視点

ITベンダーの責任

2013/03/07 16:41

週刊BCN 2013年03月04日vol.1471掲載

 複数のIT調査会社は、スマートフォンとタブレット端末(スマートデバイス)の販売台数が急速に伸びると予測し、レポートには景気のいい数字を並べる。喜ばしいことではある。だが、ITベンダーに対する最近の取材を振り返ると、スマートデバイスを活用したビジネスが、調査会社の予測通りに成長していくとは思えず、少し違和感を感じている。

 多くのITベンダーは、確かに「(スマートデバイスの)引き合い件数は多い」と言う。ただ、その後の発言のトーンはぐっと落ちる。「検討はしてもらえるが、購入に結びつく確率は低い」「あまり大きな声では言えないが、ビックネームの企業の事例をいくつか発表していて、一見すると華やかにみえるかもしれない。だが、実は意外と伸びていない」「導入した企業のなかで、実際に使われる端末の台数が少ない。試験的に数台導入するものの、そこから広がらない」。ほかにもITベンダーの声を集めたが、総じてこれらの意見と同じ。ユーザーは、関心をもっているものの、購入には二の足を踏んでいるというわけだ。

 あるSIerの商品企画担当者はその理由について、こう打ち明けた。「ユーザーはスマートデバイスを使って何をすればいいかがわからない。売り上げを上げたり、仕事を楽にしてくれそうなイメージをもってはいるが、それをどうやって実現すればいいかを理解していない。これはITベンダーの責任だ。ユーザーにソリューションを提案できていないということなのだから」。ユーザーの関心を購入に結びつける力が、今のIT業界にはないというわけだ。

 「Windows XP」のサポート停止に伴う買い替え需要の盛り上がりは、ほぼ約束されている。日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、2月下旬に、調査会社のデータを引き合いに出して、従業員500人未満の企業が保有するパソコンは1122万台で、このうち420万台のパソコンが「Windows XP」だと説明した。

 「Windows 7」や「Windows 8」へのリプレース案件は確実に生まれる。ただ、単純なパソコンの買い替えだけではビジネスメリットは小さく、ユーザーに提供できる価値も小さい。最新OSを搭載したパソコンへの買い替えではなく、スマートデバイスも組み合わせた新たな端末ソリューションを提案してほしい。IT業界人は「ソリューション(解決)」という言葉を頻繁に使うが、本当に解決策を用意できているのか、ユーザーはいつも、真の解決策を求めている。
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