11月のフィリピンの台風被害は、東日本大震災の津波被害を思い出させる痛ましさでした。データ復旧を手がけるデータサルベージコーポレーションの阿部勇人社長も、心を痛めた一人です。
宮城県出身の阿部社長は、東日本大震災のときに津波で流されたHDDなどの記録メディアを、なかばボランティアで復旧に取り組んだことで知られる行動派の技術者。「震災でのデータ復旧の経験が少しでも役立てば」との思いで、先週、単身フィリピンに赴き、地元のデータ復旧会社や支援有志の方々と活発な意見交換を行い、ノウハウを提供しました。
ある地場のデータ復旧会社のところに持ち込まれたHDDだけでも「数百台は軽く越える」という状況を目のあたりにしたそうです。東日本大震災の経験からすると、5人の熟練のデータ復旧技術者が1年かかって復旧できるのが1000台程度だそうですから、相当な被害であることが容易に想像できます。
津波と高潮の違いこそあれ、HDDの被害の共通点は少なくありません。データ復旧の技術者同士が「国は違えど、心を開いて話をすることができた」と、震災でのデータ復旧の経験をもとに、いまできる限りの支援をしてきたと話していました。
データ復旧は情報保全の「最後の砦」です。阿部社長の熱意は、きっとフィリピンの同業者や有志に伝わったことと思いますし、記者自身も、阿部社長のような熱血漢がいる限り、日本の情報サービス業の将来は明るいと信じています。(安藤章司)
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