愛知県に本社を構える富士金属(高橋鉄重代表取締役)は、アルミダイカスト製品やダイカスト金型の設計・製作・鋳造の事業を展開してきた。自動車を中心に、家電や重機器などの分野向けに部品を供給している。金型を内製していることが強みだ。
水口和美・ITコーディネータ(ITC)の協力のもと、IT導入を推し進め、製造リードタイムを大幅に短縮したほか、受注予測から納品までのプロセスを標準化。過剰な在庫の削減も可能となった。
実は20年ほど前は、家電向けの部品の供給が全体の40%程度を占めていた。その5年ほど後に状況が変わり始めていた。メーカーの海外進出に伴う現地調達が加速化していたためで、「大きな変革期を迎えることになった。家電業界からの注文は限りなくゼロに近くなって、自動車にシフトした。金型を内製できるところが自動車メーカーの信頼を得ている」(高橋達三・取締役専務)。
見込み生産の家電部品と違い、自動車部品は受注生産であるという大きな違いがある。JIT方式で次月、次々月の内示情報と当月の確定注文情報として発行される「カンバン」に沿って納品する仕組みとなっている。高橋専務は「これまでの人海戦術からデジタル化への移行を求められていた」と話す。
当時は、現場の従業員が紙に記載された生産報告をPCに手入力し、必要に応じてデータ集計する必要があった。生産や出荷に関する実績を集計することにほとんどの労力を費やしていたのだ。次の生産を効率化するための計画を作成するところにまで手が回らなかったという。
そんな折、中小企業金融公庫(現・日本政策金融公庫)の経営戦略セミナーに参加。水口ITCに協力を仰ぐこととなった。
水口ITCは、当時同社が抱えていた課題を四つ挙げる。納期遅延を改善してジャストインタイムに合わせたカンバン方式に対応すること、過剰な在庫の削減と最適化、トレーサビリティの確保、生産情報の整理がそれである。
洗い出した課題をもとに、IT機器の販売などを手がけるデュプロ販売がSIを担当。富士金属の伊藤孝・執行役員製造部長を中心に、現場のグループリーダーを交えて、プロジェクトを進めた。(つづく)(信澤健太)

「品質と改善は我々の命」を標語としている