日本情報技術取引所(JIET)は今年6月、それまで4年間にわたって副理事長を務めていたオーパシステムエンジニアリング社長の南出健治氏が三代目の理事長に就いた。JIETの会員には大手SIerの下請けや孫請けを担う企業も多く、目下は大型案件のボリュームが経営を支え得る規模で推移している状況だが、デジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドはそうした会員に急激な変化を促す可能性もある。会員の変革を支援する役割を強化するのが、南出体制のJIETの役割だという。
地方が東京と同じである必要はない
――前任の酒井(雅美・現副理事長、バリューソフトウエア社長)さんが二代目の理事長として4年務められた後にバトンを受けました。準備はできていたという感じだったのでしょうか。
3年半前から「次はお願いします」と酒井さんには言われていて、なかなか時間が取れなくてお断りしていましたが、引き受けることにしました。JIETに20数年前に入会して、その後、間もなく神奈川支部長を引き受けることになり、2015年からは副理事長も務めました。その意味で、JIETの運営には長年関わってきましたし、海外支部の開設など近年のJIETの変革も酒井さんの指揮の下に一緒に進めてきたところはありますから、あまり違和感なく引き継ぐことができたとは言えると思います。
――酒井さんも理事長就任後のBCNのインタビューではとにかく忙しいとコメントされていましたが、いかがですか。
忙しいですね(笑)。全国に支部があることはJIETの大きな強みですが、地域組織をまわってコミュニケーションするのにはやはりそれなりの時間がかかりますし、自分の会社でもふんぞり返って社長業をやっていればいいわけではなくて、私自身が国内外の案件で営業やコンサルをやったりという場面はまだまだあるので、とにかく時間をどう捻出するかというところです。
――副理事長としてこれまでもJIETの運営の舵取りには参画されてきたわけですが、その立場から、理事長就任後にJIET会員を取り巻く環境をどうみますか。
日本って単一化しすぎていると思うんですよ。例えば新幹線の駅周辺の景色ってどこに行っても同じだったりしますよね。それって私はすごく違和感があるんです。ITのビジネスでも同じで、ソフトウェアの開発でも、SESでも、市場が東京に集中しがちなのはどうしようもないにしても、同じようなことを地方でやる必要が本当にあるんだろうかという疑問があるんです。
加速する脱SES、脱下請けの意識
――地場の小規模案件であっても、下請けではなく元請けでやっていくことに意味があるということでしょうか。
脱SESとか、プライムの案件を手掛けたいというのは会員企業でもトレンドになっていて、それは積極的にやったほうがいいと思っています。自分が行っている床屋だったり、スーパーだったり、そこの業務の現場で困っていることがあるなら、小さいシステムからでいいから始めればいいし、そこにはそれぞれの地域なりの仕事のやり方があって、潜在的な市場としても決して小さくないと思っているんです。
だけど、やっぱり東京に大きな案件が集中しているから、目先の売り上げのためにはやはり人を出さないと、という雰囲気も一方ではある。それでも、地方で仕事をしたい、地元から出たくないという人も増えていて、地場の会社が地元の人材を採用して地域の案件を小さくてもプライムで手掛けていくという世界を広げていくことはできるはずです。
JIETのこれまでの活動で、NPO法人としてのガバナンスはしっかりしたものができてきたので、これからは支部ごとに地域の市場の状況に応じた独自の活動が重要になると思っています。東京を軸に案件と人材をマッチングするだけでは、地方の会員は魅力を感じない。会員の要望に応えられなくなってきていると感じます。
――脱SES、脱下請けのような取り組みは簡単に成功するでしょうか?
SESから受託に変わって、そこで培ったノウハウをもとに自社製品を開発してサブスクリプションで提供する、というような動きも会員の中から出てきていますが、業態によって資金繰りのあり方なども変わってくるので、一筋縄ではいかないところもありますね。そこは勉強会などでJIETが会員のビジネスモデル変革を支援する取り組みもやっていきたいと考えています。
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