中堅・中小企業向けデータ保護ソリューション「Arcserve」が、CAテクノロジーズから独立して5年が経過した。バックアップソフトというとコモディティ製品というイメージが強いが、日本市場でのビジネスはこの5年で約2倍に成長したという。今後はクラウドサービスの拡販に注力するが、オンプレミスからクラウドへのシフトを強いるのではなく、ライセンス販売とサービスを組み合わせることによる新たな価値提案を指向するという。
Arcserveのイメージを変えた
アプライアンス製品
――5年で売り上げを倍増させたということですが、成熟市場とされる日本ではなかなか聞けない大きな伸び幅です。成功の要因は何ですか。
調査会社のデータによると、バックアップ/リカバリーソフト業界の成長率は市場平均で5%弱ということです。それに対して、当社の日本市場での売り上げは、直近1年だけでも前の年に対して33%増となりましたので、売り上げだけでなく市場シェアも大きく伸ばせていると考えています。CAテクノロジーズからの独立当初はソフトウェア製品だけでしたが、2016年に日本でもアプライアンス製品を発売したことが、最大の成長要因です。
――日本市場でのArcserve製品は、過去には国内メーカー製のサーバーにバンドルされるOEM形態での提供が主力でしたが、アプライアンスがなぜ売れるようになったのでしょうか。
もちろん現在も、OEM形態のビジネスは少なくないボリュームを占めていますが、仮想化技術が普及してサーバーの統合が進んで以来、IT製品をマルチベンダーで導入しているお客様の間で、バックアップ環境も統合したいというニーズが高まったのです。IT部門の運用担当者が、毎朝出勤して最初に行うのが、昨晩のバックアップが正しく完了したかの確認ですが、システムごとに異なるバックアップ製品が入っていると、そのチェックだけで昼までかかってしまうという話を聞いたこともあります。
当社のアプライアンスを導入すれば、一つのコンソールを通じて、全てのバックアップを運用できます。しかも、ストレージ容量の範囲内であれば、バックアップ対象が何台でもライセンスは使い放題ですので、仮想環境上にゲストOSが増えても追加の費用はかかりません。ハイパーバイザーを選ばないので、HCIとの相性も非常にいいです。今のITのトレンドにうまく乗ることができたと思います。
――バックアップ用のサーバーを統合しつつ、運用の手間も下げられるという点が評価されていると。
製品自体の導入費用と運用コストの両方を削減できる点が、お客様とパートナー各社に対する強力なセールスポイントになっています。ただ、製品の出来映えはもちろん良かったのですが、当社にとっては、アプライアンスの発売でより大規模なお客様を獲得できたことが大きかったです。従来は中堅・中小企業向けのビジネスを主力としていましたので、「Arcserveは最大数TB程度の中小規模に特化した製品だ」という誤解がありました。しかし、日本市場向けの第一号のアプライアンスとして容量12TBの製品を発売したことで、10TB以上の要件にも適用できるという認識が市場に伝わりました。今は24TB、48TBの機種も用意しています。これによってエンタープライズのお客様への導入が急激に進みました。アプライアンスは、当社のイメージを変えるのに大きく貢献した製品と言えます。
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