BCN(佐藤敏明社長)は、11月下旬、外資系サーバーメーカー4社を集めたセミナーを、ITベンダー向けに開催した。テーマは「ブレードサーバー」の拡販。ラック型やタワー型にはないブレードの魅力を、シスコシステムズとデル、日本IBM、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の担当者が約20分のショートセッションでわかりやすく伝え、パネルディスカッションも開催。ブレードがもつ価値を改めて提案した。(取材・文/木村剛士)
ブレードの魅力を提案
ブレードサーバーはおよそ15年前に登場し、当時は複数のIT調査会社がx86サーバーの主力モデルになると予想していた。ブレードは、「エンクロージャ」という特殊なきょう体に複数のサーバーを挿入して利用する仕組みで、運用管理の手間が少ないことと、省スペースを特徴としている。タワーやラックに比べて高額ではあるものの、システムのオープン化が始まり、ユーザーが保有するサーバーが増えて運用管理に手間がかかるようになっていた頃だっただけに、登場した時の注目度は高かった。しかし、クラウドの浸透でデータセンター(DC)にサーバーを預けるユーザーが急増。DCではラックがメインなので、ブレードの注目度は薄れている。
今回のセミナーは、こうした状況下でもブレードサーバーが効果を発揮する分野があることを訴求する内容だった。ブレードサーバーを開発・販売する4社の外資系サーバーメーカーが登壇し、各社がもつ製品の魅力と、ブレードを活用したソリューション、ユーザー事例などを語った。
4社がそれぞれの強みを解説
シスコシステムズの中本滋之・ソリューションズシステムズエンジニアリングシニアシステムズエンジニアは「Cisco Unified Computing System(Cisco UCS)」を紹介した。「最後発としてサーバー市場に参入し、シェアは他社には負けるが、毎年、前年度の販売台数を大幅に上回っている」と好調さをアピール。「Cisco UCS」を構成するコンポーネントとサービスプロファイルによる管理の仕組みにポイントを置いて解説した。デルからは、エンタープライズ・ソリューション統括本部の馬場健太郎部長が登壇して、「Dell PowerEdge VRTX」を紹介した。「コンパクトDC」を構築するための最適なプラットフォームとして、中堅クラスのシステムでもブレードが効果を発揮することを主張した。
日本IBMのシステム製品事業システムx事業部ビジネス開発の東根作成英・System x Specialty担当部長は、「2020年代を見据えた新世代ブレード・サーバー」として「IBM Flex System」を紹介した。東根作氏は「IBMは他社に先んじてブレードサーバー『IBM BladeCenter』を発売した実績がある。『IBM Flex System』は『IBM BladeCenter』の利点を移植して進化させたプラットフォーム」とした。最後に登壇した日本HPのプリセールス統括本部の小川大地・ITスペシャリストは、「グローバルNo.1のシェアをもつブレード」として「HP BladeSystem」を紹介した。
VDIにブレードは最適
4社のセッションが終わった後は、登壇した4人がパネルディスカッションに再登場。ブレードサーバーの魅力について語った。日本IBMの東根作氏は、「ブレードサーバーは確かに登場した時点で描いた伸び率は達成していない。きょう体が重すぎて、一般的なサーバールームでは利用できないなど、細かな問題が障壁となってユーザーから受け入れられなかった面がある。とはいえ、ブレードの拡張性や運用・管理の容易さはタワーやラックにはないメリットであることは間違いない。ITベンダーにとっては、タワーやラックでは実現できなかったソリューションをブレードで構築し、新たなビジネスを獲得できるチャンスになる」とした。
シスコの中本氏と日本HPの小川氏は、ブレードを生かせる具体的なソリューションとしてVDI(バーチャル・デスクトップ・インフラストラクチャ=デスクトップの仮想化)を挙げた。「複数台の端末をサーバーで一括管理することが求められ、ブレードと相性がいい」(中本氏)。小川氏は、「VDIは今年も非常に好調だったが、来年以降も期待できるソリューション」として、VDIとブレードを融合したソリューションにビジネスチャンスがあることを説明した。
デルの馬場氏は「すべてのユーザーにブレードが受け入れられるとは思っていない。学術機関向けのHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)システムでは相性がいいなど、特殊なユーザーや用途で受け入れられる傾向がある。デルのスタンスは、ユーザーの要望に最適なプラットフォームを提供すること。タワーやラック、そしてブレードをフルラインアップでもっているのが強みであり、今後も継続してブレードの製品開発を強化する」と語った。
主要サーバーメーカー4社の強みや特徴を一度に把握できる貴重な場になっただけに、会場に集まった参加者は、最後まで真剣に聞き入っていた。

(左から)シスコシステムズ 中本滋之 シニアシステムズ エンジニア、デル 馬場健太郎 部長、日本IBM 東根作成英 担当部長、日本HP 小川大地 ITスペシャリスト