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<x86サーバー座談会2010>上位メーカー集結、今後の展開を徹底討論

2010/07/22 19:56

週刊BCN 2010年07月19日vol.1342掲載

仮想化ニーズは底堅く
ネットサービス企業向けが好調

 ──好転した市場のなかで、とくに好調だった業種やサーバーのモデル、ソリューションは何だったのでしょうか。

 橘(日本HP) 正直にいって、前半はどの業種、どの地域もまったくダメでした。回復傾向に入った年末に増え始めた案件では、「コスト削減を目的にシステムを簡素化・統合化したい、そのためにサーバーを入れ替えたい」という要望でした。また、需要の復活を支えたのが、製造業系のお客様で、研究開発部門でのサーバー増設ですね。経済環境が徐々に好転して、研究開発業務に再度力を注ぐ機運が高まって、そのためにコンピュータも増強する動きがありました。

 芝本(富士通) 特需的要素ですが、政府が推進した「スクール・ニューディール構想」の影響で教育機関では、かなり台数が伸びました。また、大学や研究開発機関のハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けに富士通製品を採用いただいたケースが多かったです。ソリューションとしては、「仮想化一色」でしたね。モデルは、ラック型のボリュームも多かったですが、ブレードも頑張りました。ブレードは他社に比べて後発でしたが、昨年に比べて販売台数は2倍に伸びました。パートナー企業様の抵抗感がなくなりつつあるのかなと感じています。

 浅賀(NEC) ネットサービス系企業への販売は好調でした。グリー様が、SNSサービスのシステムで省電力サーバー「Express5800/iモデル」を採用していただけるなどの好事例も多く生まれています。また、医療機関は政府の補助もあって好調で、医療機関向けのシステム構築に強いパートナー企業様経由での販売も伸びました。サーバーのモデルでいえば、NECの独自性が詰まった省スペースのスリムサーバーは前年と比較して50%増で推移しています。一方で、仮想化案件も全国に拡がってきており、2Wayのラックサーバー、ブレードサーバーの引き合いが増えています。

 木口(デル) やはり弊社でも高い成長を感じる業種は、ネットサービス系であると認識しております。そこに限らず、仮想化によるサーバー統合であるとか、UNIXや汎用機からの移行のニーズが多く寄せられています。弊社はx86専業ベンダーというイメージは市場に浸透していますが、実はiSCSIストレージの市場においてもシェア第1位を獲得していることをアピールしておきたいです。特に「EqualLogic」が好調で、対前年比245%増の販売数となっております。

 小林(日本IBM) データセンターを活用したITサービスを提供するITベンダーやネットサービス系企業への販売が日本IBMも好調でしたね。ソリューションでいえば、仮想化の案件はかなり多かったです。直近の傾向として特徴的なのが、仮想化の商談数は大手企業よりもSMBからの引き合いのほうが多いことです。SMBのユーザー企業様が、初めて仮想化技術を活用して仮想環境を構築するケースが目立ち、そのなかで「IBM System x」を活用してもらえる案件が非常に多かったです。

コモディティ化したなかでの差別化
低消費電力や仮想化がポイント

 ──では、今後の戦略を聞かせてください。まず製品についてです。メーカーとして、コモディティ(日用品)化したx86サーバーで、どのように他社と差別化していこうとお考えですか。

富士通 芝本隆政氏
 芝本(富士通) まず、高品質と信頼性の確保は絶対外せない要素です。社会の重要ITインフラを手がけている富士通の強みですから、ここはx86サーバーでも優位性を発揮していきたい。また、環境対策としては、どのメーカーも力を入れていると思いますが、低消費電力にはこだわっていきます。ハード面ではありませんが、サーバーを運用管理するためのツール群も、富士通の強みです。富士通は「ServerView」という運用管理ツールをもっています。一方で、「ServerView」は、大規模システム向け管理ツールとして設計されている部分が多いので、今後はSMBのお客様でも容易に活用できるように、もっとシンプルに簡素化したものも提供する計画です。

 浅賀(NEC) 省電力化への取り組みは当たり前の事として捉えていますが、特に5月に発表した「Atom」CPUを搭載したサーバーなどは、データセンター事業者様のニーズを具現化した、NECのこだわりが詰まった製品だと思います。

 また、日本の設置環境に最適化された、省スペースや静音のサーバに対する需要は非常に高く、ここはNECの強みだと自負しています。一方、クラウド基盤の構築をお考えの方には、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、統合管理ツール、基本構築サービスまでをオールインワンで提供する「Cloud Platform Suite」というパッケージを提供しています。特にスタンダードモデルは販売店様も導入しやすい構成になっているので、クラウドの商談などでは、Cloud Platform Suiteをキーにお客様にアピールしていただきたいです。

 木口(デル) オープンでスタンダードな技術を採用し、独自のベンダーロックインは行わないのが、デルの方針です。その中でも差別化は可能で、省電力性の観点で言えば、導入される構成に最適な電源を搭載することで、過剰な電力を消費しないようにしています。それらの電源は一部を除いて80Plusの認定を取得、Energy Starの認定についても構成を限定せずに取得するなど、客観的な評価も得ていることを付け加えておきたいと思います。さらに、インテル Xeon 7500番台を搭載するサーバーではFlexMem Bridgeと呼ぶ技術を開発し、メモリ搭載可能量を最大化することにも成功しています。これも、インテル標準のチップセットの範疇で行っていますので、ベンダー独自技術でお客様に不便を感じさせることはありません。お客様の声から生まれた様々な改善は、使っていただければわかっていただける、デルのサーバーならではの差別化につながると確信しています。

 小林(日本IBM) 日本IBMの強み、差異化要素は、まず今春に発表した新たなアーキテクチャ「eX5」です。CPUメーカーの仕様を超えたメモリを搭載できる独自性は、他社にはないと自負しています。加えて、「IBM Power Systems」など他製品との親和性、ストレージやソフトウェア製品との組み合わせによるトータル提案も日本IBMの武器です。さらに、クラウド。クラウド環境を容易に構築できるように、必要な要素をすべて盛り込んだ「IBM CloudBurst」は、時流に沿ったソリューションで、ユーザー企業様からの引き合いは強い。多様なクラウド案件に迅速・柔軟に応えられるように、「ぷちクラ」と呼ぶクラウドのソリューションメニューも用意しており、クラウドに強いのもポイントです。

 橘(日本HP) ご承知の通り、x86サーバーのベースとなる技術は、ほぼ同じで差異化要素はさほどありません。そのなかでも、他社と比較して日本HPが競争優位に立てるのは、低消費電力、そして遠隔監視の技術です。加えて、ブレードに関していえば、ネットワーク、I/Oの仮想化技術である「HP バーチャルコネクト」は、HPの製品開発に対するこだわりが詰まっており、競争力があると自負しています。ブレードは、まだ独自性を発揮できる部分がタワーやラックよりも多いので、今後も日本HPにしかない技術・機能を盛り込んでいきます。ブレードでは、絶対に負けたくありませんから。

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