福岡市に本社を置くソフトウェア会社、ユニゾンシステムズ(今村勉也・代表取締役)は、10月15日、東京・品川の東京コンファレンスセンター品川で、超高速ファイル転送システムに関するプライベートセミナーを開いた。当日は、ユーザー企業のシステム部門担当者ら約100人が参加。「止められないファイル大容量化への対応~超高速ファイル転送が切り拓く新市場~」をテーマにしたセッションや同社のシステムを導入したユーザーが事例を発表した。

 冒頭、同社の今村代表取締役は、「当社はソフトウェアの技術者集団。主にテレビ局のシステムを開発してきた。そのなかで動画ファイルを高速転送したいとの要望を受け、STORM(ストーム)というクラウドサービスを開発し提供している。最近では、製造業やヘルスケアなど、続々と新しい業態から問い合わせがきている」と、STORMの市場性が高まっていると挨拶した。

冒頭に挨拶したユニゾンシステムズの今村勉也・代表取締役

 第1部の最初のセッションでは、同社事業開発室の竹之内憲室長が「高速ファイル転送が切り拓く新市場」をテーマに講演した。企業内にあるファイルの容量の現状について竹之内室長は、「いまは、大容量化時代にある。かつてはERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客情報管理)などの構造化データが占めていた。いまは、サイズが大きくなっただけでなく、ファイルの種類が多様になり、更新頻度が多く、日々増え続ける非構造化データに苦慮している。当社はHDビデオ、オーディオ、映像の領域を担ってきた」と、この分野で一日の長があると説明した。

第1部の最初のセッションでファイル転送の市場性を語った竹之内憲・事業開発室長

 大容量データを扱う業界としては、金融・保険や通信・放送など多岐にわたる。その巨大化するデータをどう運ぶか。竹之内室長は、「大容量データをどう運ぶかは必然的なトレンドになっている。さまざまな情報システムがクラウド化するなかで、大容量データを情報共有、即時活用、情報保全という点からみて、盲点となっているのがデータ物流だ」と、データ物流という造語を使い、企業内データの利活用の問題点を説明した。

 これらに対応するために同社は、世界最高速という超高速ファイル転送システムSTORMの提供を本格化している。「競合他社のほとんどのシステムは、FTPベースで、メガバイトまでしか対応できない」と竹之内室長は話し、実際に東京のAWS(Amazon Web Services)に仮想デスクトップで入り、ブラジルのAWSにデータを転送するデモを、STORMとFTPを使った場合の違いをみせ、STORMの優位性を誇示した。デモではSTORMが、300MBの転送に11秒程度で終了した。通常は8秒程度で完了するという。一方のFTPは、1分を過ぎてもデータは転送中だった。

 同社によれば、2014年のSTORMの顧客は、ほとんどが放送関連。15年は放送関連が20%で、建設・住宅・不動産、IT、製造など、他業種に広がりをみせている。竹之内室長は「具体的な案件としては、STORMをスマートフォン(スマホ)に組み込みたいという例や、スマホ自体のデータの高速アプロード、デジカメから直接データの転送などの話が出てきている。最近では、医療関係からの案件が増えている。MRIや手術データなど大容量データを高速転送したいためだ」と、進行中の具体的な案件を示した。

 続けて、同社R&D部の木村文彦部長が「高速ファイル転送を実現する新技術」と題し、同社が展開する超高速ファイル転送システムSTORMについて、技術面から解説した。木村部長はまず、「通信回線は、アジア圏で200msの遅延がある。東京では10ms。STORMは、遅延が大きい環境でも安定した伝送が可能だ」と述べた後、なぜSTORMは速いのかを解説した。

技術面については、木村文彦・R&D部長が説明した

 木村部長は、「これまで、ファイル転送の高速化は、さまざま試されてきた。データ転送にUDPを、制御にTCPを用いる方式などがある。だが、いずれも回線遅延やパケットロスに弱い。UDPの1ポートだけを使い、回線帯域を効率よく使い切るためだ」(木村部長)とした。最近の顧客では、拠点間でセキュアに大容量データを短時間で送るニーズが増えているという。

