SI事業を手がける大手電機3社の2025年度決算が出揃った。富士通、NEC、日立製作所はいずれも、国内IT市場におけるDXやモダナイゼーションの旺盛な需要を捉え、収益性を向上させている。受託開発を中心とした体制の見直しが進み、オファリング型のビジネスを核とした収益率の高い体質への転換がより鮮明になってきた。
(取材・文/南雲亮平)
富士通
主力事業中心に全社で利益率改善
富士通は売上収益が3兆5029億円となり、前年度比で1.3%減少したが、デバイスソリューション事業を非継続事業に分類したことなどの再編の影響を除くと、実質ベースでは0.9%増収だった。事業再編や事業構造改革などの影響を除いた調整後営業利益は27.1%増の3905億円で、2期連続で過去最高益を更新。調整後営業利益率は20年度の6.6%から25年度は11.2%と大きく伸びた。
成長をけん引したのは主力のシステム構築ビジネスである「サービスソリューション」事業だ。売上収益は4.5%増の2兆3469億円、調整後営業利益率は15.4%となった。オファリングを中核とする事業モデル「Fujitsu Uvance」が好調で、モダナイゼーション需要も業績を後押しした。Uvanceの売上収益は46.9%増の7093億円で、サービスソリューション全体に占める構成比は前年度の約21%から30%まで拡大した。特に社会課題解決を担う業界横断型オファリングである「Vertical」領域がデータ・AI分野を中心に伸長し、Vertical全体で69%増と大きく成長した。モダナイゼーションの需要も高く、Uvanceとの重複分を除いた売上収益は24.2%増の2497億円となった。時田隆仁社長CEOは、「全社連結の調整後営業利益率10%超、サービスソリューションの(同利益率)15%超は、通過すべきマイルストーンとしていた。さらなる成長に向けてスタートできる」と述べた。
富士通
時田隆仁 社長CEO
ハードウェアソリューション事業の売上収益は1兆98億円で9.8%減少した。公共系の大口商談の反動や、外部調達品販売の絞り込み、アジアの小規模事業縮小などが影響した。利益面では、売上構成の変化に加え、24年度に発足したエフサステクノロジーズの製販一体体制による事業効率の向上が寄与し、同事業全体での調整後営業利益は670億円と前年度比で57億円増加した。この内、ネットワークプロダクトの売上収益は6.6%増の1936億円となり、基地局納入の増加やネットワーク事業部門を統合して設立した1FINITYの事業効率改善が貢献した。
ユビキタスソリューション事業は「Windows 10」のサポート終了による入れ替え需要の終了や24年の大口案件の反動があり、売上収益は8.7%減の2298億円となったが、調整後営業利益は388億円で74億円の増益だった。
26年度の通期業績見通しは、売上収益を0.2%増の3兆5100億円、調整後営業利益を8.8%増の4250億円と設定した。Uvanceとモダナイゼーションが成長をけん引するサービスソリューション事業は、国内で売上収益10.6%増と2桁成長を見込んでいる。
26年度以降の戦略として、従来3年単位で策定してきた経営計画を10年単位に変更し、すべての提供ソリューションをAIが駆動するかたちに進化させる方針を示した。具体的には、要件定義からテストまでをAIで自動化する開発環境を順次拡大し、デリバリーの生産性を飛躍的に高める計画としている。また、サービスソリューションのサブセグメントを「エンタープライズ」と「パブリック」へ区分変更し、国内・海外の地域別区分を廃止してグローバル業種軸による管理に移行する。
NEC
公共・防衛が好調、BluStellarで利益伸長
NECの売上収益は前年度比4.7%増の3兆5827億円だった。法人PC販売機能の移管や低収益ハードウェア事業からの撤退などの影響を除いた実質ベースでは9%増としている。調整後営業利益は34.7%増の3868億円、独自調整したNon-GAAP営業利益は27.6%増の3972億円となり、Non-GAAP営業利益率は過去最高の11.1%を達成。調整後営業利益とNon-GAAP営業利益はいずれも2期連続で最高益を更新した。
成長を支えたのはITサービス事業だ。パブリック領域が好調な国内の売上収益は1.9%増の2兆1755億円となった。調整後営業利益は、同社が戦略的に展開する価値提供モデル「BluStellar」を中心とした収益性の向上や、子会社での構造改革の効果により3050億円となり、725億円の大幅な増益となった。
NEC
森田隆之 社長兼CEO
BluStellarの売上収益は30%増の7050億円に達し、調整後営業利益は1020億円と358億円の増益となるなど、期初計画を大きく上回った。森田隆之社長兼CEOは「エンドツーエンドで顧客課題を解決するシナリオビジネスが、データドリブンなモダナイゼーション領域を中心に順調に拡大している」と述べた。国内ITサービスのうちBluStellarを除いたベース事業も、低収益事業からの撤退により収益性が大きく改善した。
