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<仮想化ソリューション特集>仮想化、流行から当たり前の技術に

2010/01/21 19:56

週刊BCN 2010年01月18日vol.1317掲載

 不況下をものともせずに、需要が旺盛な仮想化関連サービス。情報システムのリソースを物理的な構成にとらわれず、柔軟に分割したり、統合したりできるソリューションで、ユーザーのIT投資が抑制されている現下でも、伸び盛りだ。2010年は、サーバーだけでなくクライアントの仮想化にも分野が広がりそうで、IT調査会社は驚異的な成長率を予測している。運用の効率化やコスト削減に効果を発揮する今が旬のソリューションは引き続き、IT産業界の有望部分野になりそうだ。

顧客層広がり、運用分野にもビジネスチャンス

 仮想化とは、1台のコンピュータをあたかも複数台のコンピュータであるかのように仮想的に分割して利用する仕組みだ。1台のコンピュータに複数のOSやアプリケーションを動作させたり、複数のディスクを1台のディスクであるかのように扱うことなどができる。

 休眠状態の既存ハードウェアの有効活用や運用効率化、運用コストの削減を実現する技術として、2・3年前から大いに注目を集めている仮想化テクノロジー。そのメリットは多大で、ユーザーは大企業から中堅・中小企業(SMB)へと広がっている。加えて、仮想化技術が必須なクラウド・コンピューティングの流れが速度を増しており、不況下でも仮想化市場に吹く追い風は勢いを増している。

 仮想化市場では今、仮想化システムの企画・設計ビジネスが伸び盛りだ。製品では仮想化ソフトのほか、仮想化ソフトで構築したシステムを運用管理するためのツールも伸びており、主要運用管理ツールメーカーは仮想化対応をほぼ終えている。それに加えて、今後需要の増加が期待できるのが、下流工程の運用・保守ビジネスだ。

 仮想化技術は、ITベンダーには、従来の物理的システムの構築にはない独特の知識やノウハウが必要となる。そのため、ITベンダーはここ数年、仮想化の技術者の育成に力を入れてきた。ユーザー企業・団体でも、同じことがいえる。運用にも知識や経験が必要で、ユーザーにもそれが求められるからだ。

 「仮想化システムを構築したのはいいが、それを運用する技術者が(ユーザー企業の)社内にいない」というケースが増える可能性があるのだ。このユーザー企業が抱えるであろう悩みは、ITベンダーにとってはビジネスチャンスになる。仮想化は、製品の販売や設計コンサルティングサービスという従来のビジネスに加え、情報システムのライフサイクルの下流工程である運用・保守分野でもビジネス展開できるようになるわけだ。

 調査会社のIDC Japanによると、国内仮想化サーバー市場の2008・2013年の年間平均成長率(CAGR)は18.3%。継続的な成長を見込んでいる。13年には、国内で出荷された全サーバーのうち23.2%は仮想化サーバーが占めると予測する。一方で、サーバーだけでなく、クライアントの仮想化需要も急伸すると予測し、08年・13年のCAGRは61.8%と驚異的なプラス成長の見通しを示している。シンクライアント端末は13年には34万台を超え、市場規模は676億円に達するとみている。

 2010年は、「仮想化」が流行の枠を超え、情報システムを構築・運用するための“当たり前”のテクノロジーとして定着しそうな気配だ。大企業から中堅・中小企業へとターゲットが広がり、企画・設計だけでなく保守・運用サービスまでニーズが顕在化――。ビジネスはますます広がりそうだ。

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