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<データセンター事業者座談会>BCP対策の見直しで注目集まるDC市場 主要5社のキーマンが現状と戦略を語る(前編)

2011/08/25 19:56

週刊BCN 2011年08月22日vol.1395掲載

震災直後にDCのニーズが急増

 ――東日本大震災が起きて以降、DCのニーズはどう変化しましたか。

IDCフロンティア
粟田 和宏氏
「東京と大阪の経済圏、北九州、さらに新規開設予定の福島県白河を3メガ・データセンターに位置づけています」
 粟田(IDCフロンティア) 変化は大きかったですね。震災を機に、これまでであれば、少なくとも3か月、長ければ1年は要していた大きな商談でも、即決したケースがありました。また、すでにDCを利用しておられるお客様でも、東京のDCから地方に移設したいという要望もありました。ただし、そうした“特需”は震災後2~3か月位まででした。それ以降は、何が何でもシステム全体を移設するといったニーズよりも、確実なバックアップができればよいといった考え方が目立つようになり、同時にクラウドの需要も増加しました。こうしたニーズには当社のインターネット経由でサーバーリソースを利用できるパブリック型クラウドサービス「NOAH」で対応しました。

 大槻(エクイニクス) やはり震災直後の1、2か月は問い合わせがひっきりなしに続きましたが、それ以後は落ち着いて、じっくりと検討されるケースが多くなりました。その中には、ディザスタリカバリーサイトを米国の西海岸へ移設するというケースもありました。これは、通信費用を含む総コストを比較すると大阪に移設するのと変わらず、拡張性や構成の柔軟性を考慮すると、むしろ米国のほうが使い勝手がいいという判断が働いたようです。

KVH
ニコラ ゾェルゲル氏
「千葉・印西市のDCは、金融サービスのBCPやDRニーズに対応した、アジアの中核的なクラウド・BCPデータセンターを目指します」
 ニコラ(KVH) 震災直後の問い合わせが急増したのは当社も同じで、計画停電の実施によって大阪のDCについての問い合わせが一気に増えました。しかし、計画停電の終了とともに、そのニーズの高まりもおさまりました。ただ、大手ユーザーを中心に、システムの最適化の一環として、DCを活用するといったニーズは、震災を機に増加していると感じます。

 齋藤(KVH) これまで自社内で設備を保有していたユーザーからの問い合わせが目立ちましたね。また、それまでBCPをほとんど検討しておられなかったユーザーが意外に多く、そうしたユーザーからプランニングを含めて対応してほしいという要望がありました。

 田中(さくらインターネット) 当社は、大阪の会社というイメージもあってか、とくに大阪のDCを利用したいという要望が急増しました。特徴的だったのは、自前で設備を所有していないホスティングやクラウドなどの同業者からの問い合わせが目立ったことです。また、都市部ではないDCへの移設の要望も増加しました。

 高倉(ビットアイル) 既存のシステムをクラウドに載せ替えるというのは、決して容易な作業ではないので、やはり多かったのは、サーバーを3、4台程度保有する規模の小さいユーザーが、そのサーバーを自社内からDCへ移設したいというニーズでした。一方、開設したばかりの大阪のDCでは、ある程度の規模をもつユーザーからのニーズが中心で、分散配置やバックアップ用として使用したいというケースが多かったですね。

DCを活用するメリットは大きい

 ――BCPの観点からは、DCの利用価値をどう考えますか。

 高倉(ビットアイル) 今回の震災で認識されたのは、災害の発生時点の対策だけでなく、その後の安定した電力供給も含めてBCPを検討する必要があるということです。システムによっては、停止するのに半日近くかかるものもあります。こうしたシステムはUPS(無停電電源装置)程度では対応できず、それなりの設備が必要です。そうした状況にあって、DCの利用価値は高いと思いますし、また、ソリューションの一つとしてクラウドも注目されています。

 田中(さくらインターネット) 今回の震災には、通常の対策では対応できないケースがあることを認識させられ、また一般企業にとって対応能力を完全に超えてしまった出来事でした。BCPの手法については、プロでなければ対応できないものがあります。例えば、ネットワークを二重化したつもりが、実は1経路だったなどという笑えないケースも現実にあります。

KVH
齋藤 晶英氏
「いくら安全なDCであっても、システムを自社からあまり遠くに置きたくないと望むお客様も少なくありません。千葉のDCはそうしたニーズに応えます」
 齋藤(KVH) 企業がBCPを考えるうえで、やはり別の場所でのバックアップ・サイトは必須だと思います。ただ、いくら安全なDCで管理されているといっても、システムを自社のオフィスからあまり遠くに置きたくないと望むお客様も決して少なくありません。とくに、東京のお客様のこうした要望に対して、当社が千葉・印西市に開設したDC(東京データセンター2)は、十分にお応えできると考えています。

 古田(エクイニクス) 今回の震災は、日本においてのコストと品質に対する考え方の幻想が崩れるきっかけになったのではないかと思います。つまり、日本の設備やサービスは高品質な分、コストが高いのは当然だという認識がありました。さらに、質とのバランスを無視して高いコストを掛けてきたのがこれまでの日本でしたが、いくら莫大なコストをかけても“絶対的な安全”はないことが分かった。それよりは品質とコストとのバランスを最適化することのほうがずっと賢明なやり方で、絶対はないという認識のもとに対策を練ることが、今後DCの活用においても検討すべき方針だと考えています。

 粟田(IDCフロンティア) BCPを考えるに当たっては、例えば、地震の巣となる活断層のことなども含めて総合的に検討しなければなりません。しかし、大企業ならばそれも可能でしょうが、中小企業はコスト面からも制限があり、さまざまな要素を考慮した十分な対策はできません。そうした点を考えると、DCを活用するメリットは大きいと思います。同時に、DCという枠を超えて、インテグレータのコンサルティング力も必要になってくると思います。


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