<富士通マーケティング>
【トップの考え】
パートナーとの連携を重視

富士通マーケティング
古川章社長 FJMの古川章社長は、FJMが誕生する半年ほど前の10年4月1日に、その当時のFJBの社長に就任し、以来、一環してFJMの舵取りを行っている。社長に就任してもうすぐ3年になるが、この間、古川社長の考えは明確でぶれない。「パートナーとともにビジネスを広げる」。FJMには、SMB向けビジネスに特化した事業基盤を築いてビジネスを拡大するというミッションのほかに、全国でSMB向けビジネスを手がける富士通のパートナーと協業し、間接販売でビジネスを伸ばすという任務もある。
古川社長は、「富士通のパートナーにとって、ライバルだったFJBが、FJMになったら一転、協業会社になる。パートナーのなかには、疑心暗鬼で納得がいかない様子のところもあった。そうはいっても、SMBという広大なマーケットにアプローチするには、当社の営業担当者だけでは不可能。パートナーの力は欠かせない。不満の声が聞こえてきたが、私が社長に就任してから、一社ずつ丁寧に説明して回った」と経緯を話す。
富士通のパートナーは、富士通製品を調達する際、それ以前は富士通から製品を調達していたが、昨年4月にはFJMから調達する仕組みに変更。これによって、「パートナーとの連携を図りやすくなった」(古川社長)。パートナーとの協業を重視して販売網を構築する姿勢を一貫して崩していない。
【商品戦略】
「GLOVIA smart」シリーズが完成
FJMの主力製品は、ERPソリューションの「GLOVIA smart」で、調査会社のノークリサーチによると、12年のSMB向けERPパッケージ市場では、OBCの「奉行新ERP/V ERP」(13.0%)、SAPの「SAP ERP/SAP Business All-in-One」(11.0%)に次いで、「GLOVIA smart」シリーズ(7.1%)と3位につけている(図4)。12年度は、SaaS型アプリケーションの「GLOVIA smart きらら販売」など、「計画通りに」(古川社長)ラインアップを増強してきた。古川社長は「FJMの発足とほぼ同時に、富士通から『GLOVIA』の企画・開発チームを移管し、メーカーとしての顔をもつことで、『GLOVIA』を中心に拡販する体制を整えた。それだけに、今後も『GLOVIA』を中心に拡販する姿勢は変わらない」と断言している。
FJMは、来年度も「GLOVIA」を主力商材にして、ラインアップを増強する方針を示している。オンプレミス型システム向けと、クラウドをともに強化するつもりだ。
【売り方】
パートナーを拡充、間接販売網を増強
約450社の富士通パートナーと協業する体制をつくったFJM。古川社長は、販売パートナーとの協業体制が徐々に整備できていることに手応えを感じ、来年度は「新規顧客獲得のためチャネル販売にはさらに力を入れ、パートナーを増強する」としている。また、「SMB市場では、2年連続で売り上げが成長している企業が全体の25%ほどある。このうち、FJMとつき合いのある企業はまだほんの10~20%程度だ。ここを攻めていく必要がある」と分析する。
ただし、チャネルをさらに開拓すると、パートナー企業間での競合が発生するリスクもある。このことについて古川社長は、「市場が広く、まだまだ攻めきれていないので、競合についてはほとんど心配していない」という。
そう言いつつも、パートナー間で競合が発生するリスクを分散する仕組みを構築し、一応の予防線を張っている。例えば、東北地方では、SMB市場を洗い出して、あらかじめFJMと各パートナー企業が担当するSMB企業を分担し、営業するという施策を始めた。13年以降は、これを全国に広げていく方針だ。
営業支援体制も整えている。例えば、ウェブ上で顧客に対して製品の説明やデモンストレーションを行って、顧客から要望があれば、担当者を顧客のもとに訪問させる「ウェブ営業」というユニークな取り組みも始めている。