北九州市に本社を置くリンクソフトウエアは、地元の中堅・中小企業向けのSIと、大手ベンダーとの協業という2本柱でビジネスを伸ばしている。工場のIoT制御や農業のビニールハウス制御といった制御系の個別SIを元請けで担う一方、日本IBMデジタルサービスが運営する九州DXセンターと協業し、半導体工場向け生産管理システムのカスタマイズ案件などを手掛けている。IBM系の業界団体であるユーオス(UOS)グループに加盟し、矢野宏之・代表取締役は九州支部・副支部長を務める。
(取材・文/安藤章司)
伴走型で業務改革を支援
――どのようなビジネスを手掛けているのか。
地元北九州市の中堅・中小企業向けのSIと、大手ベンダーとの協業の二つを収益の柱としている。中堅・中小向けSIは、デジタルを活用した業務改革に焦点を当てたものが多く、これまで100社余りのDXを支援してきた実績を持つ。私自身も、北九州市が北九州産業学術推進機構に委託して運営する業務改革の支援機関「北九州市ロボット・DX推進センター」のDXコーディネーターとして、ユーザー企業の課題と向き合い、伴走しながらデジタル改革を支援している。
――中堅・中小企業向けにはどのようなSI案件が多いのか。
近年では優れたクラウドサービスやSaaS型業務アプリが増え、個別SIの範囲が狭まる傾向にあるものの、例えば工場のIoT制御や農業のビニールハウス制御といった制御系の領域では、SI需要が依然として根強く存在する。当社では限られた中堅・中小企業のIT予算を有効に活用し、最大限の投資対効果が得られるSIによってビジネスを伸ばしている。
――北九州市ロボット・DX推進センターに寄せられる相談はどのようなものが多いか。
相談内容の難易度はさまざまであり、「紙の請求書をPDFにしてメールで送るにはどうすればよいか」といった初級レベルのものもあれば、「先進的なデジタル技術を活用した業務改革のロードマップを一緒に考えてほしい」「Webマーケティングの手法を取り入れて売り上げや利益を伸ばしたい」といった比較的高度な案件もある。ユーザー企業の経営トップを交えてデジタル改革の手順をともに考え、支援している。
IBM九州DXセンターと協業
――大手ベンダーとの協業についてはどうか。
当社はユーザーの視点に立ったITサービスをモットーとするUOSグループに加入しており、私は九州支部の副支部長を務めている。九州支部には約40社のメンバーが在籍し、北九州からは当社を含めて5社が参加している。UOSは、IBMエコシステム(経済圏)に携わるIT企業の集団であり、当社も日本IBMグループのビジネスパートナーとして活動している。
矢野宏之 代表取締役
2022年には、日本IBMの中核SE会社である日本IBMデジタルサービスが、地場のユーザー企業、ITベンダー、教育機関などとの連携を深めることを目的として「九州DXセンター」を北九州市内に開設した。当社も九州DXセンターに数人を常駐させ、九州地区のSIビジネスに参画している。
――北九州といえば、官営八幡製鐵所時代から綿々と続く製造業の街という印象だが、製鉄所向けのビジネスは展開しないのか。
製鉄所向けSIは大手ベンダーが担う領域であり、従業員数20人規模の当社では対応が難しい。当社はユーザー視点に立ったITサービスを志向していることもあり、(受発注の)階層構造が深くなりがちな大規模案件とは距離を保っている。
――日本IBMデジタルサービスの九州DXセンターは違うのか。
九州DXセンターは地域のユーザー企業やITベンダー、教育機関などとのエコシステムの拡大を重視する拠点で
あり、比較的フラットな関係で仕事ができる点が従来とは異なる特徴であると認識している。
ユーザーの近くで学びを重視
――九州DXセンターとの協業では、どのような案件が多いのか。
一例として、半導体製造工場向けの生産管理システム「IBM SiView Standard」のカスタマイズ案件が挙げられる。主に九州地区における半導体メーカー向けの案件であり、ユーザー要件に最適化するためのカスタマイズを、九州DXセンターと連携して行っている。ここ1年余りはSiView Standardのカスタマイズに必要となるスキルの習得など、人材育成にも取り組んできた。ユーザー企業に近いところで業務を行うことで、九州DXセンターの仕事の進め方や、ユーザーの要望などを間近で学べる絶好の機会であると捉えている。
――今後の事業方針についてはどうか。
ユーザー企業の視点に立ち、ユーザー企業に寄り添いながらデジタル活用、業務改革の支援を志向することに変わりはなく、こうした領域でビジネスを伸ばすために、上流工程を担えるITコンサルタント的なスキルを持つ人材の増強を図る。大手ベンダーとの協業ビジネスを確保しつつも、並行して当社独自のオファリングを拡充させ、中堅・中小企業向けのビジネスを推進していきたい。
Company Information
2007年に北九州市で設立。コンピューターシステムおよびソフトウェアの企画、開発、販売・保守やOA機器販売などを展開する。従業員数は約20人。