社会インフラ事業も好調な航空宇宙・防衛(ANS)部門がけん引し、売上収益は12.4%増の9353億円となった。ANSの受注額は拡大が続き6000億円に達した。海洋部門は25年度に追加の工事費用を計上したが、事業改革が進展し赤字幅は縮小した。一方、テレコムサービスは基地局事業の見直しに合わせて資産クリーンアップを徹底し減益となったが、ネットワークインフラの構造改革により今後の採算性改善を目指す。
大型案件や法人向けPC販売機能の移管、低収益ライセンス案件を除く国内ITサービスの年間受注高は、24年度から1%増でほぼ横ばいだった。パブリック領域では、自治体標準化や消防防災案件の受注がピークアウトする中、中央省庁向けの大型案件を獲得し、前年度並みの高水準を維持した。エンタープライズ領域では金融向けが堅調に推移した。子会社のアビームコンサルティングも受注高は12%増と成長し、コンサルティング起点のDX案件創出が加速した。
26年度の業績は、売上収益が2.3%減の3兆5000億円、Non-GAAP営業利益が228億円増の4200億円を計画している。物価リスクやマクロ経済環境の不透明さを考慮し、売上収益で1000億円、Non-GAAP営業利益で300億円の余裕枠を織り込んでいる。
26年度からはセグメントを変更する。対象は、従来すべて社会インフラ事業に含んでいたテレコムサービス領域の事業で、このうち国内通信事業者向けITサービス事業を「国内ITサービス」に、通信事業者向け特化型IT・ネットワーク運用管理ソリューション「Netcracker」の提供を「海外ITサービス」に移管。ネットワークインフラは社会インフラ事業の中に残す。
日立製作所
Lumada事業が成長をけん引
日立製作所のIT関連事業を担う「デジタルシステム&サービスセグメント(DSS)」は、国内のDXやモダナイゼーション案件に加え、米国IT子会社のGlobalLogic(グローバルロジック)や他セクターとのシナジー拡大により、売上収益が前年度比3.8%増の2兆9400億円となった。調整後営業利益に一部償却費を加えたAdjusted EBITAは14.2%増の4500億円となり、増収増益で着地した。
全社の売上収益は8.2%増の10兆5867億円、売上収益から売上原価・販売費・一般管理費を差し引いた調整後営業利益は23.4%増の1兆1992億円となった。当期利益は初めて8000億円を突破し、当期利益・キャッシュフローともに過去最高を記録した。
日立製作所
徳永俊昭 社長兼CEO
成長を支えるのは、データとテクノロジーを組み合わせて価値を創出する独自のデジタル事業ブランド「Lumada」だ。同事業の売上収益は48%増の4兆1460億円で、全社の売り上げに占める比率は40%に達した。中でも注力したのが、AIによる社会インフラ革新を担う次世代ソリューション群「HMAX」だ。HMAXの売上収益は3000億円で、Lumada事業に占める売上比率は7%だが、Adjusted EBITA率はLumada全体では16%のところHMAXは22%と収益性が高い。徳永俊昭社長兼CEOは、「経営計画『Inspire 2027』の目標であるLumadaの売上比率50%、Adjusted EBITA率18%達成に向けて順調に推移している」と述べた。
DSS事業全体では、「フロントビジネス・ITサービス」領域がLumada事業を中心とする国内DX・モダナイゼーション需要の拡大により、国内売上収益が7%成長した。システム開発へのAI適用を推進し、国内SI案件で平均10%超の効率化を実現したという。「サービス&プラットフォーム」領域のストレージ事業は海外市場での顧客投資抑制で年間売上収益は減少したが、主力のブロックストレージ製品に注力し、コスト削減を図ったことで収益性は改善した。
26年度から、セグメント構成を変更する。DSSは「SI&サービス」「エンジニアリング&サービス」「ITプロダクト」の3領域に再編し、金融・社会分野のSI事業と、従来DSS外だった産業分野のSI事業をSI&サービスに統合。日立システムズと日立ソリューションズを含むITサービスや、グローバルロジック、AI&ソフトウェアサービスはエンジニアリング&サービスに統合する。
26年度の業績は、全社売上収益が4.8%増の11兆1000億円、Adjusted EBITAが8.3%増の1兆4200億円、当期利益が476億円増の8500億円と、引き続き成長を見込む。DSS事業の売上収益は4%増の3兆1900億円、Adjusted EBITAは228億円増の5000億円を目指す。SI&サービスおよびエンジニアリング&サービスでは、Lumada事業を含む国内DX・モダナイゼーション事業の拡大や、ドメインナレッジ・AIを活用したHMAXなどのサービス事業の拡大を進める。
家電事業については、27年3月までにノジマとの戦略的パートナーシップに基づく新会社を設立する予定。ATM事業は、ATM・自動化機器の安定供給と国内外での事業成長を目的に、沖電気工業との事業統合に向け契約を締結するなど、企業価値向上に向けた取り組みも加速する。