〈企業概要〉
米Asana(アサナ)は2008年創業。ワークマネジメントプラットフォーム「Asana」を提供する。世界で17万社以上、国内では数千社が有料プランを利用している。日本法人は19年設立。
米Asana(アサナ)は、タスク管理からプロジェクト管理、部門横断のコラボレーションまでを支援するワークマネジメントプラットフォーム「Asana」を提供する。近年はAI機能を拡充し、人とAIエージェントが協働する業務基盤へと進化させている。これまで日本法人は大企業を中心に顧客を広げてきたが、中堅企業の開拓にも乗り出した。パートナーとの連携を通じ、企業の業務プロセス改革や生産性向上を後押しする考えだ。
(取材・文/山本浩資)
仕事の流れを一元管理
Asanaは、単なるタスク管理ツールではなく、目標やプロジェクト、タスクを結び付けて管理する「ワークマネジメント」の考え方を中核に据えている。企業内の業務を可視化し、担当者や期限、進捗状況を共有することで、部門をまたぐプロジェクトの実行力向上を支援する。立山東社長は「個人の効率だけ上げても、ビジネスにはあまり貢献しない」と語り、組織全体の効率向上の重要性を強調する。個人最適から組織最適への転換を支援することがAsanaの役割だと位置付ける。
立山 東 社長
特徴は、メールやチャットなどで分散しがちな業務情報を一元管理できる点にある。業務依頼をフォーム経由で受け付けて自動的にタスク化したり、承認ワークフローを組み込んだりすることも可能だ。さらに、個々のタスクとプロジェクト、組織目標をひも付けて管理できるため、会社の目標から現場の業務までを一つの基盤上で把握できる。
AI機能の強化も進めている。「Asanaダッシュ」は、会議やタスクなどの情報を集約し、次に取るべき行動を提示する。「AIスタジオ」はワークフローの自動化に対応し、用途別に30種類以上を用意するAIエージェント「AIチームメイト」は業務の実行を支援する。プロジェクトの状況をもとに進捗報告の下書きを作成するほか、タスクの要約や分類にも対応する。
その基盤となるのが、独自のデータモデル「Asana Work Graph」だ。組織内の目標やプロジェクト、タスクなどをリアルタイムで関連付け、仕事の文脈を共有する。加えて、過去の判断理由や業務知識を蓄積する「共有メモリ」、AIエージェントの権限や利用状況を管理するガバナンス機能も備える。立山社長は「AIが活躍するためには、人と業務がつながっていることが重要だ」と話す。AIが業務の背景や目的を理解しながら活用できる環境を整えることで、組織全体の生産性向上につなげる。
大企業から中堅企業市場へ
日本法人はこれまで従業員2000人以上の大企業を重点ターゲットとして事業を展開してきた。立山社長は「企業のサイズが大きくなればなるほどオペレーションも複雑で、複数部門間でのサイロ化が深刻になりがちだ」と説明する。こうした企業では部門横断の情報共有やプロジェクト管理、業務標準化へのニーズが高く、建設業や製薬業を中心に導入が広がっているという。
近年は中堅企業市場の開拓にも力を入れ始めた。従来は営業リソースの観点から大企業を優先していたが、1000~1500人の企業でも業務の可視化や部門間連携へのニーズが高いことから、対象を広げている。
販売ではパートナーとの協業を重視している。顧客ごとに業務プロセスや組織構造が異なるため、ライセンス販売だけでなく、導入設計や定着支援が欠かせないからだ。顧客企業が使う他社製アプリケーションとの連携を含め、顧客の業務に合わせた提案や業務改革支援を担う役割を期待している。国内では約20社のパートナーと連携しており、そのうち数社が案件開拓や導入支援を積極的に手掛けているという。
ユーザーコミュニティーの活動も活発だ。立山社長は入社を決めた理由の一つに「お客様の熱量」を挙げる。日本法人がまだ小規模だった頃からコミュニティーが形成され、利用者同士で活用方法や新機能について議論を交わしていたという。現在もコミュニティーフォーラムでは利用者同士が運用ノウハウや活用事例を共有している。
立山社長は、日本企業について「ベテラン社員が持っている知識は世界一蓄積されていると思う。ただ問題は、それがその人の個人の頭の中にあることだ」と指摘する。ベテラン人材の退職やAI活用の進展を見据え、業務情報や判断の経緯を組織の共有資産として活用できる環境づくりが重要になるとみる。こうした組織知の蓄積と活用を支える基盤として、Asanaの浸透を図る考えだ。