〈企業概要〉
米PagerDuty(ページャーデューティー)は2009年に設立。システム保守担当だった創業者が、保守担当者の業務効率化を志して創業した。26年1月期の全世界での売上高は前年度比5.4%増の739億円、従業員数は約1200人。
システム障害管理ツール開発の米PagerDuty(ページャーデューティー)は、2022年に日本法人を設立し、国内市場に本格進出した。進出前は先進技術に敏感な国内の一部ユーザー企業がページャーデューティーから直接製品を購入し導入していたが、日本法人設立後は直販に加え、ビジネスパートナー経由の間接販売チャネルの開拓に力を入れている。直近の国内パートナー数は25社で、「PagerDuty」を自社サービスに組み込んで販売するマネージドサービス・プロバイダー(MSP)も増えている。
(取材・文/安藤章司)
クライアントゼロを推奨
PagerDutyは、システム障害の情報を保守担当者へ素早く通知し、修復作業を支援するツールで、全世界の累計納入社数は3万5000社に上り、国内では420社に納入している。日経平均株価を構成する企業225社のうち、3社に1社が採用しているという。クラウドサービスやコンテナ型仮想化ツール、ネットワーク、セキュリティーなど700種類ほどのツールと連携し、ツールからの通知をAIで分析。システム障害につながる重要な内容のみを絞り込むことで保守担当者の負担を軽減できる点が高く評価されている。
宇佐美海太 執行役員
ユーザー企業がIT製品を選定する際の意思決定者は、一般的にCTO(最高技術責任者)やCIO(最高情報責任者)といった情報システムを担当する役員であるが、「国内ユーザー企業の場合は、CTO・CIOが出入りのSIerに意見を求めることが多い」(執行役員の宇佐美海太・経営戦略・マーケティング本部本部長)と、製品選定においてユーザー企業と深い関係にあるSIerの存在が大きいと話す。
こうした背景から、国内市場への進出に当たっては、日本法人の直販による大手ユーザー企業向けの営業活動と並行して、ビジネスパートナーを経由した間接販売チャネルの開拓に力を入れてきた。
開拓に当たっては、「まずはパートナー自身がPagerDutyを自社導入して、使い方に習熟した上でユーザー企業に提案してほしい」(宇佐美執行役員)と、“クライアントゼロ”となるよう求めている。自社導入を通じて製品に関するノウハウが蓄積でき、ユーザー企業に向けた提案もより的確なものになることが期待できるからだ。
日本法人を設立した当初は販売を担うリセラーが中心だったが、最近では自社のマネージドサービスの中にPagerDutyを組み込んで販売するMSPが増えている。MSPパートナーでは、CTCテクノロジーのシステム障害の初動対応を高度化するマネージドサービス「ITOps X-formation(アイティオプス・トランスフォーメーション)サービス」に採用されているほか、キヤノンITソリューションズの「SOLTAGE(ソルテージ)」のインシデント管理サービスにも採用されている。26年7月には、SCSKシステムマネジメントとMSPパートナー契約を結んでいる。
パートナー関連の売上高を5割に
PagerDutyの主戦場は保守運用の分野であり、この分野はユーザー企業から業務委託されたSIerが担っていることが多い。国内パートナーはSIerが中心となっており、うちマネージドサービスを手がけているSIerがMSPパートナーの中心だ。直近の国内パートナー数はリセラーとMSPを合わせて25社で、このうち半数余りがMSPパートナーだ。
日本法人の足元の新規売上高のうち、パートナー関連の売上高は3~4割を占める。パートナー関連とは、パートナー自身によるPagerDutyの自社導入や、ユーザー企業への販売、MSPパートナーとして自社サービスに組み込むケースを指す。宇佐美執行役員は「将来的にパートナー関連の売上高を5割ほどに高めていきたい」と、パートナービジネスを強化する方針を示す。26年8月25日には、初のパートナー向けイベント「Partner Summit 2026」を都内で開催し、業績好調なパートナーや新しい取り組みに挑戦したパートナーなどを表彰する予定だ。
日本法人は26年で設立4年目となる。短期的には首都圏の大手ユーザー企業を中心に、直販と間接販売で納入数を積み上げ、中期的には全国の主要都市の企業や中堅企業向けの販売を強化する戦略だ。全国展開を推進するに当たって「ユーザー企業への提案や販売に際しての『勝ちパターン』のシナリオを作成し、パートナーと共有することで間接販売チャネルの一段の活性化につなげたい」(宇佐美執行役員)とする。勝ちパターンのシナリオの充実によって、PagerDuty自体の販売拡大だけでなく、MSPパートナーのサービス拡販にも貢献する狙いだ。
直近の日本法人の売上高は倍増しており、直販と間接販売チャネルの活性化を通じて「今後3年は年率2倍の成長スピードを維持したい」(同)と語る。