開発環境や知識共有の基盤を刷新
――Tetralinkは、現行の開発基盤のSDCとは何が違うのですか。
SDCは基本的にはNSSOL1.0モデルの生産性を高めるため、国内外の開発拠点がクラウド上の開発基盤に接続して、同じ作業環境でソフト開発を行うことで生産性を高めるためのものです。仕様を固めてから開発に入るウォーターフォール型の開発に適しているのですが、NSSOL2.0モデルの比重が大きくなってくると、ユーザー企業と一緒に試行錯誤を繰り返すアジャイルやスクラム方式に対応した開発基盤ニーズが強くなってきます。
そこで、Tetralinkではアジャイルなどの開発手法に対応するとともに、コンテナ型仮想化やオーケストレーション分野の先進的で最新バージョンのOSS(オープンソースソフト)を柔軟に開発環境に取り入れることを念頭に置いています。NSSOL2.0モデル以降の新しいビジネスモデルに対応した次世代型の開発環境です。技術者にとってみれば、最新のツールをどんどん使ってみたいだろうし、そうしたほうがモチベーションが保ちやすく外部の技術環境の変化にも対応しやすいメリットがあります。
――上流工程にどれほど深く入り込んでも、顧客と一緒に新規ビジネスを立ち上げようとも、システムをつくる部分はSIerが担うわけで、この点を疎かにはできないというわけですね。
そうです。DX推進から少し外れますがバックヤードの仕組みづくりは、ほかにもいろいろ取り組んでいます。例えば、「Lumisis(ルミシス)」はプロジェクトのリーダーが重視する点、こだわる点をAIが事前に学習し、プロジェクトメンバーのタスク管理をリーダーに代わって行うというものです。メンバーが作成したタスク管理をAIが前もってダメ出ししておいてくれれば、リーダーがチェックする負担が減ります。また、プロジェクトが共有するナレッジを検索する「Cogmino(コグミノ)」も、当社のシステム研究開発センターが開発しています。
――顧客と共創して新規ビジネスを立ち上げるのがフロントだとしたら、バックヤードとしての生産技術も高めていく必要があると。
当社の強みは、止まることが許されない製鉄所のシステムを構築してきた信頼性の高さだと評されることが多い。個人的にはそれに加えて、プロジェクトの中で蓄積した暗黙知を明文化し、若手に伝えていく仕組みも大きな強みだと自負しています。これからも生産技術を含めたITの先端領域のトップランナーとして、顧客のITパートナー、将来的にはDXパートナーとしてビジネスを伸ばしていきます。
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ノイズキャンセリング機能つきのボーズのヘッドホンを愛用している。出張時の飛行機では、エンジンの音がほとんど聞こえなくなり、ぐっすり休めるようになった。おかげで「機内食を食べ逃す」ことも増えたとか。
眼光紙背 ~取材を終えて~
多様性を内包し、推進力に変える
ITにおける革新性の源は、多様性を受け入れる「ダイバーシティ」や、多様性を内包して進化させる「インクルージョン」だと話す。1990年代後半、米国法人の立ち上げでシリコンバレーに駐在したとき、目の当たりにしたのが「多様性をインクルージョンしていく力のすごさ」だという。
80年代から90年代にかけて米国は産業構造の転換で苦しんだ時期でもあった。自動車や家電が日本などの外国企業に押された。しかし、その後はITによって産業構造の転換を果たし、今や米国のIT産業は世界のデジタルトランスフォーメーションの推進役となっている。
振り返って今の日本は、当時の米国と同様、産業構造の転換でつまずくケースが目立つ。足りないものは、「多様性を受け入れ、それを昇華させるインクルージョンの力」だと見る。
就労人口の減少が続くなか、デジタルでビジネスや社会を変えていくには、画一的な組織では伸びしろに限りがある。「ダイバーシティやインクルージョンをどれだけ当社の中に取り込めるかが大きな課題でもあり、成長へのカギでもある」と話す。
プロフィール
森田宏之
(もりた ひろゆき)
1958年、東京都生まれ。82年、一橋大学商学部卒業。同年、新日本製鐵(現日本製鉄)入社。89年、新日鉄情報通信システム(現日鉄ソリューションズ)出向。2004年、金融ソリューション事業部企画・マーケティング部部長。12年、取締役。16年、取締役常務執行役員。19年4月1日、代表取締役社長就任。
会社紹介
今年度(2020年3月期)の連結売上高は前年度比10.6%増の2935億円、営業利益は同14.9%増の295億円、営業利益率は10.1%の見込み。持続的な成長を維持しており、20年3月期までの5年余りの期間で累計1000億円近く売り上げを上乗せできる見通し。今年4月、親会社の社名変更に伴い新日鉄住金ソリューションズから日鉄ソリューションズに社名変更した。