米クエスト・ソフトウェアのIT管理製品は、同社が「六つのソリューション」として分類するカテゴリーで、約170種類をラインアップしている。日本市場では、この中から、企業のシステム管理ニーズに適した16製品を展開中だ。なかでも、同社が昨年買収した米バックボーン・ソフトウエアが保有していた「データ保護」カテゴリーに属する「NetVault Backup」は、世界各国と比べ日本市場でのシェア比率が高く、トップクラスを誇っている。また、米クエストが従来保有していた「vRanger」もVMware環境のデータ保護製品としては高い評価を受けている。「NetVault Backup」と「vRanger」はクエストのもつ他の製品群と融合するなかで、これまで以上に「使いやすさ」を追求するため、多くの開発投資を投入して機能拡張を続けている。（取材・文／谷畑良胤）

　今年6月に調査会社のIDCジャパンが2011年の数値として公表したLinux環境の国内データ保護/リカバリソリューション市場調査によると、同社の「NetVault Backup」がシェア61％を獲得し、10年連続で1位になった。「NetVault Backup」は、Linux環境に限らず、他のOS環境でも採用されるケースが増えており、販売会社の扱う商材のデファクト（事実上の業界標準）だ。

　米クエストは今年に入り、日本だけでなく、世界的なデータ保護市場の拡大に向けた事業を強化した。データ保護に関連する横断部門を新設したり、各関連製品の機能拡充を加速したりしている。


　下舘英之・営業部ディレクターは、「『NetVault Backup』の日本での売れ筋は、Linux環境に加えて、オラクルデータベース環境での適用が多い。日本のデータ保護市場は成熟期に入っているが、仮想環境など、企業システムの進化に合わせた機能拡張や他のクエストのIT管理製品と連携を深め、いま以上に需要を喚起できる」と、市場のさらなる伸びを見通している。

　日本国内で販売するデータ保護製品は、主に二つで、物理と仮想の両方の環境に使える「NetVault Backup」とVMwareのESX/ESXiのバックアップ・レプリケーション（複製）に特化した高速データ保護を実現する「vRanger」がある。「この二つの製品は、顧客の要望を汲んで機能拡張を続けている」と、下舘ディレクターは説明しており、実際、クエストがバックボーン社を吸収合併した後、顧客ニーズにマッチした改善を行っている。

　「NetVault Backup」に関しては、プラットフォームサポートを拡充した「バージョン（8.6.3）」を今年8月にリリースした。このバージョンでは、コマンドライン・インターフェースの拡充も行われている。

　一方の「vRanger」では、新バージョン（5.5）を今年8月に出荷した。5.5では、EMC社の「Data Domain Boost（DD Boost）」と統合し、同システムへバックアップ・データを削減した形で送ることができるようにした。DD Boostを使ってデータ重複排除プロセスの負荷を「vRanger」サーバーへ分散できる。今後、「vRanger」は物理環境への対応が強化される見通しだ。

　両製品に関係するアップデートとして、今年最大のトピックが複数のクエスト製品を統合的に利用できるインターフェース「NetVault Extended Architecture（NetVault XA）」がリリースされることだろう。第一弾として、「NetVault Backup」と「vRanger」に対応した「NetVault XA」を近く国内に投入する計画だ。XAを使えば、同社製品のコンソールを統一し、このインターフェースから全製品を機能として使える。

　従来であれば、バックアップをどのデバイスに保存するか、などの設定は手作業で行う。だが、XAでは、企業のSLA（サービス・レベル・アグリーメント）やポリシー設定などに基づき、XA側で最適な製品を自動的に判断し、さらに達成状況もレポーティングできる。下舘ディレクターは、「より使いやすさが増し、作業軽減に繋がる」と話す。

　次回は、オラクルデータベースのマイグレーションツールとして同社の目玉製品となっているレプリケーション製品「SharePlex」を紹介する。