名古屋市に本社を構えるミライクは、生活インフラとして浸透した「LINE」の普及率の高さを生かし、企業の業務効率化や自治体のDX推進に取り組んでいる。児童相談所や福祉施設など、業種に特化した展開を加速。グローバルな開発体制とコンサルティング視点で、顧客の本質的な課題の発見・解決に注力する。
(取材・文/南雲亮平)
生活に浸透した強み
――事業の概要を。
システムの開発・保守やネットワークインフラの構築・保守を手掛ける会社として、2011年に設立した。システムインテグレーション事業を展開する中で、「Webサイトやチラシはつくれないの?」といったお声がけが増え、ニーズに応えるかたちでWebサイト構築やアプリケーション開発などを担うデジタルインタラクティブ事業が拡大していった。現在では2本柱として会社を支えており、システムインテグレーション事業を基盤に、デジタルインタラクティブ事業を伸ばしていくことでさらなる成長を目指している。
石田翔大 デジタルインタラクティブ部事業本部東京支店長兼プロデューサー
中でも力を入れているのが、セミオーダー型のLINE公式アカウント拡張サービス「KAKERU」だ。数年前から開発に取り組み、デジタルインタラクティブ事業の中核に位置付けている。
――プラットフォームとしてLINEを選んだ理由は。
国内人口の約80%が利用しているという圧倒的な普及率だ。子どもから高齢者まで幅広く浸透しており、ユーザーにとって利用する上での心理的障壁が極めて低い。加えて、メールは何百件と未読が溜まっていることがある現状に対し、LINEは「未読がついていると気になって見る」という心理からくる高い開封率も、ビジネス上の大きな利点になる。
単体の専用アプリケーションを開発しても、インストールや会員登録の手間でエンドユーザーには敬遠されることが多いが、LINEなら日常的に使っているツールの範囲内で完結できることも理由の一つだ。単体アプリに比べ、開発コストと保守費用の面でも優位性がある。Webシステムに近い構成で、スマートフォンのOSアップデートに依存しにくいので、頻繁なバージョンアップ対応の負担も少ない。また、顧客のニーズに合わせてピンポイントでカスタマイズできる柔軟性を備えている点が当社の強みだ。
――どのような業界からのニーズが多いか。
飲食店やアパレルのほか、医療機関、建設関係、介護業界、公共施設など多岐にわたる。最近では、中古時計販売店でのアルバイトのシフト管理や、撮影スタジオでのカメラマンのアサインといった、バックオフィス業務の効率化にLINEを活用するケースも増えている。さらに、自動車販売店では、車検や点検の時期に送付する案内を自動化することで、電話やはがきによる人手とコストを大幅に削減している。
愛知県の児童相談所での事例では、従来、一時保護の受け入れ先を探すために、職員が約20施設に電話で空き状況を確認しており、決定まで約1時間を要していた。これをLINEによるリアルタイムの共有システムに置き換えたところ、約22分まで短縮できた。
隠れた課題を明らかに
――人材の確保について。
エンジニアのチームはインド、米国、モンゴル、ネパールなど多国籍なメンバーで構成されている。文化の違いによる設計思想の差異はあるが、最新のテクノロジーに関する情報の多くは英語で発信されるため、海外人材を抱えることで技術を取り入れやすい環境になっている。
一方、営業は中途採用の日本人が中心だ。ソリューション営業には顧客の課題をヒアリングで深掘りして、具体的な解決策を提案することが重要になるため、教育には非常に力を入れている。とはいえ、人はすぐに成長するわけではなく、経験の浅いスタッフでも提案活用できるよう、「老人ホーム向け」や「美術館向け」など、ある程度業界に特化したパッケージの整備にも取り組んでいる。そのまま導入することもできるが、提案後に顧客からのパッケージへの意見を参考にニーズを探り、カスタマイズして提供するスタイルも検討している。
――現場で感じるDX推進の課題は。
いまだに多くの現場で紙やファクスの文化が根強く残っている。地方や公共施設は顕著で、「何から始めればいいのか分からない」「難しそう」といった心理的なハードルが高い。こうした現場にシームレスに受け入れられやすいのが、普及率の高いLINEの強みだ。
加えて、顧客自身が課題を把握していないケースも少なくない。具体的には、「AIを導入したい」との要望があっても、紙やファクスを使う業務を整理するほうが投資効果が圧倒的に大きい場合もある。こうした課題を解決するには、コンサルティング的な視点で現在の業務にどれほどのコストがかかっているかを明らかにし、時にはLINE以外の手段を提案する姿勢も求められる。
――今後の展望を。
特定の業界に深く刺さるパッケージ展開を加速させる。例えば、福祉施設でLINEとスマートロックを連携させ、面会予約から入退室管理まで自動化する仕組みを提供し始めている。開発や検査工程にAIの導入を進めており、さらなる品質向上とコスト削減を図っていく。
Company Information
2011年設立。本社は名古屋市。システムインテグレーションやデジタルインタラクティブ、クリエイティブデザインなどの事業を手掛ける。26年5月時点の従業員数は52人。