2013年は、政治とITの関わりという観点でターニングポイントとなった。昨年暮れの政権交代を経て、安倍政権は成長戦略の柱にITを据え、新たなIT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」を策定した。さらに春の国会では、マイナンバー制度の関連法案、政府CIO法案などが成立したほか、夏の参議院選挙ではインターネットによる選挙活動が解禁された。ITで日本を再生し、成長させるという政治の姿勢が鮮明になったことで、多くのITベンダーはその効果に期待を寄せている。自由民主党のIT政策をリードし、国の関連施策に大きな影響力をもつ平井たくや衆議院議員(衆議院内閣常任委員長、自由民主党IT戦略特命委員長)に、日本のIT市場の未来について聞いた。
<自民党のIT戦略>
「デジタル・ニッポン2013─ICTで日本を取り戻す。─」をテーマにして、「ICTによる国土強靱化と経済成長」「サイバーセキュリティと経済成長」「ICTによる農林水産業振興」「テレワークによる雇用拡大」「ICTによる医療レベルの向上」「世界最高水準の電子政府の実現」という6分野に焦点を絞った施策を提言している。6月に発表された政府の新IT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」のベースにもなっている
2020年はIT×おもてなし
──政府が成長戦略の柱にITを据え、「世界最先端IT国家創造宣言」という新たなIT戦略を発表しました。市場が減衰しているといわれて久しい日本のIT産業界も、これには大きな期待を寄せています。 平井 日本のIT政策は、時の政権や政治状況によって優先度が上下する傾向がありました。しかし、例えば米国では、政府も企業の経営者も、ITを使った生産性の向上を普遍的なテーマと捉えて必要な取り組みを進めています。この点で課題があったのは事実です。
自民党としては、野党時代に培ったノウハウですが、民間企業を中心に多くの関係者にヒアリングする取り組みを継続して行っており、これをベースにIT戦略を練ってきました。それを世界最先端IT国家創造宣言にも反映したかたちです。
──2020年には東京オリンピックが開催されることも決まりましたが、新IT戦略も、同年までに「世界最高水準のIT利活用社会を実現し、その成果を国際展開する」ことを目標に掲げています。これは実現可能だという手応えがあっての設定なのでしょうか。 平井 2020年というと、今から7年後ですが、これは絶妙な期間設定だと思います。7年あれば、十分に達成できます。
具体的な施策としては、オープンデータやビッグデータの利活用促進、ITによる農業の高度化や医療情報連携ネットワークの実現、社会インフラのスマート化、マイナンバーやクラウドコンピューティングを活用した国民目線の利便性の高い行政サービスの実現などがあり、非常に幅の広い盛りだくさんの内容です。また、取り組みの進捗状況や成果を評価できるようにするために、KPI(重要業績評価指標)も示しています。
しかし、これまでは省庁間の連携が取れず、大きな成果につながらないという課題がありました。これを解決するために、バラバラだった省庁の動きを統括する政府CIOという司令塔を設置し、リコー出身の遠藤(紘一)さんに重責を務めてもらっています。法改正を経て、正式な権限が付与されましたので、目標達成のためのスキームも着実に構築されてきていると思っています。私としては、この施策を通じて、とにかくもっと民間に元気になってほしいという思いがあります。
──日本企業、とくに中小企業は、欧米に比べてITの利活用が遅れているというデータがありますが、これも2020年までに世界最高水準に押し上げるということでしょうか。 平井 その通りです。私は、2020年に向けて、ITと「おもてなし」のかけ算で日本を再生させたいと考えています。「おもてなし」とは、産業でいえばサービス産業ですが、全労働人口の約7割は広義のサービス業従事者で、サービス産業はITの効果が現れやすい分野でもあります。これをまずは先行させたい。新戦略が実現できれば、2020年の日本は、住んでいる国民にも、海外から来た人たちにも、ITの恩恵を受けた新しい価値をもつサービスを提供できるようになるでしょう。
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