オリンピック公園の周辺で、ソーラーパネルを備えた街灯が北京の街を照らす。経済の成長につれてエネルギーが不足する中国の各地で、自然エネルギーを利用する動きが出てきている。そんな状況にあって、SAP中国は復旦大学とのコラボレーションを拡大。「スマートエネルギー」をテーマにして、ソリューション開発に取り組んでいる。

ソーラーパネルを備えた街灯。北京市は自然エネルギーの利用を進めている【Symantec】
少ないパートナーへの厚い支援

シマンテック コーポレーション
バーナード・クォック
シニアバイスプレジデント <ここがポイント>・事業戦略は地域ごとに考える
・パートナーの数を絞って特化型販売
・市場のギャップを狙う
ハイアールやファーウェイなど、中国では各業種の大手企業が急ピッチでビジネスのグローバル化を推進している。2012年は、中国企業73社が売上規模の世界トップ500社にランクインした。そんななかで、急速に伸びているのは、企業のデータを守る情報セキュリティ市場だ。
中国で、エンドポイントセキュリティや情報漏えい対策のマーケットは活況を呈している。IT調査会社のCCID Consultingによると、情報セキュリティ市場はここ数年の間、年20%以上の成長を遂げ、2012年には216.4億元(約3246億円)に達したという(図参照)。今後も、勢いよく成長することが見込まれている。
セキュリティ大手のシマンテックは、グローバル売上高の19%をアジア太平洋/日本地域で稼いでいる。なかでも中国ビジネスの伸びが目立つという。同社は中国の可能性に手応えを感じて、「市場により深く入り込むことを目指している」(アジア太平洋/日本地域担当シニアバイスプレジデントのバーナード・クォック氏)という。
シマンテックの中国本社は北京にある。シマンテックの得意先である大手国際企業が、官公庁がひしめく北京にヘッドクオータを構えているからだ。北京本社のほか、全国4か所に主要拠点を展開している。クォック・シニアバイスプレジデントは、「中国は多様性に富んでいる。市場を大きく四つに分割して、それぞれの特性を考慮して地域ごとに事業戦略を練っている」と語る。
シマンテックは事業の拡大を目指して、現在、販売パートナーの絞り込みに取り組んでいる。パートナーの数を少なくして、支援を厚くする考えだ。「これまで販売パートナーを獲得しすぎて、販売網が複雑になった。その戦略を見直し、特定の地域・業種を得意とするパートナーを厳選したい。例えば、○○省で医療市場を開拓するために、その地域で最も医療に強い販売会社と提携するといったやり方だ」(クォック・シニアバイスプレジデント)。
「市場のギャップを見つけて、製品を投入する」──。クォック・シニアバイスプレジデントは、社員が個人所有の端末を仕事で使う「BYOD(Bring Your Own Device)」が中国で普及していくとみて、認証ツールの需要拡大に期待を寄せている。シマンテックは2010年にベリサインの認証事業を買収し、ラインアップの拡充など、製品展開に本腰を入れている。BYODを追い風として、認証ツールの事業展開を強化していくという。
重視すべき「3S」
──スマート、サービス、政府
「中国のIT人材の年収は、ドイツのレベルの90%に達してきた」。SAP中国のクラース・ノイマン グローバル副総裁は、北京や上海など沿岸部の大都会を中心に、中国で人件費が急激に上昇していることを指摘する。そんな状況にあって、高付加価値のソリューションを提供しなければ、収益を十分に確保することが難しくなる。ITベンダーは、「バリュー」を提供することが以前にも増して重要になっている。
中国事業で重視すべきは、ITを「スマート」に活用する「サービス」を、企業だけではなく、「政府」にも提案するという「3S」だ。「大手ベンダーでなければ実現できることではない」と思いがちだが、必ずしもそういうわけではない。例えば、日本でIBMやSAPの製品の高い販売実績を誇る中堅・中小規模のシステムインテグレータたち。国内で培ったノウハウを生かして、中国の地場パートナーと提携すれば、付加価値のサービスを提供することが可能だ。
中国政府は多くの課題を抱えており、膨大なIT投資を余儀なくされている。IT活用によって社会問題を解決するために必要な先進技術を提供するのは、日本を含めた海外ITベンダーの腕の見せどころだ。「社会問題の解決」と「中国側にバリューを提供」の二つのキーワードが、中国ビジネスの有効な切り口となりそうだ。