渋谷和幸さんは、グループウェアを中心とするソフトウェア開発を手がけるネオジャパンで、中堅・中小企業(SMB)向けのクラウド商材を担当する若手営業マネージャーだ。今年4月に課長に昇格し、部下に指示を出す立場になって間もなく、メンバーの一人がミスを連発した。そのとき、渋谷さんは、落ち込んだ部下に自信を取り戻させて、お客様との関係を回復するという、上司として初めてのマネジメント対応を迫られた。そして、部下と一緒に状況を整理し、行動に移すことによって、トラブルを解決に導いた。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/横関一浩)
[語る人]
ネオジャパン 渋谷和幸さん
●profile..........渋谷 和幸(しぶや かずゆき)
人材派遣会社での勤務を経て、2005年、ネオジャパンに入社。自社パッケージソフトを用いたクラウド事業の立ち上げとクラウドサービスの拡販営業を担当する。09年からは中堅・中小企業(SMB)向けパッケージ製品の営業に携わり、販売パートナー向けの提案活動に従事。13年4月、現職に就いた。
●所属..........プロダクト事業本部
SMB・クラウド営業部 課長
●担当する商材.......... クラウド型グループウェア「desknet'sクラウド」
●訪問するお客様.......... SIerなどの販売パートナー
●掲げるミッション.......... 中堅・中小企業(SMB)向け事業の拡大
●やり甲斐.......... チームで仕事するうえでの楽しさや喜びを共有すること
●部下を率いるコツ.......... メンバーの席を回って話をし、「本音」を聞き出す
●リードする部下.......... 3人
トラブルを経験して行動をマニュアル化
私はもともと、外に出てお客様を訪問し、商談の現場で動き回るのが性に合っている。お客様からあらゆるイレギュラーの要望を受けて、営業対応の難易度が高い案件でも数多く受注につなげたという実績が評価され、今年の4月にSMB・クラウド営業部の課長に昇格した。管理職を積極的に目指したわけでもなかったが、課長になって間もない頃に、チーム内で大変な事態が起きた。
私の部署は、システムインテグレータなどの販売パートナーに、クラウド型のグループウェア製品を提案するのが主な仕事だ。新製品の発表直後に問い合わせが増え、対応に追われていた頃、主要パートナーを担当する部下がミスを連発するようになった。部下は連日のように、夜遅くまでトラブル対応をしなければならないことになり、体力的にも精神的にも参ってしまっていた。課長としてどうヘルプするのか。私は、マネージャーの手腕が問われる試金石だと思って、しっかりとフォローすることを決めた。
部下は、「ネオジャパンの製品がうまく動かない」とエンドユーザーからクレームを受けた販売パートナーに叱られ、自分が悪いと思って自信を失いかけていた。それが次のミスにつながり、悪循環に陥っていたのだ。私は、課長になってまだ日が浅いこともあって、うまくフォローできるかどうかと不安を感じたけれども、その自信のなさが部下に伝わらないよう、強い気持ちをもつように心がけた。次に、部下と冷静に話して問題点を整理するための場をつくって、解決策を練りながら実際のアクションをどう起こすかを一緒に考えた。
販売パートナーにも改めて話を聞いて状況を分析してみると、エンドユーザーのネットワーク環境やパソコン設定に、当社製品がうまく動かない原因があることがわかった。つまり、そもそもの問題は、当社とパートナーの間に認識違いがあったことで、当社の製品が悪いわけではないということが判明したのだ。部下は、販売パートナーにその説明をして、納得していただくことで、関係を回復した。そのおかげで部下は自信を取り戻し、元気になって営業活動に励むようになっている。
課長になって、社外での活動が少なくなった。顧客訪問や資料作成で忙しかった現場時代と違って、今は時間が空くこともあるので、その時間をどう有効活用するかを考えなければならない。現在取り組んでいるのは、今回の経験を生かした部内のルールづくりだ。空き時間を使って、トラブルに迅速な対応ができるよう、行動のマニュアル化を進めている。
[紙面のつづき]前に出て部下を引っ張る、「陰で支える」は卒業
私が率いるチームには、それぞれひと癖ある個性派の人が多い。彼らは、営業活動に関して「こうしたい」とか「こうするべきだ」とか、自分の考えていることをはっきり言ってくる。それぞれの意見をうまく調整して方針を定めるのが、管理する私の腕の見せどころだ。今年4月、課長になって学んだのは、現場を動かそうと思って部下に私の考え方を伝えても、それだけでは現場はなかなか動かないということである。
私のチームは、パートナー販売の拡大に取り組んでいる。私が製品の提案ポイントを部下に教え、部下たちはそれをパートナーに伝える。そしてパートナーは、それを踏まえて、エンドユーザーに提案する。こうして複数の人が絡む仕組みになっているので、伝言ゲームのように、ちょっとしたズレで内容が伝わらなくなることがある。だからこそ部下をしっかり管理して、提案ポイントを正確にパートナーに伝えさせなければならない。
課長になったばかりの頃は、以前と同じようにお客様を訪問する現場の活動を行っていた。プレイングマネージャーとして、陰から支えるかたちで部下を管理していたのだ。しかし、これではパートナーとのコミュニケーションが、先ほどの伝言ゲームのようになってしまうことがわかった。実際に、トラブルも発生した。上司に「君はマネージメントが足りない」と指摘されたこともあって、裏方をやめ、前に出て部下を引っ張っていくというスタイルに切り替えることにした。
まだまだ不慣れな部分もあるけれども、マネージャーに徹することで、いまは現場が活発に動くようになっている。ポイントは、部下と密にコミュニケーションを取り、部下とパートナーとの間と、パートナーとエンドユーザーとの間に認識の違いが発生しないようにすることだと思う。部下たちのなかには、積極的に前に出るようになった私を見て、「渋谷さんのようになりたい」と言ってくれる人もいる。上司だけでなく、部下にもマネージャーとして認められているのは、仕事みょうりに尽きる。

会社のノートパソコンと自分で買ったピンク色のマウスを、どんなときも手放さない。これらを使って、自社のグループウェアを活用し、情報共有の徹底を心がけている。