〈企業概要〉
米Postman(ポストマン)は2014年設立。API開発を支援するプラットフォーム製品を提供。グローバルで4500万人の開発者と50万以上の組織に利用されている。日本法人は23年設立。
米Postman(ポストマン)のAPIテストツールは、ソフトウェア開発者に広く利用されている。現在はAPIの設計やドキュメント作成、カタログ管理など、API開発の各工程を支援するプラットフォームへと機能を拡張しており、日本法人は2026年から法人利用の拡大に本腰を入れ始めた。販売戦略で重視するのが、API開発に携わるSIerだ。開発現場で利用を促すとともに、顧客への提案、販売を担うパートナーとしても開拓する。
(取材・文/春菜孝明)
API品質を標準化
ポストマンはAPIテストツールをWebブラウザー「Chrome」の拡張機能として公開されたのが始まりで、14年に法人化した。個人利用の無償版と有償のチーム利用プラン、エンタープライズ向けがあり、グローバルで4500万人、国内では70万人がユーザーになっている。
平林良昭 社長
日本法人は23年に立ち上がり、既存ユーザーの製品理解を深める活動を進めてきた。独自イベントやワークショップなどを3年間で約240回開催。平林良昭社長は「グローバルはChromeのエクステンションとしてユーザーを広げてからライセンス販売を展開する方針だった。日本でも同様の方針で市場を広げ、本格展開の素地が整った」として、26年から法人向けの販売に注力する方針を示す。
エンタープライズ市場では、APIの設計やテスト、管理といったライフサイクル全体を支援するツールとしてアピールする。企業内ではAPIが乱立し、仕様書が分散するなどガバナンスに課題を抱えている場合も多い。ポストマンでは情報を一元管理できるほか、テストの際に社内ガイドラインへの適合を確認するなど、開発プロセスが明確になることで、APIの質を担保することもできる。
具体的には、APIの仕様をもとにモックアップを作成し、動作イメージを確認できる機能を備える。完成したAPIはカタログで管理可能で、どのAPIで何ができるのか、十分なテストが実施されているかなどを可視化する。社内での再利用促進や標準化されたAPI資産の整備にも役立つ。
AIエージェントが業務フローに浸透すると、社内システムとつなぎ込むためにAPIが多数用いられるようになる。平林社長は「エージェントが利用するAPIの一覧や、各APIで取得できる情報、実行できる機能が整理されていなければ、せっかく企業内にある情報資産や機能が活用されない可能性がある」と述べ、環境変化を見据えた導入を訴える。
製品内にもAIエージェント機能を備える。APIの要件を渡すと設計書を作成したり、APIに合ったテストコードを生成したりすることができる。ガバナンスガイドラインに沿っていない箇所があれば、エージェントに修正を任せられる。
法人利用の浸透図る
販売戦略では、API開発を業務で行う企業であれば効果が見込めるとして、企業規模を問わずにターゲットとする考えだ。その上で、ニーズが高い複数の業種に注力する。金融機関ではサービス連携のためのAPI公開が進んでいるものの、APIのつくり方や管理ルールが社内で統一されていないケースがあり、カタログ機能に需要があるという。製造業はシステムをモダナイゼーションする過程で、API連携に力を入れる企業が多い。Webサービス系やテレコミュニケーション事業者も狙う。
モデルケースとして押し出すのは三菱電機の事例だ。家電と連携するアプリケーションの開発シーンで、API試験パターンの標準化や試験構造の可視化、自動のレポート生成の機能を利用し、属人的な作業から再現性のあるプロセスへの転換につなげた。
SIerの開発環境への浸透も図る。APIの設計からテスト管理まで同社製品で完結させることで、品質の担保につながるとアピールする。APIに関するドキュメントを文書作成ソフトや表計算ソフトにまとめる従来の手法に対し、同社のプラットフォームを用いると、エンドユーザーは納品後すぐにテストを試行できるといった体験向上にもつながるとする。
国内では、開発者ツールとして個人やチームで利用している割合が大きい。既存ユーザーがいる企業に対しては、エンタープライズライセンスへの移行を提案していく。
販売形態として直販と間接販売の比率を「将来的には50:50」とすることを目指す。現在はディストリビューターとリセラーを通じた商流を開拓している。大規模導入では、利用部門や開発チームごとに共同作業の環境を分け、ユーザーの権限を適切に設定する必要がある。シングルサインオン(SSO)の設定など、顧客の組織構成や運用方針に合わせた導入支援が欠かせない。「テクノロジーの深いナレッジは必要ない」(平林社長)ものの、ライセンスの再販だけでなく、トレーニングやオンボーディングを担えるパートナーを求めている。