生成AIの登場で、ストレージに求められる役割も大きく変化している。エフサステクノロジーズは、自社開発製品だけでなく、OEMや販売代理店として他社製品も取り扱うことで、多様な顧客ニーズに合わせた製品を提案している。生成AI向けには、サーバーなども含めた必要な機能をパッケージ化することでパートナーが売りやすい商材として展開。顧客向けの構築をパートナーに担ってもらうことで双方のビジネス成長を目指している。
(取材・文/堀 茜)
自社製品に限らず最新性能を提供
富士通の子会社で、サーバーやストレージなどハードウェアの製造販売を担当するエフサステクノロジーズは、自社開発のストレージに加え、ハードウェアとしては競合関係にある他社の製品もOEMや販売代理店として取り扱うことで、幅広いポートフォリオを展開している。顧客の用途や規模感に応じて最適なものを提案できるよう、自社製品に限らず最新テクノロジーを顧客に届ける戦略だ。
松永好令本部長(右)と中嶋一雄統括部長
同社がポートフォリオを拡大している理由の一つが、AI向けのデータ基盤に必要となる要件や用途が顧客によって大きく異なっていることだ。膨大なデータをやり取りできるアクセス性能、用途に応じてデータ基盤を拡張するスケーラビリティーといった新しいニーズに対応していく必要がある。
自社開発のブロックストレージ「ETERNUS DX」は大規模システム向けで、従来の機能を踏襲したいという顧客に対応している。製品ラインアップの中で現在中心的な位置付けにあるのが「ETERNUS AX」シリーズだ。米NetApp(ネットアップ)のファイルストレージのOEMで、生成AI向けにも多く活用されている。国内の顧客は大企業だけではなく中堅・中小企業も多い。エフサステクノロジーズでは、日本のニーズを吸い上げてネットアップに伝え、AXシリーズで日本企業が使い勝手のいいデータ容量を抑えた小型サイズの独自モデルも提供している。
ETERNUS AX
OEM製品を提供する意義について、松永好令・サーバ&ストレージ事業本部長は、「品質保証とサポートを当社が提供することで国内のお客様に安心して使っていただいている」と説明する。ネットアップ製品のOEMを本格展開して約5年だが、それ以前から長年技術支援や日本語マニュアルの提供を行っており、障害があった際の対応もノウハウを持っている。日本中どこでも2時間で駆けつける手厚いサポートを展開しており、それを評価して選定する顧客も多い。松永本部長は、「お客様第一で保守サポートを展開しているのは競合にはない強みになる」と強調する。
同社はネットアップのOEMだけでなく、競合ベンダーの製品を販売代理店としても取り扱っている。長期保守を求める顧客向けに米Everpure(エバーピュア)、経済安全保証の観点から国産製品を求める顧客に対しては日立ヴァンタラと、多様なニーズに対応するのが目的だ。エフサステクノロジーズではストレージ単体ではなく、サーバーなども含めITシステム全体を取り扱っていることを強みとしており、「セキュリティーベンダーのソフトウェアも組み合わせて、サイバーセキュリティーにもきちんと対応した上でAI向けに提案している」(松永本部長)。
生成AI基盤を型決めモデルで
企業が生成AIを活用する上で重視する要素について、プロダクトソリューション本部の中嶋一雄・AIシステム統括部長は、「データ主権を重視し、自社でガバナンスを利かせるためにオンプレミスでデータを持つ必要性が高まっている」と指摘する。
国内の生成AI向けのニーズは、大規模な学習をしたいという大企業を除き、自社のノウハウをRAG(検索拡張生成)として参照し、適切な回答を引き出す推論での活用がメインだ。データを社外に出さずに対話型の生成AIを活用したいとの需要に対応するソリューションとして、オンプレミス環境向け対話型生成AI基盤「Private AI Platform on PRIMERGY」の販売に注力している。サーバーやストレージ、ソフトウェアなど必要なものをセットアップしているパッケージ製品で、「ベリースモール」「スモール」「ミディアム」「ラージ」の4段階で構成を決めたモデルを展開。モデルごとに最適なストレージ構成を決めてあるので、パートナーから顧客への提案もスムーズに行えるという。
2024年から販売を始め、数十社が採用。製造業や金融などで先行して導入が進んでいる。当初は1000万円規模から使えるスモールが最小モデルだったが、パートナーからもう少し手軽に扱えるモデルがほしいとのフィードバックが寄せられ、400万円規模のベリースモールも開始した。「当社はAI向けのプラットフォームを提供しているが、お客様の業務に合わせたカスタマイズ、ラストワンマイルのSI対応はパートナーに担っていただく必要がある」(中嶋部長)。
同社は、パートナーのエンジニア向け構築支援サービスに注力。パートナーが顧客の業務に合わせたカスタマイズが容易にできるノーコード・ローコードツールを搭載し、技術支援を提供することで拡販を後押ししている。