福岡情報ビジネスセンターは、基幹システム開発などSI事業を軸に、人材育成や顧客の経営に伴走する支援サービスなどを広く提供している。近年は食品業界のDXに貢献するためフードテックビジネスに注力し、同業界向けのECサイト構築サービスも始めた。武藤元美・代表取締役は、事業の拡大によって2030年にグループ全体で100億円の売り上げを目指し、社会が応援してくれるような企業経営にまい進すると意気込む。
(取材・文/下澤 悠)
エンジニア人材育成に強み
――事業の概要は。
もともとは、中小企業向けの「IBM i」での基幹システム開発が祖業だ。その後、クラウドサービスの提供も始め、オープン系の仕事のシェアも増えている。自分たちでサービスもつくっており、オービックビジネスコンサルタント「奉行クラウド」のデータを自動で通知する「旗振~hata free~」というプロダクトを提供している。
売り上げは、地元の福岡を中心とした九州で6割ほどに達し、ほかは東京や大阪などの地域が占めている。
――強みは何か。
下請けではなく元請けで仕事をするため、きちんと現場や顧客の経営そのものを把握していることだ。これによって、中堅・中小企業のインフラや基幹系、バックオフィスに人材育成、コンサルティングも含めて会社経営を伸ばすためのサービスを提供でき、オールインワンで対応できる。単なる「システム屋」ではなく、経営に一緒に伴走するかたちでビジネスをしている。中小企業が頼りにするのは税理士や弁護士などの士業だが、同じようにわれわれは、ITのコーディネーター役という立ち位置で支援している。
また、人材育成には定評があり、自社だけでなく他社から出向で社員を受け入れて教育している。ビジネスや経営が分かるエンジニアを育てられるノウハウを持っており、当社から巣立って知見や人脈を生かしながら、大手SIerなどで活躍している人も多い。
食品向けECサイト構築サービスを開始
――地元企業が抱える課題は何か。
やはり、長年スクラッチ開発でつくってきた基幹システムの刷新ができていないことだろう。思い切って再構築するか、少しずつ変えていくかという決断を迫られている状態だ。新しい環境へのマイグレーションは、たとえ移行支援のツールを使ったとしても費用対効果があまり出ず難しい上、最近はスクラッチで開発してくれるベンダーは少ない。そうなると、各企業が独自性を保つためには自前でつくるしかないので、自社エンジニアの育成を当社に任せてもらっている。システムはきちんと業務を分かっている社員が内製していくべきであり、われわれとしてもそうした支援をしている。
武藤元美 代表取締役
また、DXが課題になっている企業に対しては、まずコミュニケーションツールの導入を勧め、関心の高いAIの導入支援や研修も行っている。
――現在力を入れて取り組んでいることは何か。
22年に事業承継でグループ入りしたサンリッチで、ECサイト「おまかせECマルシェ」を始めた。コンテンツ付きの自社ECサイト構築サービスとなっており、顧客企業は手間なくサイト上での販売を始められる。サンリッチはもともとカタログを手掛けている企業で、ECサイトと併せてフードテック事業の展開に力を入れていく。食品業界はデジタル化が遅れているため、ECへ転換させていくことで一助になりたい。
私自身は、DXに関していろいろな場でプラットフォーマービジネスの成功例をつくらなくてはいけないとずっと提唱し続けてきた。食品業界で使えるサービスをつくる側に転換することで、それを実践したかたちだ。やはり、ユーザーの側に向かっていかないと現場のニーズは分からないという思いがあって取り組んでいる。
魅力多く、採用は好調
――人材確保は課題になっているか。
就職情報サイトを使っているだけで採用のための学生向け説明会は開いていないが、新卒・中途採用ともに多数の応募があるため課題にはなっていない。普段から地域やコミュニティーの活動を重視し、産学連携などさまざまな取り組みをしているため、大学や学生側からきちんと自社を認知してもらっている。
認証としては、健康経営優良法人(中小規模法人部門)を取得し、DX認定制度の認定事業者でもある。また働き方の自由度が高いことや転勤がないことなども、働き手からすると魅力になっていると思う。ITだけのモノトーンな業務でなく、フードテックなどを手掛けているためグループ内転職で好きな仕事をするチャンスがあることもポイントになっているのだろう。
――将来的な事業の構想は。
30年にグループ全体で100億円の売り上げを目指す。われわれのこれまでのSIerとしての知見と技術力を生かし、フードテックのプラットフォーマーになって食品業界を活性化させ、生産者の成功を支援したい。
日本で発生する膨大なフードロスをシステムで解決したいし、一方で子どもの貧困なども深刻だ。今は、ほかの企業と協力しながら、それらを結び付けようとしている。例えば、農家で発生した規格外の野菜を子ども食堂に届ける作業は、ECサイトなどのテクノロジーで効率化ができる。社会的な存在意義があり、社会が応援してくれるような企業グループになることを目標としている。
Company Information
1998年に創業。システムの提案、構築、導入支援、保守などを展開するほか、DXアドバイザーやIT研修なども手掛ける。従業員数は単体で約90人。福岡市に本社、佐賀県鳥栖市と東京都港区などにオフィスを置く。グループのサンリッチがECサイト運営などを担っている。