デジタルマーケティングで
パートナーの営業改革を支援
――パートナー支援についてお聞きします。立ち上げ当初は、FJMの直販とパートナーがバッティングするのではないかといった指摘もありましたが、今はどのようにすみ分けていますか。
社長就任後、全国のパートナーにご挨拶しましたが、この9年みんなががんばってくれたおかげで、競合に関する心配ごとはまったくありません。最初は信じてもらえなかったかもしれませんが、パートナーとぶつかったら私たちは支援に回るというルールでやっていますので、FJMの支援機能は確たるものとして認知されています。
――具体的な支援策で今注力しているものは。
FJMではここ数年デジタルマーケティング機能を強化しており、そのレベルは富士通本体をしのぐほどです。そこで、従来は社内で活用していたリード発掘のための基盤を、今ではパートナー各社に使っていただいています。パートナーのお客様に情報をプッシュ配信できる仕組みがあり、その反応を分析して、「このお客様はこういう提案を求めている」という仮説を作り、リードとしてパートナーにお渡ししています。すでにこの形で、全国27社のパートナーの営業変革支援をしています。
また、パートナー同士のマッチングをきちんとやっていこうとしています。地方のパートナーの場合、マーケットは自分の地域にしかないという固定概念をもたれていることがあります。しかし、クラウドになれば人を張り付けなくてもよくなり、北海道のパートナーが開発した製品を九州に届けることもできる。ビジネスマッチングは今後パートナー支援の中でとても重要な部分になっていくと考えています。すでに、富士通パートナーの間で、提供元と連携先がマッチした案件が17プロジェクト生まれました。
――パートナーからの信頼感が盤石であるとすれば、次は、DXにつながる“弾”を早く寄こしてほしいと言われる段階ですね。
デジタルマーケティングに力を入れるのも、内部で実践した営業改革を、お客様にも提案していこうという考えがあるからです。従来のFJMはミニ富士通化していた部分もあるかもしれませんが、このように富士通本体の先を行っている領域もあります。私としては、富士通グループの中で、中堅企業のDXを担うのがFJMだと考えています。いきなり大きなことができるかはわかりませんが、小さな粒でもいいから、お客様の事業変革につながるような、おもしろいことをやっている会社だなと言われるようにしていきたいです。
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Goods
「これを無くしたら死んだも同然」というほど大事なシステム手帳。中を開くと、虫眼鏡でないと読めないほどの密度で無数の情報が書き留められている。部下が抱える仕事も常に気にかけているため、自分以外のスケジュールも把握しておきたい。すると、その大きさの字でないと書き切れないのだという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
基本は継続して気にかけること
毎年春と秋、広瀬社長が富士通時代から決まって取り組んでいる仕事が、顧客に提示する「活動宣言」の作成だ。顧客の経営課題や事業戦略を聞いたうえで、富士通グループとしてどんな支援が可能か、今後どんな提案活動に力を入れていくかを策定。前半期の愛顧に対する感謝と、向こう半期の営業方針を紙一枚にまとめた、顧客の経営層向けのレターだ。
得意客はもちろん、他社が深く食い込んでいる、富士通にとっての新規客に対しても、この活動宣言を届けてきた。1~2年もすると、他社の顧客からも、必ず何らかの案件のチャンスが舞い込んでくるのだという。「続けていく中で、『こいつに一回提案させてみたいな』と思ってくれるんでしょう」(広瀬社長)
一見、オールドスタイルな営業にも見えるが、富士通グループが製品からサービスへと舵を切り、さらにデジタルトランスフォーメーションの時代を迎える中、定期的なサイクルで課題を確認しながら改善を提案していくプロセスは、まさに今顧客がITベンダーに期待するサービスそのもの。顧客との関係づくりも、組織のマネジメントも、相手を「気にかける」ことが全ての基本。手帳には自分のスケジュールよりも、部下や顧客のことがびっしりと書き込まれている。
プロフィール
広瀬敏男
(ひろせ としお)
1961年生まれ。83年、富士通入社。2002年、東日本営業本部神奈川支社産業営業部長に就任、営業部門の要職を歴任する。14年に執行役員産業・流通営業グループ産業ビジネス本部長、16年にAsiaリージョン長、18年に執行役員常務 営業部門副部門長に就任するとともに、富士通マーケティング取締役に就く。今年6月に富士通役員を退任し、富士通マーケティング社長に就任した。
会社紹介
1947年、通信機器の製造販売や電話工事を行う石井通信工業として設立。67年から富士通「FACOM」の販売を開始。68年に富士通の完全子会社となり、その後富士通興業、富士通ビジネスシステムへと社名変更。10年の現社名への変更とともに、富士通グループの中堅民需事業およびパートナー支援の中核会社となった。2018年度の連結売上高は2304億円、従業員数は3289人(19年3月末現在)。