【ニューテックの戦略】
サービスでハードを生かす
対応機器の拡充も検討

柳瀬博文取締役 ストレージ機器メーカーのニューテックは、ストレージ機器「SmartNAS」の拡販を目的に、オンラインストレージの「Cloudy Backupサービス」を提供している。ハード単体での提供では他社との差異化を図ることができないと判断して、サービスとハードとの連携に踏み切った。
「Cloudy Backup」は、同社のストレージ機器「SmartNAS」との連携で利用できるサービス。ユーザー企業は、インターネット環境があれば、専用ウェブGUI経由でパソコンからデータのアップロードやダウンロードができるほか、「SmartNAS」に保存したデータを自動的にアップロードすることもできる。データ転送をSSH(セキュアシェル)で暗号化・認証することに加え、認証やデジタル署名などに使われるハッシュ値「MD5」の管理で、中身が異なる同一ファイル名を別ファイルとして保存して改ざんを防止するなど、セキュリティも確保している。利用料金は、50GBで月額3000円などと設定している。
柳瀬博文・取締役営業技術部長は、「今年9月に提供を開始して、大学の研究機関などから引き合いをもらっている。また、大規模なシステムを構築するストレージ機器のユーザー企業から、DRとして活用したいとの要望がきている」という。
現段階では、「Cloudy Backup」に対応している機器は「SmartNAS」のみだが、「ニーズがあることからも、当社のハイエンドモデルからローエンドモデルまで、さまざまなストレージ機器と連携できるようにしていく」との方針を示す。とくに、同社がユーザー企業として獲得を目指す中堅企業向けのストレージ機器に搭載したり、「ストレージ機器の既存ユーザーに対して、サービスを単体で提供したりすることも進めていく」としている。
「Cloudy Backup」を提供したのは、SOHOや個人向けに「SmartNAS」を発売したものの、低価格の製品を売り込んでいる他社のシェアを奪えなかったことが影響している。しかし、今後はこれまで得意としてきた中堅企業をメインターゲットに据えて、サービスを武器にしてビジネスの拡大を狙う。
・記者の眼 今回、SMB向けオンラインストレージを提供するベンダーとして、大塚商会、ソフトバンクテレコム、ニューテックの3社を取り上げて、SIer、キャリア、メーカーそれぞれの立場でのビジネスを取材した。それでわかったことは、どのベンダーもオンラインストレージ単体を提供するだけではビジネスとして成り立たないと認識しており、ハードとの連携を視野に入れていることだ。つまり、自社にシステムを設置したままオンラインストレージを利用することが、ユーザー企業にとって最適な策と考えているからだ。
最近では、SP(サービスプロバイダ)を中心に、サービスを提供する事業者が増えている。大塚商会のように自社でオンラインストレージを開発する手もあるが、SPが提供するサービスを活用してハードとサービスを連携させたソリューションを提供することも、ストレージ機器を販売するベンダーにとってビジネスチャンスをつかむ一つの方法といえよう。サービスだけを提供するよりも、システム構築のノウハウを生かしてサービスを付加するビジネスが伸びることは間違いないだろう。