 同社では今後、STORMの認証技術や暗号化保存、後処理設計、バッチプログラム、Web APIなど、顧客のワークフローに応じて提供する」(木村部長)として、企業の実情に応じてカスタマイズ提案していく方針を示す。最後にクラウド利用の利点について、クラウドで一つに集めることで、情報を簡単に共有できる。5年間のハードウェア保守で悩んでいる顧客には有用だ」(木村部長)と、AWSのDalet(MAM)との連携例の示した。

 第2部のセッションでは、STORMの導入事例の発表があった。最初は、ニコンの顕微鏡関連の製品を扱うマイクロスコープ・ソリューション事業部の土屋良二氏が事例を発表した。ニコンでは、顕微鏡の開発で米国の大学と共同研究を行うため、毎日のように200GBのデータを4時間以内で転送する必要があり、こうした場面などにSTORMを使っている。STORMの導入以前は、アマゾンのクラウドサービスを使っていたが、「転送時間に32時間を要していた。導入後は約48分ですむようになった」(同)ことで、共同研究がスムーズに進むようになったという。

ニコンの土屋良二氏は、顕微鏡の研究で米国の大学とのやり取りでSTORMを活用する

 続いて、「踊る大捜査線」など、テレビドラマや映画の映像・音声などを制作するバスク(VASC)のシステムインテグレーション部の瀬谷浩氏が事例を発表した。同社は、2014年8月に4K編集スタジオを開設している。ロケ現場やスタジオで撮影したデータは、テープで編集スタジオまで運び作業を行っていたという今までの状況をまず話した。

VASCの瀬谷浩氏は、制作物を関係会社間で運ぶ際、物理テープからSTORMに切り替えた

 現在は、デジタルデータの「ノンリニア編集」になりつつあるが、現場からスタジオや協力会社の間は、依然として物理的なテープで運ぶケースが多かった。編集はオンライン編集だが、データを納品する際など、物理メディアで可搬する作業が残っている。セキュリティ上の問題があるため、「人が必ず運ぶ」必要があり、輸送手段としてタクシーを使う場合が多く費用もかさんだ。そのため、ネットを利用した安全な伝送手段を検討していた。導入条件として、伝送速度が十分でオンプレミスが選択できることなどを掲げていたが、これらをクリアしたSTORMを採用した。これにより協力会社とのデータのやり取りが円滑になったという。

パネルディスカッションに登壇した左からDELETの山口賢人氏、コトコトの門松伸吾氏、
ハート・オーガナイゼーションの菅原俊子氏

 第2部の最後には、パネルディスカッションが行われた。パネラーは、映像業界向けアプリ開発会社、仏ダレット(DALET)の山口賢人・リージョナル・セールスマネージャー、子どもの映像を自動編集してDVDに仕上げられる成長シネマDVD「filme(フィルミー)」という無料スマホアプリを開発するコトコトの門松伸吾・代表取締役、クラウド上の会議室で世界中の医師同士が症例を議論するサービスなどを提供するハート・オーガナイゼーションの菅原俊子・代表取締役で、ユニゾンシステムズの竹之内室長がモデレータを務めた。

 パネルディスカッションの議論では、ファイル転送の課題に触れた。菅原代表取締役は「医療画像は特別のフォーマットで、1症例で1GMある。それを医師のPC端末からクラウドサーバーでアップロードしていたが、そこに時間を要した」と指摘。門松代表取締役も「スマホから映像をアプリに大容量データのまま転送する部分で課題があった」と問題点を語った。山口マネージャーは「システム間のボトルネックがあり、データ転送に課題が多い」と述べた。これらに対し、各社は解決する手段としてSTORMを導入した。

谷畑良胤