、私どもの側に提供できるソリューションがまだ少ないので、立ち上がりに時間がかかっています。金融の世界は、国によって規制がまったく違うので、同じ銀行でも日本のソリューションをもってきただけでは通用しません。現在、中国のお客様に合ったかたちのソリューションやサービスを開発しているところです。
──NDCの金融系ビジネスのメインパートナーは、決済サービスを手がけている上海通聯金融服務(通聯金融)ですよね。 松崎 はい。彼らの顧客基盤と営業力を活用して、その後ろ側で私たちがソリューションを提供するモデルです。例えば、通聯金融の子会社で、NTTデータが資本の42%を出資している上海通聯金融科技発展が、5月に上海でデータセンター(DC)の建設を始めました。そのDC上に、私どもの銀行業界向けアプリケーションを載せて、サービスとして提供する予定です。
コンセプトは、NTTデータが日本で地方銀行向けに提供している共同利用型のコアバンキングサービスに近いですね。中国の銀行業界では、費用対効果やシステムの早期立ち上げが求められますから、共同利用型のプラットフォームを活用するニーズは高いと考えています。
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